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溺れる灰  作者: 水園ト去
溺れる灰
5/114

1-5

 荒らされていた。

 テーブル、棚、引き出し、本、手紙、鍋、薪が散乱している。壷は割られてエールとワインが撒き散らされていた。

「妹の死体は?」

 アンナの問いには答えずに二階へ。

 二階も同じ状況だった。誰かが侵入し、この家を荒らした。

「死体はあったか?」

 からかうようなアンナの声が一階から聞こえていた。

 腹の立つ女だ。

 エリオットは一階に降りて、「ない」といった。

「怒ってるのか?」とアンナ。

「あんたは笑ってるな。何がおかしい」

 サウスタークの諜報員の死体、阿片、謎の鍵。続いて自分の家を荒らされた。

 借金は減らない。

 感情が爆発しそうだった。

「エリオット、お客が来たぞ」

 アンナが扉を顎で差す。

 開いた扉。暗い夜。赤いシルエットが浮かんでいた。

 赤いローブを羽織って、顔は影に四角い顎と唇しか見えない。大男だった。がっしりとした広い肩幅がそびえる。

「鍵を渡せ」

 男の声。低く潰れたような声だった。

「なんだ、それ。新しい本の題名か?」とエリオット。

「いいから鍵を渡せ」

「あんたが俺の家をめちゃくちゃにしたのか?」

 エリオットは聞いた。

「外に部下を待たせている。早くしてくれ」とローブの男はいった。

「おだやかな脅しだな」

 まるで他人事のようにアンナはいう。壁にもたれて成り行きを眺めている。「鍵を渡すなよ」

「それは俺が決める」

「絶対に渡すな」

 アンナが繰り返す。

「あんたの命令は知らない」とエリオット。

「ならば話は早い」

 赤いローブの男は手の平を握り、拳を作った。拳の上に小さな輝き。すぐに発火し、炎となった。

 魔導士なのか――。エリオットは状況を理解する。

 赤いローブの男が拳を引っ繰り返し、指を広げると炎はさらに大きなり、強く揺れた。火の操作も手慣れている。相当の使い手、ということだ。

「わかった。こいつだ」

 舌打ちして、鍵を放った。

 赤いローブの男は炎を消し、鍵を受け取った。

「出て行ってくれ。片づけがある」

 エリオットはいった。赤いローブの男は何もいわずに立ち去った。

「鍵をやったのか?」

 アンナがいった。「私の意見を無視したな」

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