与えられたもの
初投稿になります、至らない点あると思いますが、よろしくお願いします。
投稿ペースに関しては決まっておりませんので、不定期となりますが、
出来る限り早くしたいと思っております。
俺の名前は、ベン=ピューロ
ここパークルという小さな町で冒険者をしている。
そんな俺だが、未だにギルドで依頼掲示板を物色している。
現在時刻は昼の3時を回ったところで、並みの冒険者であれば、
既に依頼を終えている時間だ。
そんなことを考えていると、ギルドの扉が強く叩かれた。
視線を扉へ向けると、怪我だらけの屈強な冒険者が帰還した所のようだ。
「受付の姉ちゃん!今回は結構大変だったなぁ、がははは!」
受付のお姉さんは困惑気味に対応をし、手慣れた動きで報酬を渡す。
汗が鼻を刺激し、歪みそうになる顔を必死に堪えているのが見て取れる。
「労働者」に同情を禁じ得ないが、俺としても早く依頼を探さなくてはいけない。
「えっと、こういう時は~目を瞑って...う~ん、これだ!」
俺が手に取った依頼は、薬草採取のものだった。
採取系の依頼は階級で言う所の、一番下にあたる「蟲」なので、
一安心したところで、冒険へと旅立つ準備を始めた。
依頼の階級には、下から「蟲」、「魚」、「鳥」、「鬼」、「龍」、「天」が存在する。
冒険者にも同等に階級が存在し、その階級以下の依頼しか受けることは出来ない。
俺の階級は「蟲」、まぁ言わずもがなと言うべきだが、
冒険者としての仕事を全うしているのだから恥じるべきことではない。
家を出発し、目的の薬草「カナバ草」が生えているアルドーン森林へと向かう。
この一帯は冒険者の働きによって、地図が完成しているので、
迷う事はないのだが、森にはヘビやムカデ、
更には下級の魔物と遭遇する可能性が十分にある為、
警戒を怠ってはならない。
「にしても薄気味悪い森だな...さっさと依頼を終わらせたい」
カナバ草が生えているポイントに辿り着き、目を疑った。
一面が赤で染められ、鉛の匂いと、前衛的な光景に思わず、口を抑えた。
そこには、一人の少女が綺麗なドレスを赤く塗らし、泣いていた。
「これは...一体....」
少女はこちらに気づくと、一歩、また一歩と近づいてくる。
逃げろと、本能がそう告げた。
踵を返し、足早にその場を去ろうと走りまくった。
だが、いくら走っても彼女の鳴き声が耳に纏わりついて離れなかった。
「くそぉ!!なんなんだよ!!」
怒りを声にして放ったが、虚しさや情けなさが込み上げてきて、
気づけば自分も泣いていた。
その時、背後から木々を揺らす音が確かに聞こえた。
護身用のナイフを構え、距離を取る。
魔物の叫び声とともに、大きなムカデが目の前に現れる。
「おいおい...こいつって...」
眼前に居座るのはアルドーン森林の主である、アルドーンオオムカデ。
全長は30m程で、スキル【毒殺】を所持する魔物だ。
【毒殺】は、対象に一度でも傷を負わせることが出来たなら、毒を付与するもの。
この毒というステータスは、魔法、アイテムによる回復が出来ない。
とてもシンプルでかつ、強力なスキルだ。
一発食らったらそれで人生終了な訳だ。
俺に出来ることと言えば、それは....
「逃走!!!」
背後から巨体を擦って動く音が近づいてくる。
獲物を逃しはしないという強い意志が感じられる。
アルドーンオオムカデは危険対象として認定されていて、遭遇した場合は、
速やかに退避せよと命令されている。
「勘弁してくれよおおお!!」
「助けて、やろうか?」
可愛らしい声が聞こえた。
明らかに女の子だが、助けを求めているのは事実。
「た、助けてください!!」
大きな衝撃音がアルドーン森林を駆け巡った。
耳が使い物にならなくなったように音が遮断され、
その声の主であろう少女を見た。
赤く染まった、その綺麗な、透き通った目や唇、艶やかな髪。
彼女の唇が動いているが、残念ながら俺には届いていない。
それでも彼女は口を動かし、何かを伝えようとしている。
音のない世界で、俺は彼女に唇を奪われた。
大きなムカデの死体だったものを横目に、
俺は何が起こっているのか理解できなかった。
だが、そんな中、鮮明に聞こえた声があった。
「サタンとの契約が完了しました。契約者に所持スキルを譲渡します」
ん?うーん...ん?サタンってどなた様?
俺は超絶可愛い女の子と熱々のキスをしてたんですけども、
サタンとかいうごつそうなおっさんみたいな人は誰なんですかね。
音が戻ってきた。
彼女はその場で倒れ、息を引き取った.....かのように眠った。
「取り合えず、このままにしておくのはあれだし、自宅に連れていこう」
アルドーン森林の噂は瞬く間に広がった。
それを喜ぶ者も多かったが、一部の「傍観者」は討伐者を探している。
森の頂点が居なくなったとなっては、
その後釜を狙おうと躍起になるやもしれないと、
今まで保たれていた秩序が乱れてしまうということらしい。
まぁ、俺が討伐した訳ではないし、嘘はついてないからな。
呑気に眠りやがって....!!!
ベッドに横たわる少女を見つめ、
今回の依頼が失敗したことを悔やむのだった。