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溺れる灰  作者: 水園ト去
退屈な祈り
64/114

1-7

「ピーソーを見たときのクロードの顔、やばかったな」

 エリオットは言った。

 礼拝堂の裏にあった教会の執務室にいた。常駐の司祭がいないので、部屋に生活感はない。机、椅子、棚、殺風景な風景がある。

 椅子にピーソーを座らせた。縄はないので縛り付けることは出来ない。エリオットが前に立ち、アンナが後ろを抑えた。

「私には、ありがとう、と言ってるように見えた」とアンナ。

 教会に連れてこられたピーソーを見たクロードは顔面蒼白といった具合だった。アンナが「出ろ」と言うと、黙って出て行った。

「こんな、お前ら、よそ者か。俺はこの村の次期村長だぞ。いいのか、こんなことして」

「意味わかんねぇよ」とエリオット。

「いや意味はわかる。こいつはこの村では偉いらしい」

 アンナが言うと、ピーソーは首を曲げて、後ろを見た。

「私を見るな」

 アンナが脇腹を殴る。相変わらず容赦ない。

 ピーソーが顔を歪ませて、声を漏らした。また泣き出した。すぐに鼻水も出てくる。

「汚ねぇな」

 エリオットが言った。

「トマスとコリーンを探している。知っていることを全部話せ」とアンナ。

 泣き声交じりでピーソーは「何も知らねぇ」と話した。

「わかった。一つずつ整理しよう。トマスとコリーンは知ってるな?」

 エリオットが言った。

「知ってる」とピーソー。「知ってるけど、それ以外は知らねぇ」

 聞き取るのがやっとなくらい泣いてる。

「次期村長さん。落ち着け」

 アンナが反対側の脇腹を殴った。ピーソーは椅子から転げ落ちる。床の上でうめき始めた。エリオットとアンナは見下ろす。

「エリオット、そこに座らせろ」とアンナ。

「ピーソー、まずは立て。それから座ろう」

 脇に手を入れ、無理やり立たせ、椅子に置いた。「まるで子供だな」

「私たちは長老派の非常に特殊で繊細な機関に属している」とアンナ。「私たちの報告次第では、お前は教会の庇護を失う」

「破門だけは――。俺は本当に何もしてないんだ」

 さすが。庶民に破門の脅迫はよく効く。

「知らない、から、してない、に変わったな」

 エリオットが言った。

「エリオット。君は鋭い」

 アンナが言った。「こいつを殴る権利を与えよう」

「いいのか?」

 拳を撫でた。

「やめてくれ。もう痛いのは嫌なんだよ」

「次期村長、じゃ話せ?」とアンナ。

「お前は何をした」

 エリオットが続く。

「コリーンは俺と婚約してたんだ。だけど――、司祭が、トマス司祭が横取りしたんだよ」

「死ね。お前が結婚できるはずない」

 アンナが言った「顔を見ろ、ブス」

 酷い言いようだ。

「けど俺はコリーンと結婚するって決めてたんだ」

 強い語気。

 こいつは重症だ。エリオットはアンナを見る。

 アンナも何かを察したようだ。

「結婚、許婚はどうでもいい。先に進もう。横取りされたお前は何をした」

「司祭は恋愛しちゃいけないんだ」とピーソー。「だけどあいつらは夜になると密会してた」

 トマスの部屋に会った恋文の送り主は、コリーンで間違いないだろう。

「尾けたのか?」

 アンナが聞く。

「俺は婚約者だから、コリーンを守る義務がある。次期村長として村の風紀を乱すようなことを許すわけにはいかない」

 ピーソーが早口で捲くし立てる。

「色々言ってるけど、お前は悪趣味だ」とアンナ。

「確かにお前はやばい。村長にはならないほうがいい」

「ここで消すか? 村の為だ」

 アンナがナイフを抜いた。

「あ、あと、あと――。変な男が来たんだ」

 ピーソーが必死に訴えてきた。

「変な男? お前じゃなくて?」とアンナ。

「司祭とコリーンは、いつも司祭がやってくると、村の外れにある廃屋で会ってた。あの夜も、俺は二人を尾つけて、監視――してたんだ」

「覗きかよ」

 エリオットは呆れる。「行為を見てたのか?」

「勝手にやってた。俺には止められない」

「婚約者だろ。止めに入れよ」

「エリオット、いい。こいつは他人の性行為を見て楽しむ変態だ。そういう人種なんだ」

 アンナが言った。「変な男について話せ」

「コリーンと司祭が村の廃屋で会った夜、俺も二人を見てたんだ」

「楽しい日々だな」とアンナ。

「そんなんじゃない」とピーソーは否定する。「それで、そこに、来たんだ。馬に乗った男たちが」

「何人だ?」

 エリオットが言った。

「三人か四人だよ」

「どっちだ」

 アンナが言う。

「わからない」と泣きべそのピーソー。「三人か四人だよ。すぐには数えられないんだ」

 ピーソーは半ギレだ。

「その男たちは何をした」

「揉めてた。がさがさ音がして、怒声がして、悲鳴が聞こえたんだ」

「コリーンの悲鳴か?」

「そうだよ」

「お前は助けに行かなかったのか?」とエリオット。

「俺は怖くて――」

「連れ去られたんだな?」

 アンナが言った。

「そうだよ」

「村の外れの廃屋だな? 間違いないな」

「あぁ」

「場所を教えろ、クソぶさいく」

 アンナがピーソーの肩を掴んで立たせた。


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