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ルーデンツ

どす黒い悪が、光をもたらす正義へと。

彼女はルシファーへと転生し、歯抜けのシビロは警戒する。


「得体の知れない才能スキル程怖いものはありませんからねぇ」


「安心しろ、【明けの明星】には攻撃的な能力はない」


彼女は不敵な笑みを浮かべ、こちらを振り返る。

ベンの手を握り、【明けの明星】を発動させた。

彼の体は一瞬眩しく光ると、輝きは体の中へと溶け込んでいく。


「これは...一体」


「我のスキルには、状態異常の無効化、回復、全属性耐性、

更には再生能力を与える効果がある。

その全てを同時に発動することも、重複してかけることだって可能だ」


「なるほど、便利なスキルですね...一旦態勢を立て直す必要がありそうです。

面白いものも見せて頂けましたし」


「そう簡単に逃げれると思ってるのかい?」


ルシファーは眩い光を放ち、素早くシビロの間合いに入っていく。

彼女の拳は腹部を掠める程度で、それほどのダメージにはならないが、

隙を作るには十分すぎた。


「はあああ!」


ベンの【憤怒】によって右腕の上腕骨までの部分を溶かす事に成功した。

奴に痛みと言う概念は存在せず、ただ右腕が使えなくなったことによる苛立ちと、

目の前で繰り広げられる戦闘に好奇心を抱いている様子だった。


「あーあ、面倒くさいですね~。でも面白い面白い、次は何をするんですか?

足でも潰して逃げれないようにしますか?

それともおしゃべりな口を開けないようにします?」


「狂ってるな、こいつ」


ルシファーはシビロの言葉など気にもせずに、顔面に重い一撃を繰り出し、

後方へと移動する。


「ふふ、でもね...覚えていてください。

次にお会いする時は、こんな無様な姿を晒すのは、あなたたちだと」


シビロの傍に禍々しい裂け目が現れ、その中から大きな歯茎が姿を露わにした。

彼の肉体を貪り、口内へと収めると、また先ほどと同様に裂け目へと戻っていく。


「あいつ、逃げるぞ!」


ベンとルシファーは阻止しようと試みるが、その頃には既に手遅れだった。


「とどめをさせなかったか、仕方ない」


彼女はイルイダの傍に駆け寄り、傷を治癒する。

恐ろしい程の速さで、イルイダは意識を回復させ、失態を恥じたが、

シビロの狡猾な戦い方と情報量の差ではあまりにもこちらが不利だったのは事実。


「サタ...ルシファー、お前はこれからどうするんだ?」


「勿論、我もお供するとも」


「勿論って...、あんな奴がいるんなら付いてきてくれるのは有難いけどな」


「ルシファー殿、助かった。危うくここで全滅する所だった」


「別にお礼なんていらん。同行拒否しないでくれればそれでいい」


「まさか、姉御が来てくれるなんて思いもよらなかったっすけどね!」


とても疑問に思っていたんだ。

俺が危ない時に助けに来てくれて、力を貸してくれる。

気まぐれでそんなことをしているっていう説明じゃ納得が出来ない。

だが、今は考えていても埒が明かない。


「では、向かおう。ルーデンツはすぐそこだ」


先導するイルイダに疲れは見えない。

バルツインは、先ほどの事もあり、周囲の警戒を強めている。

彼は、【豪刀】の他にもスキルを多数所持しており、

その中にある、【嗅覚感知】というスキルがとても役に立っている。

これは平たく言えば匂いで、生体反応を感知できるもので、

修練を積むことによって、周囲1kmまでの感知が可能になる。

ただし、一度嗅いだことのある匂いのものしか感知する事が出来ない。

さらに、臭いを発しない種族などにも通用しない。


「う~ん、こっから先はなんだか不思議な匂いがしますね」


「不思議というと?」


「多分ルーデンツの国民なんですけど、別の匂いが交じってる感じなんすよね」


親玉のスキルに関係ありそうだな。

ヴァンドスとか言ってたっけ、どんな奴なんだろう。

そうこうしているうちに、ルーデンツの玄関である大きな門が見えてきた。

高さにして約30m程、横20mといった所か。


「門からの侵入は避けよう、少し回り込んだ場所に侵入経路を確保している」


「やっとっすね!」


「行こう!」


ルーデンツへと侵入し、一行は王宮を目指す。

国民に気づかれないように、バルツインの先導で慎重に進んで行く。


「着いたっすね」


目の前に聳え立つ気品溢れる城は、

ルーデンツがこの地に入植した当初から建設されたもので、

その歴史は長い。

扉を開き、最上階である王座を目指し、歩みを進める。

途中でルーデンツの兵士と遭遇する可能性も考慮し、

【存在証明】で、自分たちの姿がルーデンツ兵士で"有る"と錯覚させておく。

ただ、この方法は【魔力感知】などのスキルで見破られてしまう為、

魔法使いが王宮に居ない事を願うばかりだ。

一階は無事突破し、二階の階段へと差しかかった時、


「おいそこ!」


突然の声に一同は驚きを隠せなかった。


「4人で見回りなんてしなくてもいい、一人は俺と共に侵入者の捜索にあたれ」


バルツインは首根っこを掴まれ連れていかれる。

達者でな...。


「えっなんで俺なんすか、えっ本当に言ってます?」


「うるさいぞ!さっさと来い!」


それにしてもさっき兵士が言っていた侵入者って言葉。

もう俺たちがルーデンツへ入り込んだことがばれたとみていいのだろうか。

それとも他の冒険者なのか...。


「イルイダ、「鬼」冒険者で知り合いはいるのか?」


「一人、面識はあるが、協力的な男ではなかったな」


独断専行してるっていう可能性も出てきたな。

もしばれているのであれば、追手をよこすだろうし、

今のところはそいつに囮になってもらうか。


ベン達は、二階のエントランスへと辿り着く。

兵士の数は一階よりも少なく、通路には各個室が連なる。


「ベン、見えるか」


「勿論...、殺気が充満してるもん」


壁に飾られた絵画をまじまじと見つめる異質な存在感を放つ魔法使いを見逃さなかった。

体中に包帯が巻かれており、その隙間からギロリとこちらを覗き込む眼。


「侵入者、発見」

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