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第120話 痴女の言う誠の良いところ

「それにしても誠君は無口なんだね。先ほどから僕の行動で東和の法律に違反しているらしいことを指摘してくれていること位しか口にしないじゃないか。まあ、感謝はしているよ。君のおかげで東和の遼州人の常識を知ることが出来た。知識を得ることは楽しい。僕は誠君と出会えて本当に良かったと改めて思ったよ」


 上品にレモンティーを口に含んだ後、かえでは誠にそう言って笑いかけた。


「甲武ではその恰好は普通なんですか?あのお蔦さんさえちゃんと着物を着ていましたよ」


 誠はあまりに常識の無いかえでの格好に呆れながらそうつぶやいた。


「甲武は官憲が厳しいからね。こんな快楽に身をゆだねる自由なんてまるでない国なんだ。だから僕は甲武では常に軍服かフォーマルしか着ていなかった。あと、言っておくとお蔦の事を言うと彼女は下着を身に着けていない。甲武の女性は和服の時は下着を身に付けないものだからね……お姉さまと正月に着物で出かけたと聞いているが、たぶんその時もお姉さまは下着をつけていなかったと思うよ。君も見たんだろ?お姉さまの大事な部分を。お姉さまも男にそこを見せるのが好きだと言っていたからね。甲武の女性には下着を身に着けるという習慣が無いんだ。僕は男装をするから仕方なく下着をつけているが本当は下着をつけるのはあまり好きでは無いんだよ」


 かえでは笑顔でそう言った。


「そうなんですか……っていうかなんで僕が西園寺さんの着物を脱がすこと前提で話をしているんですか!それに西園寺さんもそこまでの変態行為は僕には求めませんでした!往来で着物を脱がすなんてそれも東和では犯罪です!」


 誠は強い口調でかえでにそう反論した。


「そうなのか……でもお姉さまは裸で外出する楽しさを僕に教えてくれた大事な人だからね。お姉さまも裸になる楽しさを知っているんだと思っていたのだが……」


 かえではまたとんでもないことを口走った。


「確かに、西園寺さんは寮をはだかでうろつくことが有りますが……ってかえでさんのその恰好をするのが好きになった理由はやっぱり西園寺さんだったんですね」


 誠はかえでが露出狂になった原因であるかなめのタレ目の笑う顔を思い出して怒りに打ち震えた。


「そうだよ。お姉さまの前では僕はいつでも裸だった。お姉さまが喜ぶから僕はその境遇を楽しんでいた。お姉さまの喜びは僕の喜びだ。そして、誠君。君の喜びがこれからはそれに上書きされるんだ。君は僕の美しい裸体が他の汚らわしい男達に見つめられるのが許せないんだね。これからは僕もその期待に応えることにしよう」


 かえではそう言うと笑顔で紅茶に添えられたスコーンを口に運んだ。


「誠君は東和の多くを何も知らない僕に正直に教えてくれいる。その言葉には真心を感じる。『正直さ』と『真心』これは人が生きる上で忘れてはならない大事なことだと僕は考えている。この瞬間も僕はそんな君の魅力に心惹かれている。僕は本当に幸せな女だ。こんな『誠実』な『許婚』と将来を約束されているなんて……」


 そう言うかえでの言葉には嘘は感じられなかった。誠はようやくここで心からの笑顔を浮かべてかえでを見つめることが出来た。

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