第117話 呆れる誠、滴る蜜
かえでは激しく股間をこすりつけて喘ぎ声をあげている間。誠は生きた心地がしなかった。誰か来るんじゃないのか。その感覚を明らかに楽しんでいて笑顔を浮かべながら行為にふけるかえでを誠は見守る事しか出来なかった。
「かえでさん……せめてトイレでしてくれます?」
誠はまだ開店したばかりで人が少ないことを確認すると喘ぐことに夢中なかえでにそうささやきかけた。
「……あっ……そうなのかな……こんなに興奮して蜜も溢れて……いや、言う通りなのかもしれないな……うっ!……今日は君に見られているということもあっていつもより蜜の量が多い……うっ……」
そう言うとかえでは行為をやめることなくそのまま近くのトイレに向った。
女子トイレに入ったかえでだが、そうなるとかえでは遠慮することなく外から聞こえるような激しい喘ぎ声を上げ始めた。
「これ……本当にデート?何かの罰ゲーム?僕も股間をこんなにして……僕のデート観って間違ってたのかな?それとも僕の日頃の行いが悪いから神様が僕を罰してるのかな?」
しばらくして女子トイレで絶叫していたかえでがひときわ大きな声をあげた後、沈黙が流れた。誠は手持無沙汰にただ自分には似合わない百貨店の雰囲気に照れていた。
「待たせたね。今日は少し調子に乗ってしまった。内ももを流れた蜜を拭くのに手間取ってしまったよ」
さっぱりした表情で現れたかえでのTバックのパンティーは黒いものに変わっていた。ただ、島田が好きなAVに出て来るレースのそれはAVならモザイクが入るほどの透け具合で誠は目のやりどころに困った。
「かえでさん。一応、僕達は警察官なんで往来で変態行為はしないでくださいね。それとそのパンツ。よりかえでさんの露出癖が強調されていますよ」
誠は困り果ててそうつぶやいた。
「女性ならみんな部屋でやっている事だろ?彼女達は自分に自信が無いから部屋で密かに行う。僕は自分に自信があるから人々にその美しい姿を見てもらおうと思って外で行う。それだけの違いだよ。それに僕が自分の表情で一番好きな表情は絶頂が終わってその余韻を確かめている瞬間の顔なんだ。これはリンも美しい表情だと言ってくれているよ。君にも見せたかったな……なら今からもう一度……」
「止めてください!お願いしますからそれだけはやめてください!」
誠は必死になって火照った瞳で誠を見つめて来るかえでに向けてそう言った。
「そうかい、それは残念だ。君には画像を通してでは無く直接その自慢の表情を見てもらいたかったのに……それじゃあ、このデパートには最上階にラウンジがある。そこでお茶にでもしようか」
かえではそう言うと再び誠に纏わりついてきた。増えてきた客達はほとんど全裸に近いかえでの姿に驚いた後、明らかにそれを強制しているのだろうと言うような目で誠を見つけてきた。
『地獄だ……早く帰りたい……』
誠の心はすでに後悔の念に包まれていた。