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溺れる灰  作者: 水園ト去
溺れる灰
37/114

5-6

 走り続けて、ローゼンベルク修道院に着いた。修道院は大きな丘の上にあった。石造り壁に囲まれている。門から回廊と畑が見えた。丁度、エリオットとアンナがたどり着いたとき、始業の鐘が鳴らされていた。

「クソ、うるさい鐘だ」

 アンナが悪態をつく。

「ありがたい鐘の音だろ」

「本気か?」

「そういう側面もあるって話をしたまでだ」

 修行僧たちが門を開く。

「いいよな、宗教ってのは。全ての者に開かれる」

 堂々とアンナがど真ん中を通り、ローゼンベルク修道院の敷地内へ。エリオットも後に続く。

 汚れ放題の二人の服装を見ても、僧たちは眉一つ動かさない。ローゼンベルク修道院は他の修道院と違う。遺跡の上に建てられた長老派の総本山で、そこにいる修行僧は精鋭だ。いずれはどこか大きな都市の司祭になるだろう人間ばかりだ。

 回廊を進む。

「あんたのいうクソ大狸は?」とエリオット。

「まぁ待て」

「突然押しかけて、長老派の指導者様に会えるもんかね」

「殺されたいのか? クソったれ」

 黙った。

「おい、そこの坊主。副司祭のロドマンを呼べ」

 中庭にある井戸から水を汲む僧にアンナが声をかけた。僧は戸惑いながらも、こちらを見ている。「アンナ・アリアス・ノラノが来たと伝えろ」


  ■


 すぐに副司祭のロドマンが回廊にやってきた。修行僧たちとは格が違うことを示す、大青で染められた司祭服。年季が入っているのは青の色が落ちて薄くなっている。

「ここには来ない約束だろう」

 開口一番はロドマンがいった。後ろめたさ、都合の悪さ、とにかくアンナの存在が明るい材料じゃないことはわかった。

「状況が変わった」とアンナ。回廊を歩き出す。伸びた影が時計の針のように動く。

「こっちは?」

 ロドマンがエリオットを見る。副司祭とは思えない態度だった。

「お前と同じだ、ロドマン。私の犬だよ」

「お互い困ったもんだな」とロドマンがエリオットを小突いた。「それで用件は?」

「お前の借金を半分にしてやるから、ルーベンに会わせろ」

 アンナがいう。「あそこにいるんだろ」と修道院の塔を指差す。

「ルーベン司祭に? 簡単にいうな」

「借金が倍になるか半分になるかだぞ」

「おい、待て。なんで倍になるんだ」

 ロドマンの足が止まる。「そんな契約はしてないぞ」

「理由か?」

「理由だよ」とロドマン。

「簡単だ。ルーベンに会えないなら、私がここで叫ぶ。長老派の幹部で副司祭のロドマン君は博打と女に溺れて高利貸しに借金をしているってな」

「待て、それはよせ」

 ロドマンの表情が変わる。

「私の準備はできてる」

 アンナが息を吸い込んだ。

「困ったな」とエリオットがロドマンの肩を叩いた。

「わかった。わかったよ。少しだけ待ってくれないか」

 ロドマンが負けた。「あと着替えを持ってくる。そんな汚い姿で司祭に会わせられない」

「早くしろよ」とアンナ。「時は金なりだぞ」

「お前なんて大嫌いだ」

 ロドマンが建物の中へ。「本当に嫌いだからな」

「安心しろ。私もお前が嫌いだ」

 アンナは意地の悪い笑みを浮かべる。

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