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溺れる灰  作者: 水園ト去
溺れる灰
44/114

7-1

 目を覚ました。酷い匂いだ。吐瀉物と排泄物の入り混じった悪臭。酸っぱく粘り強い喉をくすぐるような感覚。

「クソ」

 匂いの元はエリオット自身だった。ローゼンベルク修道院で貰った白いシャツが吐瀉物と血、ズボンは漏らした尿で汚れていた。乾いているが匂いは健在だ。気を失った後か、その最中か、自分は吐いて漏らしていたらしい。

 椅子に縛られて身動きが取れない。顔も含めて体中が痛む。

 目の前には扉。だが遠い。そもそも動けない。机もある。上には剣、斧、ナイフ、鞭、金槌、ノコギリ、針。拷問器具が揃ってる。ため息が漏れた。

 鼻の穴で血が固まって呼吸がし辛い。両手が塞がっているので、ほじくろうにもどうにも出来なかった。

 アンナの奴――。俺を置いて逃げやがった。

「お目覚めか」

 後ろから声がした。首を曲げてなんとか視界の端に収めて確認する。部屋の隅、影の中からハンスが姿を現した。

「よりによってあんたかよ」

 エリオットがいった。

「誰ならよかった」

「女なら誰でも」

 エリオットは笑った。

「そんなにおかしいか?」

「あんたは女か?」

 ハンスは返事をせず近づいてくる。

「俺は男だ」

 殴られた。

 血で固まっていた傷口が広がる。鼻から血が落ちるのがわかった。生温かい感覚。

「わかったか?」

 顎を掴まれ、顔を上げられた。

「あぁ、そうか――。股間についてる鼠の鼻みたいなのがイチモツか。確かに男だ」

「図に乗るなよ」

 ハンスが唸る。

「くたばれ、メス豚」

 クソ。

 今度は腹を殴られた。椅子に固定されているので衝撃が流れず、全てが体に突き刺さる。また吐いてしまう。だがもう出すものがないのか、半透明の唾みたいな液体が口から出た。

「これからどうなるかわかるか?」とハンス。

 机の上にある鞭を取った。

「美女に囲まれて楽しく暮らせるんだろ?」

「だろうな」

 股間を鞭で撫でられる。

「楽しませてくれよ、マジで」とエリオット。

 股間を鞭で思い切り叩かれた。

「んーーー」

 痛みを堪えるために体全体に力を込める。

「教えてやるよ」

 ハンスがまた股間を叩く。

「何でも教えてくれ、俺は勤勉なんだ」

「お前は死ぬぞ」

「お前もいつか死ぬ」

 今度は肩を叩かれた。「あぁぁーーーーー」

「死にたくないだろ?」

 ハンスが微笑む。

「初めて気があったな」

「女はどこへいった? 鍵はどこだ」

 鞭を置き、ナイフに持ちかえる。

「アンナのことかよ」とエリオットは呆れる。「見つけられないのか?」

「どこだ。教えてくれれば死ななくて済むぞ」

「嘘だ。誰もが死ぬ」

「どこだ」

「間抜けには教えられないね」

「ふざけるな」

 ハンスがナイフをエリオットの左の二の腕に突き刺した。

「あぁぁぁぁぁぁ」

 目で刺された傷を確認する。痛みが増した。出血が止まらない。左腕が血で赤く染まる。しかも深い。骨に到達している。

「あの女は、鍵はどこなんだよ」

 目の前にハンスの四角い顔面。怒鳴られる。

「知らない。あんな奴。鍵もなんのことやらさっぱりだ」

 声を出すのも辛い。涙が出てきた。汗が止まらない。痛みと熱さ。

「仲間だろうが」

「仲間じゃない。利用されてただけだ。あぁぁぁぁぁぁぁ。クソクソクソクソ」

 左の二の腕、先ほど刺された傷にもう一度ナイフを突き刺された。

「やめてくれ。クソったれ。抜いてくれ。あぁぁぁぁぁ」

 エリオットは叫んだ。「お前、絶対に殺してやる。殺してやる。ふざけやがって」

 痛みで気が狂ったようにとにかく叫んだ。

「妹のカテリーナを知らないと思うか?」

 ハンスが呟いた。

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