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溺れる灰  作者: 水園ト去
溺れる灰
32/114

5-1

 森を出てマリアノフ市内へ戻る。

「なぁ、聞いていいか」とエリオット。

「質問には気をつけろよ」

 市内の夜道を歩きながらアンナがいう。

「なんで剣が身体を貫いても生きていられる」

 娼館のことを思い出していた。

「お前は違うのか?」

「話したくないってか」

 エリオットは足を止めた。「あんなのはな、普通じゃないんだよ」

「お前だって強いことを隠してたろ?」

 アンナもエリオットの二歩前で足を止め、振り返る。

「隠してたわけじゃない。俺たちの仕事は武器の使用が前提だ。だから素手の喧嘩は弱いんだよ」

「だが剣を持てば違う。それを隠してた」

「首斬りは誰でもできるわけじゃない。儀式であり祭りだ。失敗は許されないし相手は罪人だ。だから俺たちは人間のあらゆる急所について調べ上げ、一撃で始末できるように常に訓練してた。どうだこれで満足か? 医学の進歩に貢献してるのは俺たち死刑執行人の人体実験だって知ってたか? 急所を調べ効果を測定する人体実験だよ。誰がこんなこと話したがる」

「拷問はしないんじゃなかったのか?」

「俺たちはそれを拷問と呼ばないんだよ」

「もしかしてあれか? 同情してほしいのか?」

「必要ない。それに俺もあんたには同情しない。ただ知りたいだけだ」

「だったら迷惑だ」

「核心をついてやろうか? あんたは不老不死なんだろう? 昔、文献で読んだ。そういう奴らがいると。成人の姿で生まれ、そのまま一切歳を取らずに生きることができる」

「続けろ」

「あんたはホムンクルスだ。人造人間なんだろ?」

「だったら? それを知ってどうする」とアンナ。

 否定しない。正解だ。

「驚いたな。本物がいるなんて。賢者の石を造れたのか」

「前にも会ったことあるんじゃないか?」

「いや、あんたが初めてだ」

「信用してやろう」

「なぁ、もう一つ質問いいか?」

「調子に乗るな」

「最後の一つだ」

「勝手にしろ」

「俺はあんたが唯一持つことのできないことを与えてやれるかもしれない」

「なんのことだ。金か?」

「違う。死だよ。俺なら不老不死のあんたを殺せるかもしれない」

 アンナの視線がエリオットを見据えた。しばらく何もいわなかった。「俺は本職だ」

「気軽にいうな。私が死にたい女にみえるのか?」

「あぁ」

 エリオットは短く答えた。「死にたがってる」

「本当に、できるか?」とアンナはいった後、「いや、今の言葉は忘れろ」と続けた。

 それから「急ぐぞ」といい走り出した。


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