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溺れる灰  作者: 水園ト去
溺れる灰
23/114

3-10

 それから地下牢で夜が来るのを待った。見張りの気配、足音が消えたのを確認して、アンナとエリオットは牢屋から出た。市庁舎の役人たちが仕事を終えて帰っている時間帯だ。

「おい、お前」

 エリオットとアンナは先ほどの囚人の下へいく。「しっかりしろ」

 牢を開け、中へ。隅でうなだれていた。

 着ている服は破れ、肌には痛々しい生傷。鼻血が口の周りで固まり、瞼は腫れ青くなっていた。

「あんたらか」と囚人。

「立てるか?」

 アンナがいった。「世話はしてやれないぞ」

「約束は守ったな」

 囚人が壁に体重を預けながらゆっくり立ち上がる。

「さっきは助かった」

 エリオットがいった。

「はは。俺の勝ちだ。賭けに勝ったんだよ」

 囚人が笑う。「ざまぁみろ」

「名前は?」

 エリオットがいった。

「ダーシーだ。殺しで掴まった」

「そこまで聞いてない。それで、これからどうする?」とアンナが聞く。

「飯だよ。どいてくれ」

 囚人が片足を引き摺りながら牢を出る。

「よし、次はカレンだ」

 アンナがいった。

 カレンも牢から出し、鎖を外してやる。

「行くぞ」とアンナ。

「本当にいいんですか?」

 カレンは戸惑っている。彼女からしたら夫の仇討ちに失敗し牢獄へ繋がれたと思ったら、今度は脱獄だ。天国と地獄を行き来するような一日に混乱していても無理はない。

「遠慮するな」

 アンナはいった。動き出す。

「見張りはどうする?」とエリオット。

 この先には見張りがいる。タタはもういない。協力者なしでどこまでいけるか不安だった。それにカレンとダーシーもいる。素早い移動は望めない。

「いても二人か三人だろう」

 アンナが拳を鳴らした。「他の仲間も連れて行く」

「どういうことだよ」

「ここにいるクズどもを何人か解放してやる。そいつも解放したし、あと何人か解放してもいいだろう」

 ダーシーを見た。

「他にも解放ってどういうこだよ」とエリオット。

「牢を開くってことだ。鍵はあるんだ。可能だろ」

「それはまずい。叔父さんに騒動は起こすなっていわれた。少しは覚悟してたがそれはやり過ぎだ」

「お前は子供か」

「俺たち罪人になるぞ」

「ばれなきゃ罪じゃない」

「絶対にばれるだろ」

「やれ。やらなきゃお前を殺す」

「大胆すぎる慈善事業だな」

 エリオットは吐き捨てるようにいった。

「他に案はあるのか? カレンにこの傷ついた囚人。四人で逃げる方法があるのか?」

「いつもそれだ。卑怯だぞ」

「どうやら賛同頂けたみたいだな」

「好きにしろ」

「よし、アンナ様による恩赦の時間だ」

 その後は混乱しかなかった。


   ■


 逃がした囚人たちによる混乱に乗じて、カレンとを連れ出した。市庁舎を出て、人通りが多いリブス通りへ走る。騒ぎを聞きつけ、市庁舎へ向かう衛兵たちとすれ違うたびエリオットの心臓が高鳴った。

「ここまでくれば安全だろう」

 アンナが足を止める。「うまくいったな」

 満足そうな顔だった。

「俺たちは重罪を犯した」

 エリオットはやってしまったことの重さに怯えていた。「やばい。叔父さんがマジで怒る」

「結果が全てだ。過程は気にするな」とアンナ。「おい、ダーシー。お前とはここでお別れだ」

「俺もそのつもりだった」

 ダージーがいった。背を向けて、ルスターク川に向かってゆっくりと歩き出す。

「達者でな」とダーシー。

 ダーシーが行った。

「どうするんだよ」とエリオット。

 これからのことを考えると気が滅入る。

「カレン、こいつは臆病だな」

 アンナはエリオットを指差して笑う。

 その指をへし折ってやりたいが返り討ちに遭うだけだ。堪える。

「これから私はどうすれば」とカレン。

「エリオット、どこか静かな場所を知らないか?」

 周りは居酒屋ばかりだった。「カレンと話がしたい」

「このへんだと、一ついいとこがある」

「どこだ」

「金はあるか。少しうるさい女がいる」

「そこは任せろ」

「案内する。すぐ近くだ。あと、出てきた女にはデブっていうなよ」

「お前の女はデブなのか」

「女じゃない。知り合いだよ。とにかくデブっていうなよ」

 アマンダの家へ向かう。「絶対にデブとかいうなよ」


   ■


「エリオットかい。またこんな時間にやってきて」

 扉をノックすると鼻の穴を膨らませたアマンダが出てきた。

「カテリーナは逃がしてくれたのか?」

「上にいるよ」

 そんなことだろうと思った。

「金だ。預かってほしい人がいる」

 エリオットが金貨をアマンダの手に握らせる。

「小娘が二人かい」

 エリオットの後ろにいるアンナとカレンを見て、アマンダがいった。どうやら承諾してくれたようだが、その言い方には棘がある。

「わたしが小娘? 預けるのは一人だけだ。デブ」とアンナ。

 エリオットはため息を吐いた。

「どのみち一人しか預かる気はなかったね」

 アマンダも負けてない。機嫌は損ねてしまった。「もう一枚、金貨を寄越しな」

「頼むよ」

 エリオットが金貨を渡す。「悪かったな」

「入りな」

 アマンダの家へ。

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