第110話 じゃあ誠はどう思っているの?
「と、いうのが女性陣の主張な訳だが。地球人だったらここで誰が好きだ!とか言い出す訳だよ。でも神前よ。お前さんはどこまで言っても遼州人だ。誰が好きとか考えたことが無いんだろ?正直に言いなさいな。お前さんはそんなことを考えたこともない。人を好きになるという感情が遼州人には希薄なんだ。だからこれだけ迫られても何にも考えずに、困った顔をするだけで呆然としていられる。まあそれはそれで幸せなのかもしれないけどね」
嵯峨は二本目のタバコに火をつけながら誠に向けてそう言った。
「隊長……他人事だと思って……地球人だってこんな状況下で誰が好き!なんて宣言したら血を見るくらいの事は分かると思いますよ?それともそんなだから地球人はあんなに戦争が好きなんですか?それとも地球人は馬鹿なんですか?」
誠は半分涙目で嵯峨の襟元に縋りついてそう叫んだ。
「おい、神前。アタシをすぐに選ばねえとはどういう了見だ?そんなに生身の女が好きか?分かっちゃいねえな……サイボーグの娼婦のアレはな、それはそれは気持ちがいいもんなんだ。オメエは生身の女では体験できない極楽を味わうことが出来るんだ。そんな体験、してみたくないのか?それにアタシは性感を最高限度まで上げた義体を今使ってる。アタシもそれは凄いことになる。凄いことになってる女を征服する快感を味わったらオメエはもうアタシを忘れられなくなるぞ」
これまでの不機嫌を消し飛ばしたかなめが色気丸出しで誠に言い寄ってきた。彼女の大きめの胸が誠の胸板に押し付けられる。誠は冷や汗と快感に身もだえながら色気たっぷりのかなめのタレ目を見つめ返した。
「なによ、かなめちゃんなんて地球ならAI搭載のダッチワイフと同じ規格で作られた所詮は大人のおもちゃでしょ?その点、私は体力がある。誠ちゃんのあんな大きいのかなめちゃんには悪いけど、誠ちゃんのでっかいアレがアソコに入るのかしら?私は大丈夫。これまですべての穴で試したけど大丈夫で気持ち良かった。だから誠ちゃんは私を選ぶべき!それに結婚生活はセックスだけじゃないのよ。日頃の日常の何気ない会話。気になる話題。面白いと感じる笑いのツボ。これらが全部一致しているのはこの中では私だけ!だから当然誠ちゃんは私を選ぶ!」
かなめを強引に誠から引きはがすとアメリアは誠の顔に自分の顔を押し付けた。
「オタクが悪化して家計が破綻するのは目に見えているな。神前はまだ社会人としての心構えが出来ていない。そこに寄り添い、導く存在が必要だ。そうなれるのは私しかいない。私がパチンコ依存症だというが、この半年間私は一度も負けたことが無い。1回当たり平均10万は勝っている。その金はきちんと貯金しているこういう生活感覚を持っているのはこの中では私だけだ。だから、神前も当然私を選ぶ」
真顔でそう言うカウラに自分をパチンコ依存症と認めてしまうのはどうかと誠は困惑するような表情を浮かべた。
「ああ、そうなんだ。で?かえではどう神前にアピールするのかな?」
嵯峨は興味津々と言うように余裕の表情を浮かべているかえでに目をやった。
「そんなに必死になってアピールすることなど僕には無いよ。すでに勝ちは見えているんだから。それに……明後日のデートでたぶん誠君は僕を二度と手放したくないと思うようになる。それだけは間違いないんだから」
勝利を確信するようにそう言うとかえでは喫煙所を去ってリンを連れて機動部隊の詰め所を目指した。
「さあて、どうだろ?俺としてはもう少しもつれてくれた方が面白いんだけどな」
かなめ、カウラ、アメリアに見つめられてガマの油のガマ状態の誠を見ながら嵯峨はそんなことをつぶやいていた。