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10話 焼け跡の主、襲来

洞窟の静寂を裂くように、遠くから響く低く荒々しい咆哮。それは地面を揺らし、ダンジョン全体に不穏な波動を走らせた。俺――ダンジョンコアの意識が、瞬時に外部の脅威を察知する。


「来たか……!」


数日前、外の森に漂っていた異様な気配。その正体がついに姿を現したらしい。反響定位を使って様子を探ると、洞窟の入り口付近に巨大な魔物が接近しているのが分かった。足音は重く、鋭い爪が地面を削る音が鮮明に届く。さらに、わずかに焦げ臭い空気が洞窟の中へ流れ込んできた。


「やっぱり火属性の魔物か……!」


視界を広げ、外の森を確認すると、そこに現れたのは漆黒の毛並みを持つ狼型の魔物――フレイムファングだった。その目は赤く燃え盛り、口元からは炎のような吐息が漏れている。全身から立ち上る熱気が周囲の木々を焦がしながら、堂々と洞窟へ向かって歩みを進めていた。


「おいおい……どう考えても、ここまでの敵じゃないだろ……!」


背丈は普通の狼の二倍以上。長い尻尾の先からは炎が揺らめき、その爪は地を焼くように発光している。まるで自然そのものがこの魔物を避けるように、森の中に道ができていた。


俺は即座にダンジョン内のゴブリンとスライムたちに指令を送った。


「ゴブリンは通路を防衛しろ! スライムは火に弱いかもしれないが、水魔法で遠距離から牽制だ!」


ゴブリンたちはすでに集落を出て洞窟の入り口付近で待機していた。リーダー格のゴブリンが「ガルルッ!」と雄叫びを上げると、仲間たちが次々に武器を構える。一方、スライムたちは水たまりの中から体を揺らし、徐々に洞窟の狭い通路へ移動を始めた。


フレイムファングが洞窟の入り口に到達するや否や、低く唸り声を上げた。まるでこの場所が自分の縄張りであるかのように威圧感を放ちながら、足を踏み入れる。


「ガァァッ!!」


咆哮とともに口から火の玉を吐き出す。それは洞窟の入り口を覆うように炎の壁となり、ゴブリンたちを一時的に後退させた。


「まずい、火力が高すぎる……!」


しかし、リーダーゴブリンは怯むどころか、その場を仕切るように指を鳴らした。彼の合図で、ゴブリンたちは一斉に通路の側面へ移動し、隠れるように体勢を整えた。


「よし……いけるか?」


その瞬間、スライムたちが一斉に水弾を放った。水たまりから生成された小さな水の玉がフレイムファングに向かって飛び、火の玉を消し去るようにぶつかっていく。


“シュッ!”

水弾が火の壁を浸食し、フレイムファングの体表をわずかに濡らす。しかし、炎を纏った毛並みはすぐに蒸発し、わずかに焦げた匂いが漂っただけだった。


「くそ、ダメージが足りない……!」


フレイムファングはさらに奥へ踏み込むと、その巨大な体で通路を進む。狭い通路を通過することで動きは鈍くなったものの、鋭い爪で岩を引っ掻きながらゴブリンたちの待ち伏せ場所を狙っていた。


一進一退の攻防


ゴブリンたちは通路の陰から次々に石斧や木の棒を振り下ろしたが、フレイムファングの燃える毛並みに触れるたびに火傷を負い、武器を弾かれてしまう。それでも、彼らはひるむことなく攻撃を続けた。


「ガルルルッ!」

リーダーゴブリンが吠えると、後方にいた数匹が松明を投げつけた。炎を操る魔物に火が効くかは分からないが、それでもわずかに視界を乱す程度の効果はあった。


その間にスライムたちが再び水弾を連射する。


“シュバッ!シュバッ!”

フレイムファングの体に飛び交う水弾がヒットするたび、毛並みから蒸気が立ち上る。だが、魔物自体の力は依然として衰えを見せない。


「これじゃ時間稼ぎが限界だな……!」


俺はコアの力を使い、通路の地形をさらに狭めることでフレイムファングの動きを封じようと試みた。岩壁をわずかに迫り出させ、巨体の動きを制限する。


フレイムファングはそれに気づいたのか、目を赤く光らせて唸り声を上げた。次の瞬間、その口から大きな火炎が放たれ、狭まった通路の岩を焼き崩してしまった。


「……マジかよ、どんだけ火力高いんだ……!」


ゴブリンたちはフレイムファングの足止めに全力を尽くしているものの、次第に体力が尽き、リーダーゴブリンすらも傷を負い始めていた。スライムも火の熱によって蒸発し、数が減少している。


「くそ、ここで突破されたらコアが危ない……!」


俺は地形操作でさらに罠を仕掛けた。天井の岩を崩してフレイムファングの頭上に落下させる。巨体に直撃し、少しだけ動きを鈍らせることに成功するが、それでも完全に止めるには至らない。


「あと少し……持ちこたえろ!」


ゴブリンたちは最後の力を振り絞り、残った松明や武器で必死に反撃を試みた。スライムたちもわずかに残った水分を集め、水弾を連射して牽制を続ける。


だが、フレイムファングはなおも前進を続け、ついに洞窟の奥へと足を踏み入れようとしていた。


「このままじゃ……突破される……!」


絶望的な状況の中で、俺は次の一手を模索する。

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