魔・初魔法!!
天を貫き主の権威を知らしめんとする魔王城、物凄く高くてデカいその城は、中庭も物凄く広く、十分魔術をぶっ放してもOKな程度には広い、城壁も防護魔術でそうそう壊れない様になっている。その為か、この中庭では魔術の練習をしているヤツをほとんど毎日見かけることが出来る。
「ここだったら練習してもいいだろうな。」
「はい、どれだけ暴れても大丈夫かと、それで、どのような魔術をお使いになられますか?」
「いや、そもそも発動方法がな......」
「本によると、魔法陣ってのに古代文字を書くとそれにあったのが発動するらしいぞ、魔王様!」
「ワイバーンは大体どんなのが使えるんだ?」
「いやいや、俺は魔剣士だから、魔術って言っても大体は、魔導師ギルドとか魔女ギルドの連中の領分だからなぁ、俺はあんまり......」
「そうか、まぁ、それもそうだな。」
「では、まず最初は簡単ですね。頭の中で魔法陣を念じてみてください。」
魔法陣?やっぱり複雑なのか、それとも、何か五芒星的なアレか?アレなのか?下らないことを考えながらそれっぽいのを考える。
「へー、魔王様凄いな!!何その魔法陣、俺初めて見た!!」
自分が展開したらしい魔法陣を見てみると、赤色に発光して、円の外側に文字が羅列し、魔術の発動条件である古代文字を入れるらしい中央部は何も書かれていなかった。
「はい、とてもいいですね。では、何か古代文字でも入れてください。」
「あ、じゃ、火の古代文字入れてくれよ魔王様!!」
「火の古代文字?何故だワイバーン。」
「コレ、晩飯にでもしようとと思って!!」
なんと生肉がそこに鎮座していた。全く調理されていない、調理のちの字もない生肉がそこにあった。
「お前......お腹壊さないのか?」
「いや、俺竜とのハーフだからさ~、腹は丈夫にできてる!!」
う~ん、古代文字、古代文字かぁ......生憎こっちの古代文字だなんて知らないし......でも、マモンもワイバーンもすげぇ期待した目で見てくるし......古代文字、古代文字、あ、もしかして、アレが通用したりだとか......
私はそのまま思いついた「ソレ」を、魔法陣の中に人差し指で書き込む。すると、即座に変化が起きた。
「おっ、火が出てきた!!さっすが魔王様!!」
私を褒めながら、ワイバーンが生肉を焼き始める。
「魔王様、先程の古代文字は一体......」
マモンが魔法陣を覗き込み、奇妙そうな顔をしながら私に問いかけてくる。
「気にするな。読めなくとも、使えたのだから古代文字には変わりあるまい。」
「魔王様、もっと火力強くできますか~?」
「お前なっ、魔王様は着火役じゃないんだぞ!!」
「いや、試してみたい、やってみる。」
そして、もう一度魔法陣を出し、文字を書く。
「う~ん。今さっきは生焼けしそうだったけど、コレはちょうどいいや!!」
「おいしいおいしいお肉ちゃ~ん、俺のお腹にお入りよ~。」と、ワイバーンは嬉しそうにしながらお肉を焼いていく。
「まさか、コレが通じてしまうとはな......」
私が魔法陣に書いた古代文字......否、日本とか中国とかで使われている文字、「火」と言う漢字と、「炎」と書かれた魔法陣が宙に浮いていた。何故思いついたのかと言うと、
あ、もしかしたら漢字も古いし、一応古代文字っしょ、よし、やってみよう!と思って実行したらまさかの使用OKだった。
「よし、火力を他の何かで確かめてみるか。」
「なら、今から肉を持ってきます。」
「なんでだ?」
「そこのそいつに食べさせます。たとえ焦げようともコイツが始末してくれますよ。」
「おいおい、そりゃ俺は他の連中より胃は丈夫だけどよぉ......それってなくね?」
「勿論、美味しく焼けたものも食べさせてやりますから。」
「分かった。だったら早く肉持ってこーい!!!」
「あ、じゃあ、よろしく。」
十分ほどした後、マモンが戻ってきたので実験開始。
火
批評
「うめぇ!!生焼け感がいなめねぇけど、じっくり焼きたかったらコレ使ったらいいと思う!!」
炎
「うめぇ!!ちゃんと中まで火が通ってるぜ!!俺はこれぐらいが好き!!手っ取り早く焼けていいと思う!!」
焔
「うめぇ!!肉うめぇな、あー、マモンの兄ちゃんそう怖い顔するなって。ちゃんと言うからさ、許してちょーよ。今さっきよりも焼きすぎな感じ、多分コレ、魔物だったら火傷じゃね?」
紅蓮
「若干炭になってるな、って言うより、大半が炭になってる。まぁ、食べられねぇ訳じゃねぇからいただくぜ!!コレは、魔物だったら炭になると思うぞ。」
大紅蓮
「もうこれ炭も燃え尽きて塵芥になってる。え、コレも食えって?あのなぁマモンの兄ちゃん。流石の俺でもコレは食いたくねぇよ。この火力だったら、魔物でも同じことになると思う。でも、コレ結構カッコいいな魔王様、コレとかを体の周りでグルグルさせてみたらかっけぇと思う。」
火炎竜
「肉どころか俺も焦げかけたけど、コレって完全に攻撃用じゃね?いきなり魔法陣からドデケェ炎の竜が出てきて突っ込んできた時にはメッチャビビったぜ。魔物がこれを喰らったら間違いなく火だるまになる暇さえなく燃え尽きるな。塵芥まで消滅するぐらいの火力。」
「はい、ではこんな感じでしたね。」
「後半、俺を殺しに来てた!!焼け死ぬかと思った!!」
私の魔術のせいで若干焦げているワイバーンの叫びを無視しながらマモンが俺に開設してくる。
「魔王様であれば、他の魔術も軽く使えると思われます。取り敢えず、文句言ってるあの餓鬼に水でもかけてみてはいかがでしょうか?」
「え、えぇ......」
アイコンタクトをして、ワイバーンにやっていいのかどうかの是非を問う。
「う″ー、ちょっとだけだったらいい。」
「じゃ、遠慮なく。」
「魔王様、ちょっとだけの意味分かってるのか!?」
取り敢えず、魔法陣の中に「水流」と、書き込む。すると、何の前触れもなくワイバーンの頭上からいきなり大量の水がバッシャーン!!と勢いよくワイバーンに降りかかり、見事ワイバーンは濡れネズミになってしまった。
「はい、鎮火作業完了ですね。では、他にも何か......」
「この、ドSめー!!」
叫ぶやいなや、跳び蹴りをマモンに喰らわせる。
「失礼な。私はただあなたが苦しむ姿が面白いだけで......」
「そういうのをドSって言うんだよ!!教えてやろうか!?」
ベシベシベシ!!と滅茶苦茶恨めしげな顔をしてマモンの背中を叩きまくっているワイバーン。だが、肩こりに悩まされていたマモンにはちょうどいいらしい。まぁ、元は魔王だしね。
「それで、今日の勉強はこれで終わりかー?」
「はい、貴方イジメ......違った。勉強はこれで終わりです。」
「魔王様、俺はマモンの兄ちゃんを一発殴っても許されると思うか?」
「いいと思うが、たぶん軽くいなされると思う。」
「まぁ、魔王様も魔力を使ってお疲れでしょうし、勉強はこれぐらいでよろしいかと。」
「ま、まぁ、そこまで疲れちゃいないけどさ、ま、明日から政治を頑張らなきゃな。思いっきり皆の前で啖呵を切った手前、失敗は許されない。初めてだが、やるっきゃねぇな。」
「まぁ、それを支えるために私みたいなのがいるんですから。」
「あ、俺もいるからな魔王様!!もしも他の国の連中が攻めてきたら、俺がぶっ飛ばしてやる!」
「あぁ、頼むぞ二人共。」
という訳で、この時の私は、明日から魔王城に響き渡る怒号の事なぞ知る由もなく、俺達は魔王城へと戻ったのであった。