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4話 土と血肉の混ざり合い

ホーンラビットを取り込むことで命拾いした私は、洞窟の奥深くで身体を休めながら新たな疑問を抱いていた。これまでは土や岩の擬似身体を作り、なんとか外へ出ていたが、それでは動きが鈍く、攻撃を受ければ簡単に崩れてしまう。

「もっと“肉体”らしい身体を作れないだろうか……」


そんな考えが頭をよぎるのも、ホーンラビットを取り込んだことで、自分の中に“血肉の感覚”が微かに残っているように感じるからだ。スライムを取り込んだ時とは明らかに違う、動物的な質感というか、温度というか――表現しづらいが、とにかく何かが違う。


土と血肉の融合


洞窟の床で崩れかけた土の身体を見下ろしながら、私は意識をめぐらせる。スライムを産み出せるのだからホーンラビットも産み出せるだろう。

ホーンラビットを魔物として産み出さず肉体だけを産み出しそれを材料に人間の体の部分的な再現ができるかもしれない。

「土の擬似身体に、この血肉の要素を混ぜ込めれば……」


試しに、ダンジョンの壁や床から土や岩を再び集めつつ、血肉を作りそれを織り交ぜてみる。

すると、まるで粘土と水が混ざり合うように、土の中に生温い“血肉の膜”のようなものが少しずつ広がっていった。


最初は不気味な見た目だった。粘土のような土の塊の表面に赤みを帯びた筋が浮かび、ちぎれた肉片のように見えなくもない。それでも意識を強く集中し、徐々に形を整えていく。


数時間かけて、ようやく人間に近い形状をした身体が完成した。以前の土のゴーレム的な身体とは違い、表面には柔らかな感触があり、ほのかに体温のような熱を帯びている。血管――と言っていいのか分からないが、赤い筋が身体全体をかすかに走っているのが分かる。


「……これはまるで、“人間”と“土”を混ぜたような身体だな。」


動かしてみると、以前よりはるかにスムーズに動けるのが分かる。とはいえ、人間の身体そのものではないため、少しぎこちなさは残る。筋肉や骨のような仕組みもどこまで再現できているのか怪しい。だが、少なくとも土だけの身体よりは敏捷性が高まり、外の世界で動き回るには適しているだろう。


触れてみると、冷たい土の感触とほんのり温かい血肉の混ざり合った、奇妙な温度差がある。指先を動かすと、土の粒子と肉体の繊維が互いに絡み合って、ぎこちなくも確かに“生きた身体”として動いている。


新しい身体を作り出したことで、私は一歩前進することができた。


今後は森林をより安全かつ効率的に探索できるようになる。


ホーンラビットからはスキル「瞬発力」を得られた。

この新しい体と併せて使えば以前よりも機敏に動けるため、より強い魔物とも対等に近い形で戦える可能性が生まれた。


ホーンラビット以外の魔物を取り込めば、さらに多様な“肉体”の要素を取り入れて強化できるかもしれない。


もちろん、課題は山積みだ。肉体の生成をしていて感じたことだがダンジョンの魔力は有限で生成を行う度に魔力は減る。


おそらくスキルを使っても減るだろう。


何より、この身体はあくまで「再現した血肉」と「土」の融合であり、普通の生物とは大きく違う。過信は禁物だ。

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