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溺れる灰  作者: 水園ト去
退屈な祈り
63/114

1-6

 小さい村なので、ピーソーが住むという屋敷はすぐに見つかった。

「屋敷というか、ちょっと大きな家って感じだな」

 エリオットが言った。

「郊外の村ってのはこんなもんだろ」とアンナ。

「これを屋敷って言うんだから、やるせない」

「都市の住人とは違う。ここの奴らは金も時間もない」

「そんな中でも穀潰しはいる。どうする?」

「私が乗り込むと思ったのか?」

「そうするもんだとばかり」

「馬鹿にしてるだろ? 私のこと」

「尊敬してる」

「本当はどう思ってる?」

「人殺し」

「それはお前だ。首斬り野郎」

「そういうこと言うなよ」

「お前が先にいけ。私は外にいる」

「はいはい」

 エリオットが扉に近づき、ノックした。

 中から年老いた女の声がして、それからすぐに扉が開いた。グレーの髪、くすんだ色をした肌、深いほうれい線と眉間に皺。紫色の唇の奥には欠けた前歯。

「どちら様ですか?」と女。ピーソーの母親だろうか。

「ローゼンベルク修道院から来ました」

「司祭の方ですか?」

 訝しげな視線。確かにエリオットは司祭服を着ていない。

「トマスの遣いです。個人的なお世話をしております。今日はトマスから用事でピーソーさんに会いにきました」

「ピーソーに?」

「えぇ。間違いないです」

「ちょっと呼んできます」

 扉が一旦閉まった。

 後ろを見る。アンナは消えていた。どこ行ったんだよ。外で待つのは冷える。荒野にぽつんと佇む小さな村だ。遮蔽物なんてない。風の冷たさがそのまま身体に当たる。

 扉が再び開いた。

 同じ女が出た。ピーソーではない。

「すいません。さっきまでは居たんですが」

「いないんですか?」

「はい。すいません」と女。

 家の後ろで物音がした。

「そうですか。ではまた日を改めます」

 女が消えた。

 さっきの物音が気になった。

 扉が完全に閉まってからエリオットは裏手に回る。

「エリオットか」とアンナ。

 傍らには金髪のデブがいた。

 アンナがナイフを顎の下に当てている。

 泣きそうな顔で頬が赤く染まっていた。太った身体、金髪に濃い腕毛、低い鼻、あばたに無精ひげ。

「そいつがピーソーか?」とエリオット。

「変態っぽいだろ?」

「俺は優しい人間だから明言はしないよ」

「お前が扉をノックした後、裏から逃げようとしていた」

「最高だな」

「こいつは何か知っている」

 見たことろ変態だが、悪そうな奴じゃない。今まで死刑執行人として、悪い人間は腐るほど見てきた。ピーソーはいいとこ小悪党止まり。

「どこに連れて行く?」とエリオット。「ここは見晴らしが良すぎる」

 裏手は畑だった。冬なので作物も少ない。乾いた土に積み穂が点々と広がっているだけだ。さっき顔を出した女は親だろう。神経質そうな奴だった。見つかりたくない。

「教会へ行くぞ。ピーソー、歩けるな」

「あ、あんたら、なんなんだよ」

 初めて喋った。泣きべそで鼻水を啜る。

「正義の使者だ」とアンナ。

 それを聞いてエリオットは笑った。

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