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3話 森の中の探索とホーンラビットの脅威

洞窟の中で擬似的な肉体を作った私は、さらに外の世界へと足を踏み出す決心をした。


といっても、土や岩を寄せ集めて形を作ったこの身体は、非常にぎこちなく扱いづらい。腕を少し動かすだけでも関節が軋むような感覚があり、うまく歩こうとすると足元の土が崩れて転びそうになってしまう。


「……これは予想以上に動きづらいな。」


それでも、動けないよりは何倍もマシだ。私は土の擬似肉体をぎこちなく動かしながら、洞窟の外へと進んだ。


森の小動物的魔物たち


外に出ると、やはり一面が鬱蒼とした森林だった。高い木々が空を隠し、地面には苔や落ち葉が厚く積もっている。湿った空気に混ざって、かすかに甘い花の香りも漂っている。


「よし……まずは、この辺りをざっと探索してみよう。」


土の擬似身体をひきずるように動かしながら、私は少しずつ周囲を見回した。森の奥を覗き込むと、鳥のさえずりや小さな生き物の気配を感じ取る。どうやら、この森には多様な生き物――あるいは魔物が生息しているらしい。


実際に少し歩くと、リスに似た小さな魔物を見かけた。毛が白く、尻尾がふわふわとしている。私に気づくと、興味深そうに首を傾げていたが、数秒後には「ピィ」と鳴いて木の上へと逃げていった。


「……可愛いもんだな。危険はなさそうだ。」


さらに進むと、小型の鳥のような魔物や、小ぶりなイノシシのような魔物も見かける。それぞれ森の中を警戒心なく動き回り、私をひと目見ると警戒したり逃げ出したりする。どうやら、土でできた擬似身体は見た目も動きも不自然すぎて、彼らからすると「謎のゴーレム的存在」に見えるのかもしれない。


ホーンラビットとの遭遇


「思ったより可愛い魔物も多いな……あれ? なんだ、あいつは。」


視界の端に、やや大きめのウサギのような魔物が映った。体長は30センチほど、白っぽい体毛を持ち、額から鋭い角が一本伸びている。角の先端は黒ずんでいて、嫌な鋭さを感じる。


「ホーンラビット、か……?」


ゲームやファンタジーで見た覚えのある名前が頭をよぎる。普段は可愛い姿だが、その角で突進してくると致命傷になりうる危険な魔物だ。


私が物陰から様子を伺っていると、ホーンラビットがこちらの存在に気づいた。耳をぴくりと動かし、じっと私を睨んでいる。警戒しているのか、あるいは獲物を見つけて狙っているのか、どちらにしても穏やかな気配ではない。


「まずいな……逃げられるか?」


ところが、土の擬似身体は動きがぎこちなく、素早く走れるわけでもない。こちらが一歩動くたびに重たい音をたて、足が沈み込む。逃げようとすればするほど、逆にホーンラビットを刺激してしまう。


「やばい……来る!」


ホーンラビットは地面を蹴って一直線に突進してきた。その角は鋭く、土の体では貫かれてしまう可能性が高い。


必死の洞窟誘導


「くっ……そうだ、洞窟に誘い込めば!」


私は擬似身体の動きづらさをこらえながら、何とか洞窟の方へ後退する。ホーンラビットは私を追いかけるように何度も突進してきて、ギリギリのところで回避しつつ、洞窟に近づいていった。


「うおっ……あぶねぇ!」


何度目かの突進で、角が私の土の脚に突き刺さる。足元の土が崩れ、私はバランスを崩して地面に倒れ込んだ。


擬似身体に痛覚はないものの、形が崩れて動きづらさがさらに増す。


「おいおい、どうすりゃいいんだよ……!」


ホーンラビットが角を引き抜き、再びこちらに向き直る。今度こそ狙いを外さずに仕留める気だ。


「ここまで来れば……!」


すでに洞窟は目と鼻の先。私は最後の力を振り絞り、洞窟の入り口へなんとか転がり込んだ。ホーンラビットも、まるで私を仕留めにくるように洞窟へ飛び込んでくる。


「勝負はここからだ……!」


洞窟に入った瞬間、私はダンジョンの地形を自在に操れる。ホーンラビットを取り込むチャンスはここしかない。


ホーンラビットが突進してきたタイミングで、洞窟の壁をぐにゃりと伸ばし、巨大な檻のように変形させる。すさまじい勢いでぶつかってきた角が壁を砕こうとするが、ホーンラビットにとってはこの空間が完全に「アウェイ」だ。


「やらせるかよ!」


壁から角を引き抜こうとするホーンラビットに地面から土の突起を突き刺す。


ホーンラビットは後ろへ飛んで角と突起を引き抜き、こちらを睨んだがそのまま床に倒れ込んだ。


「倒した……のか?」


ホーンラビットが力尽きたことを確認し、私は壁や床の形状を元に戻す。すると、ホーンラビットの体が洞窟内――つまり私のダンジョンコアへと吸い込まれていくのを感じた。


「ああ……また、取り込んだ。」


ホーンラビットの残留魔力が流れ込む。スライムの時とは違う、動物的な俊敏さや鋭い攻撃性がそこに混じっていた。


スキルは「瞬間力」と言ったところか。


「これで、また少し強くなれた……かな。」


洞窟の床に崩れた土の擬似身体を見て、私は苦笑する。

「せっかく作った身体、また修復しないとな……。でも生き延びられてよかった。」


ホーンラビットの脅威を乗り越え、どうにか無事に戻ってこられたものの、土で作った擬似身体の不便さと動きの悪さは身に染みた。


もっと動きやすく、そして防御力のある身体をどう作ればいいのか、改善が必要だ。


「この森には他にも危険な魔物がまだたくさんいるだろう。簡単には生きていけないってことがよく分かったよ……。」


だが、ホーンラビットを取り込んだことで、機敏さや跳躍力を少しは身につけられるかもしれない。あるいは、後々に役立つアイデアが浮かぶ可能性もある。


「こうやって力を吸収していけば、いずれこのダンジョンをもっと進化させられるはずだ。それに探索できる範囲を広げていけば人間にも会えるかもしれない」


自分がダンジョンコアという特殊な存在であることを再認識する。


ダンジョンを拡張し、魔物を取り込み、擬似身体を改善する――その過程で私はこの世界でどうやって「生きる」かを模索していくつもりだ。


「よし……次はもっと慎重に、でも積極的に動いてみよう。」


擬似身体の修復を頭の片隅で考えながら、私は次にどう動くかを思案するのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!


主人公がダンジョンコアとして少しずつ力をつけていく様子を楽しんでいただければ幸いです。


皆さんの応援やコメントが、物語を続けるうえで大きな励みになっています。もしよろしければ、お気軽に感想を書いていただけると嬉しいです!

(また、誤字脱字など見つけた際にはご指摘いただけると助かります。)


それでは、次回もよろしくお願いいたします!

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