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ホラー小説集

波間に消えた麦わら帽子

作者: 大浜 英彰

挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」を使用させて頂きました。

 技術発展で生活が便利になると、アナログな物の良さが再認識されてくるよね。

 それは写真に関しても同様で、ここ最近はフィルム式カメラが再び脚光を浴びているの。

 確かにデジカメやスマホを使えば、高画質で綺麗な写真が簡単に撮影出来るよ。

 それにフィルム式カメラはノイズやブレが入るかも知れないし、現像しないと確認出来ないから失敗しても取り返しがつかないもんね。

 だけどそうしたアナログならではの手間暇や不確実性がむしろ愛おしくて、私達女子大生の間では使い捨て式フィルムカメラが人気なんだ。


 夏休みに畿内大学の友達と一緒に行った海水浴にも、私は使い捨てカメラを持参したんだ。

「それじゃ撮るよ、袖掛(そでかけ)さん。準備して!」

「悪いね、松間(まつま)さん。助かるよ。」

 シャッター役を頼んだ友達に軽く頭を下げながら、私はラッシュガードを脱いでビキニ水着を纏った肢体を晒したんだ。

 挿絵(By みてみん)

 何せ松間さんに勧められた牛柄ビキニは、少し照れ臭かったからね。

 色々吹っ切れるまではラッシュガードで隠してたんだ。

 だけど、この頭を下げた動作が悪かったんだろうな。

「わっ、風が!」

「あっ、袖掛さんの麦わらが!」

 急な突風に煽られた麦わら帽子はUFOみたいに空を飛び、そのまま沖合に行ってしまったんだ。

 紐をつけとけば良かったね。

「あーあ、あれはもう取りに行けないね。」

「諦めるしかないか…堺東の高鳥屋(たかとりや)で買ったばかりなのに…」

 新品の麦わら帽子を失ったのは残念だけど、そこは若い私達。

 すぐ気を取り直して海水浴を楽しんだんだ。

 だけど当時の私は、まだ知らなかったの。

 あの穏やかな海に何が潜んでいたのかを。


 それを私が知ったのは、写真の現像が仕上がった時だったの。

「一枚だけ変な写真が出来ましてね。ご覧にならない方が良いと思いますが…」

 使い捨て式フィルムカメラを使う以上、多少のブレやピンぼけは先刻承知。

 そう主張して受け取ったんだけど、それは実に奇妙な写真だったんだ。

「えっ…?」

 風に煽られて宙に浮く私の麦わら帽子を、青白い手がガッチリ掴んでる。

 オマケに青い海面からも、無数の白い手が突き出していたんだ。

 そう言えば子供の頃に「水難事故で死んだ人の最期の写真に無数の白い手が写っていた」って怪談を聞いた事があるけど、この写真の白い手も同じ類なんだろうね。

 水死者の霊か、或いは海に潜む妖怪か。

 その正体は定かではないけど。

 麦わら帽子で済んで良かったけど、海水浴に行くのが怖くなっちゃったなぁ…

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― 新着の感想 ―
今やスマホカメラが普通。すぐ確認できて、心霊写真だ~ぞぞ~っなんていうことが無くなっているように思いますよね。やはり仕上がりまで時間があるからこその怖さ…… 複数の白い手は怖いものがありました。 にし…
[一言]  鍔がおおきくて、可愛い麦わら帽子は残念でしたが。  こんないろいろおおきくて(目とかね♡)可愛いコなら、幽霊じゃなくても、連れてきたくなっちゃいますので。  帽子だけで済んでよかったと思う…
[良い点] まさに夏!というタイトルに引かれて、企画からやってまいりました^^ 近年また、昔懐かしのフィルムカメラが流行っていたりしますね。若いかたほど、昭和や平成のアイテムにハマったり、という話も耳…
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