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7話 ゴブリンとスライムの増殖、そして来訪者

洞窟をダンジョンとして少しずつ形づくり、外界に出て魔物を取り込むことで力を蓄えてきた俺。


ある日、ダンジョンの奥にあるコア付近で意識を集中させていると、取り込んだ魔力から“新たな命”を生み出せそうな感覚がやってきた。


「さて……そろそろゴブリンを増やしてみるか」

以前取り込んだゴブリンから得た情報と魔力を使えば、同じ種族を作り出せる。とはいえ、ゴブリンは性格や行動が荒っぽい面もあるので、増やしすぎるのは危険だ。

「今回は5匹……いけるかな」

意識を傾けると、コアの周囲にごわごわした灰色の肉塊が生まれはじめ、そいつが徐々にゴブリンの形を成していく。


生まれてきたゴブリンたちは、不思議そうにきょろきょろと辺りを見回していたが、ダンジョンの魔力を感じ取ったのか、こちらに対して直ちに敵対する様子はなかった。


「ゴブリン語、分かるかな……」

試しに簡単な言葉を投げかけると、彼らはぎこちなく反応を示す。人間レベルの会話は無理でも、最低限の指示はできそうだ。


「よし、お前らにはダンジョンの入り口付近で見張りをしてもらう。勝手に外に出て暴れないようにな」

新しく生まれたばかりのゴブリンたちには縄張り意識も薄いようで、仲間同士で軽く顔を見合わせると、渋々ながら指示に従った。


「スライムも追加で出しておきたいな」

スライム由来の水魔法は、自分でも使えるが、スライム本体も小規模ながら“水魔法”を使うことができる。


せっかくなら複数体置いておけば、ゴブリンだけではできない戦い方を担ってくれそうだ。

コアに意識を集中し、水分をベースにした魔力の塊を形成する。すると、ぷるぷると青く透き通ったスライムが4体、次々と姿を表した。


「お前らはゴブリンとは別に、洞窟内の水たまり周辺でうろうろしてくれ。何かあったら、俺のところに戻ってこい」


スライムは「ぷるん?」と首をかしげる仕草で応える。まだ生まれたばかりなので、一連の動作がどこか愛嬌があるが、彼らが放つ魔力は確かに水魔法の使い手だ。

「さて……これでゴブリン5匹、スライム4匹がそろったな。ダンジョンの防衛力もそこそこ上がったか」


しばらく洞窟の管理を続けていたある日、外から新たな気配が近づいてくるのを感じた。複数の足音、金属がぶつかり合う甲高い音――おそらく“人間”だ。


「……人間がいて良かったけど、色々不安要素も増えたな」


反響定位でざっと探ってみると、どうやら4人ほどのパーティらしい。入口付近で警戒しながら、こちらの様子をうかがっている。


「俺が直接戦うのは得策じゃないな。こっちの人間についてはまだ情報不足だ」


幸い、洞窟の内部なら“ダンジョンコア”としての権限が強い。地形をある程度変化させることもできるし、何よりゴブリンとスライムがすでに配置されている。

「試しにどこまで対応できるか、見てみるか……」


洞窟の入り口を慎重に進んできた冒険者たちが、暗がりの先でゴブリンたちの姿を発見したようだ。

「うわ、ゴブリンがいるぞ!」

「スライムまで……結構な数だな、どうする!」


ゴブリン5匹は敵意むき出しにギャーギャーと吠え、石斧や木の棒を構えて突っ込んでいこうとするが、俺のダンジョン操作で通路を少し細くし、ゴブリンたちが正面衝突しなくて済むように誘導する。


「一気に突っ込めば返り討ちに遭う可能性がある。ここは威圧して追い返すだけでいい」

ゴブリン語で指示を出すと、リーダー格らしきゴブリンが「ガルルッ!」と雄叫びをあげた。突撃はせず、通路の陰から威圧する形で一斉に武器を掲げる。


同時に、スライム4匹が手前の水たまりに集まり、ほんの少しの水魔法を放った。勢いよく飛んでいく小さな水の弾が、壁や天井を叩いて、水しぶきが通路に降り注ぐ。

「こ、こっちにもスライム!? 水魔法まで使ってくるのか!?」

「ゴブリンと対峙しながら遠距離攻撃は厄介だ…!」


ゴブリンの数とスライムの水魔法の牽制が合わさり、冒険者たちは思った以上に動きづらい状況に陥っている。


さらに、こちらは本格的に殺しにはかからず、ひたすら圧力をかけてくるだけなので、逆に“不可解な強敵感”を醸し出しているようだ。


「まずい、ここは撤退しよう……!」

「こんな序盤で苦戦してたら先に進めないし、他にも罠がありそうだ」


冒険者の一人が臆したように声を上げ、それに同調するかのように仲間が頷く。

結局、奴らは小競り合いを起こすこともなく、荒っぽく水弾を防ぎながら「退くぞ!」と叫んで洞窟から出ていった。


「あっさり退いてくれたな。こっちとしては楽で助かった」

俺自身は通路の奥で様子をうかがっていただけだ。万が一、彼らが奥まで踏み込むなら地形操作やゴブリン・スライムの攻撃を強化するつもりだったが、そこまでの事態にはならなかった。


「この世界には、こうやってダンジョンを攻略しようとする冒険者がいる。いずれもっと強いパーティや、まともな装備の連中が来るかもしれない」

そうなった時、今のままのゴブリンやスライムで防衛しきれるかどうかは正直わからない。


ゴブリンたちは勝ち誇ったように、ギャーギャーと小躍りしている。スライムはプルプルと揺れながら水たまりに戻っていく。

「ひとまず、今回のところはこれでいい。これから先は……もっと数を増やすか、ほかの魔物を取り込むかだな」


ダンジョンコアとして、直接戦わずに相手を撃退した今回の一件は、貴重な経験になった。いつか本格的に攻め込まれる前に、さらに迷宮を成長させる必要があるだろう。

「まあ、少しずつやっていくさ。とりあえず今日は、無傷で追い返せたってことで上出来だな」


そう呟きながら、俺は仲間(?)となったゴブリンたちとスライムの様子を改めて確認し、次の手を思案するのだった。

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