第6話 不思議な実験その3
僕は分厚い鉛室の中の小型カメラで鉄球を撮影するようセットした。そして反物質銃用反重力プラットホーム(プラットホームとは3つの半球ドームのついたセット)を作成し、空気をこのプラットホームを経由して鉄球に噴射してみる、すると、噴射された空気の当たった鉄球部分が白く輝き、その輝いた部分から長いジェットが帯を引いて噴射した。
が、あっという間にこの反物質銃用反物質化プラットホームから空気を導く鉄製パイプが崩壊した。つまり反物質化した空気が正物質である鉄製パイプと対消滅して崩壊に至ったと言うわけだ。もうこの鉛室の中は放射能で使い物にならない。ガイガーカウンターのメーターが振り切れている。この鉛室はあとで宇宙船ができたら太陽に向けて投射して投棄しなければならない。なお、鉛室の外側のガイガーカウンターは放射能の反応なしだ。
なるほど、では、鉛室全体を中間物質化し、鉄球は正物質となるよう電磁フィールドで囲み、反物質銃用反物質プラットホーム内は反物質化すれば良い。
さらに鉛室と鉛室用中間物質化用プラットホームを設け、反物質エンジンが完成する。鉛室の鉄球から伸びる反物質と正物質鉄球の対消滅させた噴射は安定している。反物質生成量を制御することで加速力を調整できる。また、生成す反物質は、一番の緩加速が水素、中間加速が鉄プラズマ、最大加速がウランプラズマだ。反物質反応をさせたので2つめの実験用鉛室内部も放射能汚染されてしまい、もう使いものにならない。従いこれも太陽に投棄しなければならない。
さて、これと船室をドッキングしなければならない。船室は中間物質化して絶対的に運動エネルギーが掛からないようにして、フル加速しても乗員が死なないようにする。また反物質エンジンからの放射能が乗員の健康に悪影響を及ぼさないよう、反物質エンジンを厚い鉛で覆い、噴射口のみを開口させなければならない。噴射口は反物質エンジンで駆動後、そのままどこかに着陸した際には、鉛室の開口部分からの放射能で汚染されないよう、開口部はきちんと鉛の蓋で覆わなければならない。それを形にしたのが以下の図だ。
反重力と正重力を船体が受けて、惑星に対し離床、着陸する必要がある為、船体は別系統のプラットホームがまた必要だ。そして船室+反重力エンジンを搭載する鉛室は中間物質なので、船体質量の方を大きくした。
また次なる問題は、中間物質は加速しない。どんなに反物質エンジンを全開噴射してもだ。船体質量を大きくしようと一部でも中間物質があれば加速しない。
そこで一計、船室と鉛室は、わずかに中間物質よりわずかに正物質、わずかに反物質に定期的にスイープするのだ。例えばPWM制御のDUTYを50.0001%⇔49.9999%とするのだ。さすれば加速しよう。このようにすることで超高速も可能になるだろう。こうすれば超光速飛行をしてもわずかに正物質時に過去にタイムトラベルしてもわずかに反物質時に未来へのタイムトラベルによって、現世界との時間ズレも発生しない。
ということで、試作品の反重力船、反物質エンジン付きが完成した。