食われたって、あの……
「と、いうことで銅貨は廃龍ゴリアートに喰われたっぽいよ。先手を打たれたね。銅貨が自分の弱点だからディック達を操って仕向けたんだ。知能が高くて、もしかしたら運命操作も出来るのかも」
苦い顔して宿から出てきたシルフィア、馬車に戻ると3人への審問結果を教えてくれた。
「……どうするか」
「廃龍の腹にあるにせよ、巣の中の糞に混じっているにせよ、廃龍倒すしかないだろうね」
「だよなぁ。でもあれ俺達2人だと厳しいよな」
シルフィアは強いし、俺だってそれなりだ。しかし相手が悪い。不可能とは言わないが、勝機は薄い。
「辛いところだね。ストリナ聖堂の戦力で討伐ってなると相当死者が出るだろうし。この程度の案件で教会中央の騎士団を引っ張り出すのは無理だし」
廃龍クラスだと半端な戦力はあまり役に立たない。少数精鋭でいかないと勝てても死体の山ができる。
「気は進まないが、ディック達を消すか?」
「それで終わるとは思えないんだよね。マルコの怨みが晴れてもコックリさんの分体はもう消えない可能性が高い」
「困ったな」
「手はあるよ。私の固有スキル発動させれば、たぶん二人で倒せる」
そうか、確かにその手がある。シルフィアのスキル。しかし、それは使用条件が超特殊だ。
「だけど、それは条件が……」
身体能力と魔力を大幅に強化する優秀なスキルなのだが……
対象は清純を捧げた相手ただ一人というとんでもない限定が付いている。
「スキルのこと自分の母親と貴方にしか教えてない時点で分かってるでしょ。アルベルト、私貴方のこと好きだよ?」
まっすぐ俺の目を見て、シルフィアが言う。
ああ、ここまで言われてはもう駄目だ。
「その、俺も好きだよ」
一緒に魔法の訓練してた頃からベタ惚れである。俺が神聖魔法の腕を磨こうと冒険者になったのも、神聖魔法の腕で肩を並べるぐらいになってから彼女に告白したかったからだ。
その目標は叶わなかったが、仕方ない。
「ありがとう。了承ってことでいい?」
「ああ。それと……手だけ出す気はないから、結婚して欲しい」
言うと、シルフィアが満面の笑みで、抱き付いてきた。
いい匂い、そして柔らかい。
「喜んで! 実は周りが結婚しろって煩いから、次の誕生日ぐらいにはアルベルトのところに突撃して結婚を迫るつもりだったんだ。大好き!」
「教会は聖職者こそ産めよ増やせよだもんな」
かつて教会はカローナ派とプレミナ派に分かれていたが、聖職者は生涯独身のカローナ派は優秀な神聖魔法師の血が自動的に絶えていく致命的な欠陥により、勢力争いに完敗した。
その成功経験もあり、今の教会は優秀な神聖魔法の使い手には子づくり超推奨である。
「そうなんだよ。私レベルの使い手だと、育児は組織的にサポートするから最低10人は産めって雰囲気」
「それは、大変だな」
「一緒に頑張ろうね。さて、街の教会に泊まるのも微妙だし、宿取ろうか。この街で一番のお勧めどこ?」