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第106話 無責任な『駄目人間』

「そんな僕の話なんかどうでも良いんです!かえでさんの変態性は西園寺さんみたいに痛く無いんで我慢できそうですから。それに童貞脱出できそうですし。それより隊長はお蔦さんと何時結婚するんですか?」


 誠は自分のこれからの生活への恐怖に耐えかねて嵯峨に向ってそう尋ねた。


 嵯峨は明らかに理解できないことを誠が行ったかのような顔をしてタバコをふかしていた。


「結婚?なんでそんなものしなきゃならないのかな?不思議なこと言うね……結婚なんて紙切れだけの話でしょ?お蔦にはたぶんあと百年は子供が出来ない。だから子供の事を考えて籍を入れて子供の為に……まあ、あまり俺ってそう言うこと考えない主義なんだよね。俺は無責任な男だから。結婚なんて所詮は世間の目をごまかすための儀式でしかない。それが俺の認識。俺はそんな世間の目なんてどうでも良いから。そんなつまらないことに労力を使うだけ無駄だよ。第一あんな制度誰が考えたんだよ。俺は結婚式に呼ばれるために何の為にこんな会を開いてこれからは堂々とセックスしますって宣言するようなことを広めて回ろうとするのか意味が分からないよ」


 嵯峨は誠の事を不思議な生き物を見るような目で見つめながらそう言った。


「そんな無責任ですよ!お蔦さんはこれから一緒に住むんでしょ?」


 誠は自分の言葉をまるっきり理解していない様子の嵯峨にムキになってそう言った。


「そうだよ。住むよ。当然セックスもたくさんするつもりだ。でも子供は出来ない。なんで今の関係を続けちゃいけないの?俺にはそんな世間様の顔を立てる為だけの結婚なんて制度は無意味にしか思えないんだよ」


 平然とそう言い放ってタバコの煙を吐く嵯峨に誠は業を煮やしたようにまくしたてた。


「本当に隊長は『駄目人間』ですね!この東和ではそんな関係を『爛れた関係』と言って忌み嫌うんですよ!僕もそんな隊長の下で働きたくは有りません!男と女が一緒に生活をするようになる。だったら結婚するのが当たり前でしょ?結婚しないでそんな生活をするなんてふしだらですよ!」


 誠の言葉に嵯峨は明らかに誠を見下すような表情を浮かべた。


「それじゃあまるで茜だよ。俺もね、茜に『結婚しろ』って言われたから昨日、お蔦に『結婚しない?』って言ってみたの。そしたら俺みたいな高貴な生まれの人間と自分みたいなにわか貴族の平民上がりは釣り合わないって言うんだよね。もうお前は清原蔦という女侯爵なんだと言っても聞かないんだ。相手が嫌がってるのになんで結婚するの?それこそおかしいじゃん。法律の条文にも『結婚は双方の合意』の下でするものだって法律家の俺でも知ってることなんだ。俺もお蔦もそんなこと合意してない。だから結婚はしない」


 嵯峨は自分の論理に自信があると言うように胸を張ってそう答えた。


「それは口だけです!女の人はそう言う関係になったら結婚したがるものです!」


 誠は本で読んだ知識だけでそう言った。その知識の浅さを見透かしたように嵯峨は口を開いた。


「あのねえ、この国は80パーセントの人間が結婚せずに一生を終えるんだ。その結婚する20パーセントのうち18パーセントは見栄や外聞の為に結婚している。この国じゃ結婚なんてものはステータスシンボルに過ぎないの。俺にはプライドが無い。見栄も無い、外聞も気にしない。だから結婚して既婚者になりましたと自慢する気もさらさらない。だから結婚なんて面倒なことは必要ない。俺は法律家だから今の俺とお蔦の関係は『事実婚』と言う結婚と似たような法律的状況にあると認識している。だったら役所に書類一枚出すだけの結婚に何の意味があるの?逆に俺が聞きたいくらいだよ」


 嵯峨は自信ありげにそう言うと誠を見上げた。


「この国には恋愛結婚とか無いんですか!残りの2パーセントは愛し合って結婚してるんでしょ?」


 誠の言葉に嵯峨は大きく首を横に振った。


「残りの2パーセントは性欲に負けてのできちゃった婚。子供の為に仕方なくって言う俺が最初にした結婚と同じパターンだ。俺も所詮は遼州人だということかな?だから恋愛結婚なんて言うモノは物語の中にしか存在しないフィクションで実際にそんなものがあるなんて言う話は俺も聞いたことが無い。俺もこれまで何10回となく結婚式に出てきたがすべて見栄と外聞だけでくっ付いた見てて嫌になるカップルだから俺からしたら何のための結婚だよと言うモノばかり。うちのパートのおばちゃん達に結婚について聞いてみ?あの人達旦那に惚れたとか絶対言わないぞ。旦那の給料が多かったから、出世の見込みがありそうだから、実家が金持ちだったから。出てくる回答はこの3つに決まってるんだ。ああ、一件だけ遼州人同士の恋愛結婚を俺は凄く身近で知ってる。そいつ等は今は既に離婚してるからたぶんあれは恋愛結婚だ。愛が冷めたんだね。愛とは冷めるもの。恋愛なんて一時の気の迷い。それが恋愛結婚の行き着く先なんだ。ちなみに東和の離婚率は1パーセントに満たない。見栄と外聞だけで結婚してるんだもんね。離婚なんて恥ずかしい事するわけがないよね。いつかは冷める愛で結婚するよりは見栄と外聞と性欲だけで結婚している遼州人は愛とか言うものの為に結婚してはすぐに離婚する地球人よりよっぽど成熟してると俺は思うよ」


 嵯峨は平然とそう言うとタバコをゆっくりとくゆらせた。

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