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溺れる灰  作者: 水園ト去
退屈な祈り
81/114

4-5

 金を持って、ならずの王の家へ戻った。

「仕事が早いな。けっ」

 ならずの王はテーブルに積まれた金貨を袋に入れた。「お前らは優秀だ。けっ」

 まだ正午を回っていない。

「骨が折れる作業だった」とアンナ。

「実際に折ったのは俺だ」

 エリオットが言った。「指を二本折った」

 ニーナは外で待たせている。

「ニベス会の情報を寄越せ、クソじじい」

 アンナは容赦ない。

「お前、もっとましな相棒はいないのか? けっ」

 ならずの王がエリオットを見た。

「俺と話せばいい。こいつは無視」

「そうする。けっ」

「で、ニベス会はどこだ」

「ここから北に一時間ほど行った場所だ。けっ。モンティック川を上れ。森の中に魚一匹もいない小さな池と滝がある。けっ、けっ。ニベス会の聖域はその滝の裏だ。けっ」

「どうしてそれを知っている」

 エリオットが聞いた。

「けっ。物乞いに元ニベス会司祭がいた。けっ、けっ」

「ありがとうな、ニーナのことも。教えてくれた」

「昔の借りだ」とならずの王は言った。「さっさと出て行け。けっ」


   ■


 ならずの王の家を出た。ニーナが待っていた。

「ゆっくりしていくの?」とエリオットに聞く。

「仕事だからもう行く」

「私もついて行っていい?」

「だめ」

「きっと役に立つ」

 ニーナが押してくる。「退屈なの、毎日」

 アンナを見る。首を振った。エリオットも同感だ。

「弱いだろ?」とアンナ。

「一応、ペトラサの魔導大学にいた」

 ニーナが言った。

「魔導の才能があるのか?」

 アンナが聞く。魔導は誰でも使えるものじゃない。数千、数万とも言われる中の一握りの才能を持った者だけが、魔導を使える。

「才能あり」

 ニーナは魔導士っぽく人差し指を立てくるくるっと回した。

「中退だろ」とエリオット。「風を起こせる魔導の適正はあったが、よそ風程度しか起こせなかった。だから途中で辞めさせられた」

「言わないでよ」

「そよ風なら口で息を吹いたほうが早い。わざわざ魔力を使う必要もない」とエリオットは続ける。ニーナには来て欲しくない。

「両腕の長さの三倍までだから。そこまでなら風を届けられる」

 ニーナが得意げに言った。

 火や水などを扱う魔道士にも同じ問題はある。多くの魔道士たちは、才能がある選ばれた人間と言っても、火ならばマッチ一本分、水ならば雫程度しか発生させられず、戦場などでは役に立たないことがほとんどだ。ゆえに魔導大学に進んでも、ほとんどは訓練途中で辞めさせられていく、本当の意味での魔導、文明の利器を越える奇跡を起こせる魔道士は、非常に少ない。

「使えないな」とアンナ。容赦ない。

「そういうことだ。また連絡するよ」

 エリオットも言った。

 ニーナを危険な旅に付き合わせる気はさらさらない。

「馬鹿」

 ニーナが言った。

「じゃあな」とエリオット。

「馬鹿」

 二度目だ。

 ニーナを置いて去った。


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