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溺れる灰  作者: 水園ト去
退屈な祈り
90/114

5-6

「さっき、崖の上にいた奴は、モロウ・リー盗賊団かな」とエリオット。

 状況は変わっていない。瓦礫の中、アンナが上、エリオットが下。閉じ込められて身体を密着させていた。

「善良な市民とでも?」

 アンナが言った。「日々を慎ましく生きる真面目な人間が、谷の上から岩と木材を落とし、さらに爆発させた? お前はそういう可能性の話をしているのか?」

「そんなはずないよな」

「息するなって言ったろ」

「このままあと二日三日過ぎれば、俺は死ぬ。あんたは不老不死だから死なないがな。一人で寂しく瓦礫の中で暮らせ」

「減らず口が。誰が上にいるから、瓦礫の重みで死なずに済んでると思う? このアンナ・アリアス・ノラノ様が、お前の上で踏ん張っているから、瓦礫の重みがお前に圧し掛かってないんだぞ」

「あー、知りませんでした。じゃお礼の代わりに死にます」

「さっさと死ね」

「死ぬか。絶対に死なないぞ、俺は」

「今、死ぬって言ったろ?」

「不老不死が死ぬとか言うなよ。死ぬことがどんなことかも知らないくせに」

「じゃお前、死んだことあるのか?」

「ない。けど少なくとも俺はいつか死ぬ。あんたみたいな化物とは違う」

「私を化物呼ばわりするな」

――エリオッ――ト――。

「おい、何か聞こえなかったか?」とアンナ。罵る言葉を止め、耳を澄ます。

――エリオットなの――?

「聖なる伊達男の名前を呼ぶ声がする」

 エリオットが言った。「これがラナ様の声なのか」

 瓦礫の上からだった。女性の声だ。

 微かだが確かにエリオットの名前を呼んでいた。

「応えろ」とアンナ。

「ここでーす。ここにエリオットがいまーす」

 エリオットは力の限り叫んだ。「俺はここにいまーす」

――そこなの?――エリオット――。

 女の声は言った。

「なぜ、私の名前は呼ばない」とアンナ。

「日頃の行い。暴力とか略奪とか色々してるだろ。ラナ様にはお見通しなんだよ」

「私は悪魔か」

「近しいと思う」

「いいから、叫び続けろ」

「はい、隊長」

 エリオットは再び叫んだ。「ここでーす。ここに聖なる伊達男エリオット・ラウファーと暴力と冒涜の象徴、アンナ・アリアス・ノラノがいまーす。助けてくださーい」

「私を別のものにしろ」

「じゃあんたも叫んで助けを呼べよ」

 瓦礫が動いた。埃が立つ。

「なんだ?」とエリオット。

 出来た隙間から光が差し込んできた。眩しい。目を細めた。

「いいぞ、助かる」とエリオット。「ここだ、出してくれー」

「待って、あと少しだから」

 瓦礫の向こうから声の主が言った。

 馬の鳴き声がした。どうやら瓦礫を馬に引かせているらしい。

 光は次第に大きくなっていく。

「やっぱりエリオットだね」

 瓦礫が完全に取り払われた。「こんなところに埋まるなんて馬鹿なの?」

 逆光の中、顔が見え辛い。

 アンナは立ち上がり、エリオットの上からどいた。

 エリオットも瓦礫の中から立ち上がる。

「あぁ――。なんでここに」

 エリオットは呟いた。

「それよりもここに埋まってた経緯を教えてよ」とニーナが言った。「普通じゃないよ、こんなの」

「ニーナ、どうして来ちゃったんだ」

「助けてあげたのに、そりゃないでしょ」

「そうだぞ。エリオット。しっかりニーナに説明してやれ」

 アンナが言った。面倒なことはすぐこうだ。

 瓦礫の下に、馬車があった。三頭立てだ。なるほど。これなら瓦礫もどかせる。

「それにしてもいい空だな」とアンナ。

 晴天。青空だった。

「悪くないよな、こういうのも」

 エリオットは言った。


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