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第127話 信頼しあわない同盟

「甲武国は『サムライの国』だからあんな兵器を好んで使いたがるのでしょう。ヤンキー共は確かに信託領として旧日本を保有し、そこに移民した多数の遼州人のおかげであそこは法術師の数には困っていない。だから法術師の力を効率的に使うことが出来るシュツルム・パンツァーの開発には初めから積極的だった。法術師がほとんどいない上にその研究データがほとんどない我が国がすぐにあのヤンキー共に追いつけるとは私も正直思ってはいませんよ。その為に最高の法術師である『クバルカ・ラン』のデータが入った『方天画戟』のデータを買い受けた訳です。あのデータは凄かった。前の戦争ではクバルカ・ランは遼帝国から一歩も出ることは無かった。もし『方天画戟』とクバルカ・ランが地球圏に来ていたら……おそらく私はこの世には居ないでしょう。地球圏は完全に遼州圏に分割統治され、『ゲルパルト第四帝国』はアーリア人以外の地球人をすべてガス室に連行する。そんな地獄絵図を想像するとクバルカ・ランがあの戦いで戦場に出てこなかったのが地球圏の勝因だと信じるしかないほどです」


 カルビンは静かにそう切り出した。


「あの国はあの『悪夢の二十一世紀』で日本国を同盟を信じ切った相手をあっさり裏切って核攻撃を仕掛けることで植民地化した国だ。あの合理的な自国中心主義のおかげであの国は隣国を次々と併呑し、宇宙開発においてもこの遼州侵略の主力を成した国ですから」


 そんなカルビンの歴史談議にカラはあからさまに嫌な表情を浮かべた。


「そんな歴史の話を聞いてるわけじゃ無いんだけどねえ……要するに日本人と遼州人は見た目が区別がつかない。そして同じように日本語を話す。だから遼州人は『地球は豊かだ』と言う幻想に駆られてアメリカ信託領ジャパンに大量に移民した。その結果、入れ替わるように日本人たちはアメリカの苛烈な支配から逃げ出すために甲武星に移民し甲武国を打ち立てた。結果としてアメリカは多数の法術師の実験サンプルを無償で手に入れた……聞いてるよ、アタシもあそこではアタシ等遼州人を家畜同然に人体実験して法術の研究をしているらしいじゃないのさ。なんと言っても『ネオアパルトヘイト』で白人至上主義を『悪夢の二十一世紀』半ばに復活させた国だからねえ……白人が有権者の多数を占めて、その結果選ばれた白人の大統領は何をしてもかまわない国。それがあの国の『自由と民主主義』の本質だからね」


 カラは不機嫌そうにそう言うとカルビンを見下すような笑みを浮かべた。


「そうです。あの国には白人以外を人間と思う文化は無い。だから法術師をヤンキーお得意の『フロンティア精神』の合理主義で徹底的に研究した。当然、法術師の研究も進むわけだ。だが共和国……いや、旧大陸の国々にはそのように人間を合理的に割り切って解剖の対象にするようなおぞましい『フロンティア精神』の持ち合わせは無い。だから、必然的に法術師の研究は自主的に協力していただける法術師の偉大なる勇気に支えられてきた。だからこうして今回は北川氏の協力を仰ぐことになった。同じ地球人でも旧大陸の人間は新大陸の野蛮人共とは違う。そこのところは間違えないでいただきたい」


 そう言うとカルビンは北川の方に目をやった。北川はと言えばその目に期待と不安が入り乱れたような色を浮かべてカルビンを見つめた。


「そうだよ、俺は任意の協力者……ちゃんとそれなりの待遇を期待してますからね」


 北川は室温が暑いのか革ジャンを脱ぐと自分でもトレードマークにしているアロハシャツを晒してにんまりと笑みを浮かべた。

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