第109話 誠は誰のものなのか?
「かえでちゃん!そんな身体の特徴の事でカウラちゃんを虐めて何が楽しいの?確かにこの中で胸で誠ちゃんのアレをはさめないのはカウラちゃんだけ……ああ、かなめちゃんも誠ちゃんのが大きすぎるから無理かしら?」
アメリアはとぼけたような言葉でかなめを挑発した。
「馬鹿言ってんじゃねえ!アタシはこう見えて98のGカップだ!世間様公認の爆乳女なんだ!それにオメエは図体がでかいから胸もでかいだけだろうが!その胸は身体のデカさに比例してデカいだけだ!」
誠はかなめの言葉を聞いて確かにかなめならそれくらいあるだろうと不謹慎なことを考えていた。
「それより、隊長。さっきは私達の話もしていましたよね。『ラスト・バタリオン』の聴力を舐めてもらったら困りますよ」
アメリアは細い目で鋭く嵯峨をにらみつけた。
「ああ、神前がお前さん達の誰とくっつくかってこと。俺の読みだとかえでが本命。対抗がかなめ坊、そして大穴がベルガーなんじゃないかと思ってるんだけど……かなめ坊よ、競馬好きのお前さんならどう読む?」
嵯峨は完全に他人事を気取って苛立って今にも火の付きそうな調子のかなめに声をかけた。
「叔父貴……一遍死ぬか?ネバダの砂漠じゃ散々死んだらしいじゃねえか。今更死ぬ回数が1、2回増えもたいして気にならねえだろ?射場に来い。蜂の巣にしてやる」
怒りに任せたかなめの低い声が喫煙所に吐かれた。
「おっかないこと言うねえ。冗談だって。それに……神前には全員を手に入れてハーレムを建設してウハウハになる裏ワザが有るんだけど……まあその話は今話すことじゃないか」
嵯峨はまたとんでもないことを言い出した。そして誠は誰一人に絞れない自分にそんな裏技が有ると知って食らいつくような視線で嵯峨を見つめた。
「そんな方法が有るんですか?教えてください!僕が誰かを選ぶと他の人が僕を殺しに来そうな予感を感じてたんです!出来れば全員を……」
そこまで誠が言ったところでかなめの右ストレートが誠の顔面にさく裂した。
「オメエまで『駄目人間』に感化されてどうする!オメエは遼帝国の皇帝か?西モスレムのスルタンか?そんなことはアタシが許さねえ!神前はアタシんだ!」
かなめはそう言って自分が言った言葉の意味を一瞬遅れたタイミングで理解して顔を真っ赤に染めた。
「西園寺。貴様は日野を虐められなくなったからその代わりとして神前を虐めるつもりなんだろ?そんな変態行為を隊長である私が許すと思っているのか?神前をまっとうな道に導けるのはこの中では私一人だ。神前もそのことは理解しているだろう」
カウラは少し俯き加減で恥ずかしがりながらそう言った。
「私は面白ければそれで良いんだけどね……でも誠ちゃんは誰にも渡さない。かえでちゃんに貰ったあの誠ちゃんのアレをかたどったおもちゃ。あれ最高なのよ。アタシも暇があるとあれでしてるけど本当にもう最高の気分になれる。アレの本物がついてるのよ、誠ちゃんには。そんな面白い物、他の誰に渡すもんですか!」
アメリアの発言はいつも通りどこかズレていると誠は思っていた。それ以前にそんなものが隊の女子の間に出回っているという事実を知って誠は自分の存在は大人のおもちゃ以下の存在に落ちたんだと自覚した。
「君達は忘れているが誠君と僕は『許婚』の関係にある。誠君が誰のものか?論議の対象にすらならないな。それは僕だけのもの……それは僕のお母様と誠君のお母様が決めて、僕も誠君も納得している話なんだ。お姉さま達の邪魔が入らなければ二人はとうの昔に結ばれていた」
かえでは自信満々にそう言い切った。
「その過信が命取り……意外な人物の手に誠様は落ちることになる……そのことはこの渡辺リンだけが知っている……」
この場の誰にも聞こえないような小声でリンがそうつぶやくのを誠は聞き逃さなかった。