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溺れる灰  作者: 水園ト去
退屈な祈り
83/114

4-7

 隅には人骨が積んである。頭蓋骨もあった。黄ばんだ骨たちに、破損箇所は見られない。少なくとも打撃を受けて死んだわけではなさそうだ。

 湿気が多い洞窟内部を進む。先に行けば行くほどに、人工物が多くなる。だが人影はない。アントーニオ以外いないのだ。

「臭いぞ」

 アンナがエリオットに言った。

「さっき池に落ちた」

 まだ歩いている。

 幾つかの広間と部屋を通過した。「乾くまで待ってくれ」

 天井から雫が滴り落ちた。地面も湿っている。湿気が高い。不快感。重さのある空気がまとわりつく感じだった。

「元々、ここは地下水脈だったんです。今でも上や下には水が流れてるんですよ。たまに洪水で、膝まで水に浸かることもある」

 アントーニオが言った。沈黙が嫌なのかもしれない。

「どうでもいい。まだなのか?」とアンナ。

「もうそろそろです」

 抑揚のない声で先を歩くアントーニが答えた。

「ここにはお前とその大司教だけなのか? さっきから人間が一人もいないぞ」

「皆、部屋にいるのです。それが我々の勤めなのです」

 ニベス会は秘密結社だ。生態には謎が多い。

「こちらです」

 アントーニオが足を止めた。

 正面に扉。ツタの葉に似た意匠の飾りが吊るされている。「これはヘデラという葉です。不死や不滅を象徴する葉で、私たちの会派ではとても大切にされている植物です」

「いいから開けろ。さっさと大司教を出せ」

「すいません」

 アントーニオが扉を開いた。

 ノックなし?

 その動作に疑問を抱いたエリオットだが、すぐにその考えも吹っ飛んだ。

 人が転がっていた。

 アントーニオと同じ黄色い司祭服を着ている。

 床に仰向けで倒れていた。

 そしてその奥には、信者とは思えない連中がいる。だが、どんな奴らかはもう知っていた。

 モロウ・リー盗賊団だ。

 アンナとエリオットは即座にアントーニオの前に出た。

「エリオット」

 アンナが叫ぶ。拳を構えた。合図だ。

 エリオットは剣を抜いた。

「アントーニオ、そこにいろ」とエリオット。

 後ろを見た。

 いない?

 いや、思ったよりも後ろにいるだけだ。

 だがこちらを見て微笑んでる。

 通り過ぎてきた部屋から、盗賊団の奴らが出てきている。

「アントーニオ、お前、裏切ったな」

 エリオットは声を荒げた。

 アンナもアントーニオの笑みを確認する。舌打ちが聞こえた。

 前も後ろも敵しかいなくなった。

 盗賊の一人が、部屋から人を放り出した。黄色い司祭服につま先の開いた靴。眼球があらぬ方を見ている。死んでいた。

「皆殺しにしたのか?」とアンナ。

「伝統ある秘密結社だが戦闘経験は皆無だった」

 アントーニオが答えた。「私以外は」

 否定しなかった。

「お前ら、そのまま動くな」

 アントーニオは盗賊の群れの中へ。

 膠着状態。盗賊たちはアントーニオの指示を守って動かず、睨みを利かせる。二人は追いかけることもできずにアントーニオを見送った。

「かかってこいよ」

 アンナが言った。「もうお前らの友達は行ったぞ」

「動かない、みたいだ」とエリオット。

 どこで緊迫した状況が解かれるのか。その時を待って神経を張り巡らせる。

 相手の数。武器。目線。構え。

 どれを確認してもきりがない。

 動いたら、殺す。生き抜くにはそれしないのは理解していた。

「うぅ――」

 倒れていた大司教が呻き。間近にあった盗賊の足首を掴んだ。まだ生きてたのか。

 アンナが飛んだ。

 足首を盗賊の顔面を打ち抜く。拳を振り切った。

 盗賊たちがかかって来る。

 エリオットも剣を振り回した。

 首を飛ばす。

 だがすぐにわかった。切りがない。終わりが見えない。

「このままじゃやられる」

 剣で盗賊たちを蹴散らしながらエリオットは叫んだ。

「それはお前だけだろ」

 アンナは盗賊の口に手を突っ込んで、思い切り顎を引き抜いた。顔が引き裂かれ肉片が飛び散る。

「不老不死はいいよな。けど俺は助かりたい」とエリオット。

 アンナは死なない。不老不死だ。

 見ると既に脇腹にナイフが刺さってる。だが関係なしに相手を叩き潰していく。アンナに任せておけば、戦いは確実に終わる。だがエリオットは人間だ。体力の限界が来ていつか殺される。

「ふんばれ」とアンナ。

 飛びついてきた相手を肘うちで剥がしている。

「何かないのか」

 エリオットが言った。「全てを殺す技とか」

「ない」

「きっつー」

 首を斬り続ける。


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