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虚記  作者: 白鯨 現
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『一月二十八日 夕暮れ放送』

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 大家さんがアパートの通路を清掃していたので、先日から気になっていることを聞いてみることにした。

 それはつまり、何故ここら一帯は、夕方の町内放送を境に子供がいなくなるのか。ということについてだ。確かに多く子供がその放送を帰宅の目安にしているだろう。しかし、うちの周辺地域では多くの子供たちがその放送より前には家に帰っていき、放送以降の時間には決して一人では出歩かない。確かに親から暗くなる前に帰っておいでとは言われるものだろう。しかし、一人や二人少しばかり遅くなってしまう子はいるものだ。だが、ここに住んでだいぶ経つが、そういった子供を見かけたことが一度もない。何故なのか。

 そう大家さんへ聞いてみると、なんてことはないように答えてくれた。

『ああ、それは、放送の時間を過ぎると危ないからだよ。』

「危ない…とは?」

『時間をすぎるとね、いなくなっちゃうんだよ』

「いなくなる?といいますと、誘拐されて行方不明とか、そういうことですか?」

『いや、そういうんじゃなくて、本当に消えちゃうんだよ。だから駄目なんだ。』

「じゃあ、それが本当だとして、消えた子はどこへ?」

『さあ、消える消えるとは言われているけど、私は消えた子の話なんて聞いたことはないけどね。まあ夕方の放送前に子供は家に帰る。そういう決まりだからね。』

「あの、」

『そういえば、うちのアパート前のお宅、若い御夫婦なのに子供はまだなのかねぇ。高齢出産は大変だとか言うから、早く子供の一人でも産んでしまえばいいのに。』

 そう無責任なことを言って大家さんは行ってしまった。

 消えた子は、いない。いないのか。じゃあ、うちのアパート前の家にいたはずの子もいなくなってしまった。のではなく、いないのか。


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