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溺れる灰  作者: 水園ト去
退屈な祈り
74/114

3-4

 飛び込んだ口の中は、急な階段になっていた。布、絨毯なんて敷いてない。石造りの階段だ。転げ落ちる。もちろん身体を打った。痛む。

「クソったれ」

 起き上がった。

 塔が崩壊した衝撃で、地下も嵐が来たような有様だった。手前には広い部屋。奥に通路らしき黒い影。

 蝋燭が倒れて、零れた油に火が移っていた。床は燃え、天井は煙で充満している。

テーブルがあった。だがエリオットにはそれが普通のものでないのが一目でわかった。拷問台だ。人を仰向けに固定して、手前の棒を引いて縄を巻き込むと、身体が伸びていき、いつか引きちぎられる。膝砕き器や乳房裂き器、編み上げ靴と椅子、処刑人の剣と斧もあるが、全てが散乱して秩序を失っていた。

「同業者か」とエリオット。「それとも、だたの猟奇的なクソ野朗か?」

 拷問台の横に男が立っていた。

 鷲鼻で大きな口。ぎょろりと飛び出し気味の目。焦点が定まっておらず、黒目は左右別々の方向を向く斜視だった。背は高く、なで肩。腕も足も細い男だった。

「何を言ってるかさっぱりわからない」

 男は言った。「この騒動は君たちの仕業か?」

「質問を質問で返すな。そして偉そうに、わからないと言うな」

 エリオットは剣を捨て、隅に落ちていた処刑人の斧に持ち替えた。

「それは私のものだ。触るな」

「盗賊風情が所有権の主張か? 冗談にしてやばいぞ」

「いいから手を離せ」

 神経質そうな細い声で叫ぶ。剣を抜いた。瞳が充血し敵意がむき出した。

「どうみても変態だな、お前」とエリオット。「もう一度、聞く。これだけの拷問部屋だ。お前は同業者か?」

「だから何を言ってる。いいから私の斧から手を離せ」

「俺の名前はエリオット・アングストマンだ。聞き覚えは?」

「お前のことなど知るか」

 怒声に変わった。「いいから、斧を下ろせ」

「了解した。お前はやっぱり猟奇的なクソ野朗だ」

「だから何を言ってるんだよ。お前。さっさと私の斧を離せ、馬鹿」

「あとで解説する」

 燃える床。構うことなく足を踏み込んだ。飛び出し、拷問台に飛び乗る。ここに炎はない。男が剣を振ってきた。一太刀で、剣術に優れていないことはわかった。

「ただの拷問好きはそうなんだよな。総じて戦いに慣れてない」

 エリオットは後ろに飛ぶようにして斬撃を交しつつ、首切りの斧を振った。

 神経質そうな男の首が飛んだ。

「どうやら死んだみたいだけど、解説してやる。アングトマンは死刑執行人にだけ与えられる姓だ。それを知らないお前は素人確定。あと本物の死刑執行人は、常に犯罪者と対峙する。首を斬られて同然なほど凶悪な奴らだ。だから死刑執行人は総じて武術の心得がある。自分を守り職務を遂行するためだ。さらにこれは俺たちの業界の偏見だが、死刑執行の仕事以外で拷問をしてる奴は総じて腕っ節は弱い変態貧弱野朗。つまり素人確定のお前は武術の心得がなく弱いってことだ。だから俺は自信満々で一気に距離を詰めて、一撃でお前を仕留めた」

 拷問台を降りるエリオット。

「どうだった?」

 後ろからアンナの声。「これ全部、お前がやったのか」

 散らかって燃える部屋を見てアンナが言う。

「ほとんどあんたの仕業だよ」とエリオット。「俺がやったのはそれだけ」

 首なし死体を指差した。

「怖い、怖い」とアンナ。

「こいつは子供を犯してた。変態だから殺した」

「そりゃ死んだほうがいい」

「徳を重ねた。あんたのほうは?」

「鎮圧した。上の奴らも子供を犯してる変態だから殺した」

「お互い徳を積んだな」

「できることをやったまでだ。ささやかだけどな」

「新団長はいたか?」

「いや、いない」

「そうか。本部は別だな。奥へ行こう。たぶんそこだ」

 拷問部屋の先に続く通路へ。


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