第124話 戸惑う誠、喜ぶかえで
「やっぱりまだ冷たいね。それにしてもどうしたんだい?僕のお尻ばかり見て……もしかして見えてるのかな?何か興奮するものが。ここは僕の自慢の一つでね、僕はここを使うのが一番のお気に入りなんだ。直腸の中を君から出したものが満たしてくれる……それを想像するだけで僕は幸せな気分になれる」
かえでは振り返るとそう言って誠に微笑んだ。アメリアがかえではすべて開発済みの女性だと言ったがまさに調教物のエロゲの最終局面のキャラ状態なのだと知って誠は苦笑いを浮かべた。
確かにかえでのTバックの食い込みはほとんどひも状で何も隠せてはいなかった。
「いえ、何でもないです」
誤魔化すようにそう言うと誠もまた波打ち際に近づいていった。
千要半島特有の黒い砂浜に漂う波はどこまでも透き通っていた。
誠は手を海に付けるが、かえでの言うようにそれは刺すように冷たかった。
「まだ二月だからね。でもいい海だ。見ていて気分が良くなる。誠君はどう思うのかな?」
かえではその下半身の露出度をまるで気にしていないように無邪気に誠にそう尋ねてきた。
「僕はあまり観光地には出かけない質なんで……夏に野球部の合宿に行ったくらいです」
誠は正直にそう答えた。
「そうか、君はどちらかというとインドア派なんだね。確かにこの国では服を脱ぐとすぐに警察が寄ってくるから僕みたいに誰もにこの美しい身体を見てもらいたいとなるとインドア派にならざるを得ない。その点は似たもの夫婦かな」
かえではまるで誠がかえでを妻と認めているかのようにそう言って笑った。
「ああ、僕もお姉さまに野球部に誘われていてね。なんでもどうしても決まらないポジションがあるからそこをやって欲しいと言うんだ。お姉さまはあんな感じだろ?一度言いだすと聞かないんだ。だから僕も引き受けた。そのポジションなら君とより親密な関係になれる。お姉さまに強引に入部させられたことよりそのことの方が僕が入部を決めた理由かな……」
そう言ってかえでは訳ありげな笑みを浮かべた。
「それってキャッチャーですか?かえでさんってソフトボールとかの経験でもあるんですか?」
『特殊な部隊』の野球部最大の欠点はキャッチャーが固定できないことにあった。どのキャッチャーも誠の大きく曲がる縦のスライダーや決め球のフォークを捕ることが出来なかった。唯一、捕ることができるアメリアは自分は絶対サードしか守らないと言って聞かず、試合の度にパスボールやモーションの大きい誠を見て盗塁して来るランナーに投げた球が逸れるなどのエラーを重ねての失点で星を落とすことが多かった。
「高等予科学校時代は陸上をしていた。やり投げでね。肩には自信がある。甲武のやり投げの記録は僕が持っているんだ。しかも、その記録は男子のそれを上回っている。これにはちょっとした秘密が有るんだけどね」
かえでのどこか底知れない笑みを見て誠は戸惑いながら彼女を見つめた。