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虚記  作者: 白鯨 現
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『一月十七日 母と』

******************************************


 電車に乗っている。

 駅に着くたび次々と乗ってくる乗客たちは、乗り込むとすぐに私のはす向かいに座っている若い女性に

「可愛い子ですねぇ」

「今何ヵ月ですか?」

と声をかける。

 女性も笑顔で

「ありがとうございます」

「今4ヶ月で…」

などと答えている。


 しかし、彼女が抱えているのはどう見ても赤茶けた錆色に染まった布の塊のようなものなのだが。


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