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第23話「戦場を駆ける者たち」

街はすでに火の海と化していた。瓦礫が崩れ、炎の熱気と焦げた臭いが辺りを包む。冒険者たちは息も絶え絶えになりながらドラゴンと戦い続けていたが、圧倒的な力の前に次第に追い詰められていく。


「全員、陣形を立て直せ!」

ギルド長の声が戦場に響いた。彼は全身に汗を滲ませながら、倒れそうな体を無理やり奮い立たせていた。だが、冒険者たちはすでに疲弊しきり、盾を掲げる手も震えている。


「ギルド長! もう無理です!」

剣士の一人が叫ぶ。周囲には仲間の屍が散らばり、生存者も立ち上がる力を失っていた。


「まだだ……! 我々がここで倒れれば、街が滅びる!」

ギルド長は歯を食いしばり、崩れた陣形を一人で支え続けていた。しかし、目の前のドラゴンはその姿を嘲笑うかのように、大きく口を開けて炎を溜め込み始める。


「くそっ、間に合わない!」

ギルド長は大剣を握り直し、最後の力を振り絞って立ち向かおうとする。しかし、そこに追撃の尻尾が迫り――。


ゴオォォンッ!


突如、戦場に轟音が響き渡り、ドラゴンの顔面が激しく弾き飛ばされた。冒険者たちが驚いて顔を上げると、そこに現れたのはエレメントスライムだった。


「ドラゴンとは大きな生き物なのですねぇ」

エレメントスライムは余裕たっぷりの声で言い放つ。その体は青白く光り、風、火、水、土――四つの属性が渦巻くように揺らめいている。


その声は確かに人の言葉だった。冒険者たちは驚愕し、誰かが半ば呟くように叫んだ。

「しゃ、喋った……スライムが喋ってるぞ!」

「……スライム? いや、違う……何だあれは?」

「まさかエレメントスライム……だと?」


ドラゴンは怒り狂ったように咆哮し、エレメントスライムに向かって鋭い爪を振り下ろす。しかし、その攻撃はスライムの柔軟な体によってあっさりとかわされた。


「そんなに慌てないでください。あなたの相手は、まだこれからですよ」

エレメントスライムはドラゴンの足元に土の魔法を放ち、地面を盛り上げて足を絡め取る。動きを封じられたドラゴンが不満げに吠える間に、エレメントスライムは風の刃を放ち、その頬に浅い傷を刻んだ。


「次は、これです」

続いてエレメントスライムが赤々と輝く火球を生み出し、ドラゴンの胸元へ撃ち込む。爆発音と共に炎が鱗に弾け、ドラゴンがたまらずバランスを崩す。


その瞬間、ゴブリンジェネラルが戦場に現れた。その巨体と禍々しいオーラが場の空気を一変させる。


「追いついたぞ!」

ゴブリンジェネラルは巨大な大剣を振り上げ、ドラゴンの足元に叩き込んだ。その衝撃でドラゴンが完全に地に伏せる。


「……今度は何だ?」

「ホブゴブリン……?でも、あんなデカいはずが…!」

「まさか……あれはゴブリンジェネラル!?」


「これで終わりだ!」

ゴブリンジェネラルはさらに追撃を仕掛け、ドラゴンの肩口に深々と剣を突き刺す。その血飛沫が炎の中で蒸発し、鉄の臭いを漂わせた。


ドラゴンは最後の抵抗を見せるかのように尻尾を振り回すが、エレメントスライムが再び前に出た。


「おっと、まだ終わってませんよ」

エレメントスライムは水の魔法をドラゴンの口元に放ち、溜め込んでいた炎のブレスをかき消す。冷却された喉から白い煙を吹上げドラゴンは激しく咳き込んだ。


「これで動きは止まったな!」

ゴブリンジェネラルがその隙を見逃すはずもない。大剣を肩に担ぎ直し、渾身の力を込めた一撃を振り下ろした。


「グァアアアアアッ!」

ドラゴンは断末魔の咆哮を上げ、その巨体が崩れるように地面に沈んでいった。冒険者たちはその光景を呆然と見つめ、ようやく訪れた静寂に息を呑んだ。


「ふん、思ったより手応えがあったな」

「そうですか、私は全然でしたがね」

エレメントスライムの挑発に怒るゴブリンジェネラル。

「フンッ!俺も全然だった!」



「終わったか?」俺はドラゴンの首を担いだまま、声をかけた。


「さすがです。主よ」

「主は頭だけでいいのか?なら俺はドラゴン全部を持って帰る」と言ってゴブリンジェネラルがドラゴンの尻尾を引きずっていく。

「欲張りな奴だな…」


「では私は一足先に戻っておりますので」


エレメントスライムは地面を滑るように洞窟の方角へと向かう。その背に向かってゴブリンジェネラルが「手伝え!」と怒鳴りつけたがエレメントスライムはすぐに見えなくなった。


ボロボロの体を押してギルド長が頭を下げにくる。

「今回のドラゴン討伐への協力感謝する」


「俺が必要な頭は貰っていく、他は好きにするといい」と首の根本を切り取られたドラゴンの死体を一瞥する。


「重ねて礼を言う。君のような獣人は見たことがないがこの土地に由来する者か?」


ギルド長の問いには答えず、ドラゴンの首を持ったまま洞窟の方角へと森まで大きく跳躍した。



ゴブリンジェネラルがドラゴンを運ぶ途中、対峙した剣士とすれ違った際に奇妙なものを見られる目で見られて「なんだ!見せ物じゃないぞ!」と怒鳴りつけたという話をゴブリンジェネラルから聞いた。

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