表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
溺れる灰  作者: 水園ト去
溺れる灰
40/114

6-2

 二度目の来訪にセバスチャン・ブランドは不機嫌そうだった。屋敷につくと、すぐに地下へ案内された。相変わらず湿気が高い。蝋燭の火が揺れていた。この地下には昼も夜もない。

「当ててやろうか?」とセバスチャンはいう。

 机に向かって錠前を弄りながら、エリオットとアンナのことは一目も見ない。

 二人が黙っているとセバスチャンは「問題が発生した。違うか? お前らは危機に陥っている」と続ける。

 どこか嬉しそうで、振り向くとやはり微笑んでいた。

「逆転を狙っているのさ」とアンナ。

「私の知る限り、お前は指名手配だぞ」

「情報通だな」とアンナ。

「だが遅れてる」

 エリオットが続けた。「情報ってのは鮮度が大事だ。な? アンナ」

「長老派のルーベンに掛け合って指名手配を保留にした」

 アンナがいった。

「大物を巻き込んだんだな」

 セバスチャンがわざとらしく肩をすくめる。

「お前のことはいってない。安心しろ」

「今度は何の話だ」

「アルベールだ」

「エーリカの次はアルベール騎士団長様か。そしたら次はあのヴァレンシュタインか」

 セバスチャンの癇に障る声が響く。

「今夜、侵入する。手助けがいる」

「押し入って殺せばいいだろ」

 元市参事会員とは思えない発言だった。

「そうして欲しいのか?」

「私はヴァレンシュタインに関わる全てが嫌いだ」

「だが残念。殺しはできない。保留の指名手配が有効になる」

「希望は?」

「穏便に忍び込みたいんだ。窓を割ったりドアを蹴破ったりせずに、賢く静かに忍び込みたい」

「で、私にどうしろって?」

「鍵を渡せ。あるんだろ? あんたほどの男が切り札を持ってないとは思えない」

「錠前職人には掟がある。顧客の鍵を決して他人に渡してはならない」

 セバスチャンの口調が強くなった。

「仕事に誇りを持っているんだな」

「掟を破る気は?」

 エリオットが聞いた。

「馬鹿にするなよ、小僧」

 小人病のセバスチャンがいった。壁に映る影のほうが大きい。「私は鍵を渡さない」

「困ったな」とアンナ。「解決策があったと思うんだが」

「この掟に妥協はない」

「じゃ、どうして私たちを帰らせない?」

 アンナが微笑む。

「鍵は渡さない」とセバスチャンがいった。「だが、私を連れて行け。開けてやる」

 つまりこれは屁理屈だ。

 エリオットはそう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ