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第100話 童貞の父

「そうか……おめでとう。子を持つというのは歓迎するべきことなんだろ?それなら歓迎してやれば良い」


 そんな言葉が突然店内に響いたので全員の視線がその言葉を発したカウラに向った。


「おい、カウラ。このどこがめでたいんだ?神前は童貞だ。それが本人の同意も無しに勝手に子供を作らされた。こりゃあもう犯罪だぞ」


 詰め寄るかなめにカウラはまったく理解していないというような真顔で烏龍茶を飲んでいた。


「1つの生命が生まれた。しかもその遺伝子は神前のものを継いでいるという。これは良いことなんじゃないのか?」


 カウラには事態の重大性がまったく理解できていないようだった。


「あのね、カウラちゃん。確かに愛し合ったのは氷上君子とかえでちゃん。でも子種は誠ちゃんのもの。つまり、遺伝子検査で父親は誠ちゃんと言うことになる。これが世間に知れてごらんなさいな……一童貞が人気女優を孕ませて引退させた。そんな面白おかしいニュースをワイドショーが放っておくと思う?いっぺんに話題が広まってさっきのかえでちゃんの時以上にマスコミが隊に押し寄せるわよ!それこそ本当に仕事にならなくなるわよ!」


 アメリアもここに来て半分キレ気味に事態をまるで呑み込めていないカウラにそう言った。


「それならば大丈夫です。私の信頼のおける産婦人科を氷上君子には紹介してあります。万が一にもそのような秘密がバレることは有り得ません」


 黙ってこの様子を見守っていたリンがはっきりとそう言い切った。


「未婚の母ならぬ童貞の父……僕ってどこまで遊ばれればみんな気が済むんだろう……」


 誠はズボンを履いてベルトを締めながら絶望に苛まれつつそうつぶやいた。


「大丈夫だよ。氷上君子は僕の為なら命を捨てるほどに僕に惚れている。だから、たまに僕とベッドを共にできる関係にあれば彼女としても何も言えないはずだ。ただ心配なのは彼女も君に興味があるみたいなんだ。あえて言えばそれが気になることくらいかな」


 かえではさわやかな笑みを浮かべてそう言うとお気に入りのボンジリを食べた。


「かえで……オメエにゃ呆れてものもいえねえな。何もそんなオメエの女との色ごとの話をしてるんじゃねえ。それにだ。その二人の愛が覚めて、養育費だなんだの話になったらどうする?神前が払うのか?コイツは氷上君子に手すら触れるどころか会ってもいねえぞ?そこんところを考えた事が有るのか?」


 かなめの言葉にようやく理性が自分の下に戻って来た誠が大きくうなずいた。


「その時は僕のポケットマネーで何とかする。なんと言っても誠君は僕の『許婚』なんだ。そのくらいの僕の火遊びを許してくれる度量を誠君は持ち合わせている……そうだろ?誠君」


 そう言って涙目で見つめて来るかえでに誠はうなずくより外に選択肢を思いつかなかった。

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