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第131話 山へ向かう道の中の『漁協の店』

 ひとしきりかえでは浜辺で遊んだ後、そのまま車に向った。


 かえでが後ろを向くたびに外気にさらされる後ろの穴に興奮を覚えながら誠はそのままかえでについて車の助手席に乗り込んだ。かえでは時折、誠の爆発寸前になっている股間を見ながら妖艶な笑みを誠に向けてきた。


「誠君はたぶんあの店を見たら驚くと思うよ。とても漁協直営店とは思えない趣のある店なんだ。あの食通で知られるクバルカ中佐も『あの店はちゃんと来る客の事を考えて店をやっている』と感心して言ったくらい素敵な店だ。僕も時々立ち寄るがいつもいい物を出してくれる。君の舌もきっと満足するに違いない。君も満足して僕の話を聞くことが出来る」


 そう言うとかえでは車を発進させた。


 車は海沿いでは無くいきなり山道の苔むした側道に踏み入れた。


「そっちって山ですよ。漁協は関係ないんじゃ……」


 誠の言葉にかえでは運転に集中しているというように前を向いていた。そこにはこれまでには無いかえでの気品があるのを感じて誠は息を飲んだ。


「だから考えた店なんだよ。海を見て満足した客には今度は山の木々を見せる。まあ、まだ二月だから木々もあまり元気が無くて見るに堪える光景とは言えないが、それでも海から山への視点の変化。この店を作った漁協の人間は考えているよ。顧客の視線に立って店の立地を考えている。大したものだ」


 かえではそう言って曲がりくねった道を原則もせずに上り続けた。


 誠はただ周りの常葉木の森の深さに感心しながら肌寒くなってきた空気に体を慣らしていった。


「ここだ、着いたよ」


 そう言うとマイクロバスが数台停まればいっぱいという風の駐車場にかえではオープンカーを停めた。


 目の前にはかやぶき屋根の屋敷門が有り、檜の古びたくぐり門が開いているのが見える。


「古民家なんかを改造したんですかね……それにしても立派な屋敷……いや、お店ですね」


 その気取らない、それでいて決して客に媚びるところの無いたたずまいに誠は圧倒されていた。


「じゃあ、行こうか」


 かえではそう言うと助手席で屋敷に見とれてもたもたしていた誠の手を引いてくぐり門をくぐって店内に入った。


 食事をする店と言うよりそれはまるで庭園公園のようなみごとに整備された場所だった。庭に並ぶボタンは見ごろが終わりつつあるが、変わって見事な梅の木が誠達を迎えた。


「これは日野様。いつもごひいきにしていただいて……」


 庭石の上をピンヒールで器用に歩くかえでの姿を見ると中年の身なりの整った和服の店員と思われる女性がかえでに声をかけてきた。


「いつもの部屋なのかな」


 かえではそう言うと和服の店員に笑いかけた。


「はい、お待ちしていました」


 笑顔で笑う中年の女性の姿を見てここが本当に漁協が運営する店なのかと疑問に思いながら誠はかえでの後に続いてこれもかやぶきの立派な屋敷の中へと足を踏み入れた。

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