表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/24

読書暦が他人に知られるって結構怖い

 最近は結構怖くて、その人の趣味というか傾向から、セオAIとかが発達してきてるらしい。例えばヨウツベで好きなアーティストの名を入れれば、『貴方へのオススメ』などと勝手に動画再生を進めてきたり、ちょっと気になる広告を間違って触れたりすれば、延々その広告関連の情報が押せ押せで垂れ流されるみたいな……

「圭君も読んだのですね、この本……で、どんな気持ちになりましたか? 感想聞かせて下さい」

 だけどそんな事にはお構いなしに、この娘の考えてることが分からないって、すっごくドキドキさせられたっていうのか。

「圭君が悪いんですわ、他人の物を勝手に持って行くのは良くございません」

 た、確かにその通りです、でも、女の子の部屋にあったらそりゃ誰だって興味湧くじゃない、要は嵌められたって訳なんだけど、ボクだって楽しかったしね。

 つい三日前の

「圭君に似合いそうなワンピをお貸ししますから一緒に来て下さい」

 そういって心愛の部屋に誘われ、春花と一緒にのこのこついていったんだけど、本棚の中にカバーをひっくり返した本を偶然にもみつけちゃってさ、変に気になったんだけど、二人が見てない隙にって、チラッとぺらっと中身見たらさ、

「か、官能……小説……」

 そりゃ驚いたのなんのって、だってあんな可愛い顔して、エロい妄想の境地に爛れているなんて思ったら……

 それとなくスカートの中に忍ばせちゃってたの、悪いとは思ったけど、好奇心とか興味の方がまさっちゃってわけ、そのときは二人とも気付いていなかったみたいだけどね。

 その日の夜、家族が寝静まった頃、こっそり取り出してみた『蜜の花弁』って、なんでか家族にもみられたくないっていうのか、何気にそそるタイトルっていう。

 春花と心を重ねた時でも、彼女は官能小説を読まないことは明らかだったし、ボクも読んだことなんて無かったけど、内容凄いのなんのって……「ぐちょぐちょの場所」「淫核に鋭い快感」「『好きだよ』って言われるのと『慰めてあげるよ』って言われるの、どっちが濡れる?」「ちゅくちゅくと舌をからめあい指をからめあい」……顔が真っ赤になって、興奮してくる、あの娘こんなの読んでたんだって、可愛い顔して澄まして何考えてるのかわからなかったけど、この本読んでこんな事感じていたんだろうなって思うと、ヤバイ! 春花以外にボク何考えてるって! もんもんとしてくるんだもの……

 結局朝まで寝れなかったよ……

 異常な事態なんだろうけど、春花に憑依されるって、お互いに隠し事は出来ないっていうのさ、今回のことにしたって、心愛のヒミツを覗くことだってできるんだから彼女は。でもそれは嫌で、心愛のヒミツを守ってあげたいとも思うの、友達だしさ。

 だって嫌じゃない? 自分の性的嗜好が他人にばれるのって、ボクだったらそう思うんだ。

 それなのに心愛ったら、ひとの心なんか放って置いて、ボクが一人になる職員室前の先生専用トイレの個室に官能小説『蜜の花弁』をモップと糸で吊るし、こういうの、

「この小説わたくしの部屋から取ったの圭君ですわよね?」って。

「気が付いていたの!? ちょ、ちょっと待ってってば!」この娘春花に余計な事吹き込んでないかって、それにしてももう一冊もってたんだ? てかトイレまで押しかけないでよね!

 若者の人口減少から、この江戸蔵高校も生徒数が減ってきてしまい、やがて使われなくなった教室の一角は物置とされ、季節なりの熱気と埃の匂いが混ざり合いそこに監禁されるボクだった。

「圭君も読んだのですね、この本……で、どんな気持ちになりましたか? 感想聞かせて下さい」

 もちろん直ぐにとることは出来た、目隠しと軽く縛られた後ろ手……心愛のいたずらなの、教室に二人で、ボクが縛られ、彼女が語りかけるっていう、実はコレ、小説の中で興奮した一場面にそっくりだし、

「圭君、いつでも止めて構わないですわ、これは二人の信頼関係で成り立つゲームなのですから」

 心愛が今一体どんな格好しているのかはわからない、でも声には独特の威圧感を感じた、だから従うしかないみたいな変な空気になっちゃう、監禁ゲームみたいな……

「わ、わるかったよ、確かに心愛の部屋から物をとるってよくうぐぅ~!」

 口の中に指を挿入されちゃそれ以上喋れないじゃない!

「うふふ、良く回る舌ですこと、でも謝って欲しいわけじゃありませんわ」

 きゃしゃな心愛の指がボクの舌をもてあそぶ、えずかせないよう、舌先だけをいじるんだ。

 唾液を絡めとるみたいにぬちゃぬちゃ、いやらしい指使いだって、だったら心愛の指を味わってやれって気になったわ、

「ひゃ、ひゃぁあうしろってひうの?(じゃあどうしろって言うの?)」

 目を塞がれるって他の器官に意識が行くものなのか、心愛ちゃんの微かな体臭に気が付いた、指から微かなチーズの匂いがするの、でも不思議なことに嫌な匂いとは感じない、なんか変わった感情だねって、こんなの初めて。

「わたくし、カワイイのしもべでして、カワイイ男の娘圭君と感情を一緒にしたいのですわ」

 どきりとした、春花と心を文字通り重ね合わすのとはまた違った興奮みたいな、そりゃあんな官能小説読んだら夜寝れなくなっちゃうじゃない、それを心愛も味わったのだと想像すると、余計にドキドキしてくる。なんなのこのプレイ?

「な、なに言ってるの?」

 左胸に人肌の暖かさを感じ、シャンプーの甘い香りにむせ返りそう、多分彼女がボクの胸の拍動を耳に当てて聞こうとしているんだ、この感触みたいなの間違いないって、心愛の耳だ、頬の体温だ、

「な、なに! 何してるの?」

 わかっていてそれでも目隠しも縛りもほどこうと出来ない、悔しいけど心愛を信頼していたのかもしれない、楽しんでいたのかもしれない、

「圭君の鼓動……まるで早鐘のようですわ」

 そんなことはないって言いたいけれど、この状況じゃ嘘は吐けないし、って何でボクが悪いみたいな感じなわけ? ああなんか近いよ心愛ちゃんって、もしこんな所春花に見られたらどーするの!

「わたくし心愛はカワイイ男の娘圭君のことをずっとエロい目で見ていまして、だから一緒の官能小説読んで気持ちを共有したかったのですわ、だから圭君のことを嵌めようと思いまして、上手くバッチリ掛かってくれたのですわ、おかげさまで今日の楽しいトークが出来ましてよ、圭君も楽しんでいただけたようでなによりですわ」

 顔が鉄火のように赤くなるのが分かった、恥ずかしいのが心地いいみたいな……ボク何感じてんだろ……本音では小説の内容より、この本を読んで興奮している心愛ちゃんを想像して、その姿にやられちゃったのかもしれないなんて、もしホントにそうならボクは精神的に春花を裏切ったことにならないかなって思う。

 春花に悪いよ……どうでもいいけど凄いジャイアンjkっぷり、可愛い顔して油断も隙も無いったら……

 まあそんなところが心愛の魅力でもあるんだけど、ホント遠慮も手加減もないのは困っちゃう。

「こんな女の子の格好した男の娘に欲情しちゃうくらい心愛ちゃんてエロかったんだ?」

 どうせ興が乗ってきてるんだったら、ボクも責めてみたいじゃない、そしたらさ、

「……そんな恰好しているからです、いじらしいくらい女心を感じますの、そういう所がまた可愛いのですわ」ゾクッとするようなことを耳元でささやかれた。つまりこの娘って女の子が好きな娘なのかもしれないって、そうささやかれたような気がするもの……えっマジ卍!

 春花とは違い、心愛と僕は心を一体化できないから、彼女の心のうちはわからないと、そういう事にしておきたかった。ボクの卑怯な言い訳かもしれないけど、それはズルいことかもしれないけどね。

「心愛ちゃんの気持ちはわかったけれど……」

 ボクには彼女がいる、春花という娘がいるんだ、彼女の事は裏切りたくなんかない。

「春花にバレない様にしたいのですね?」

「うん、春花だって根は悪くないんだ、でもとっても嫉妬深いし」

 言っていてホントに春花って根は悪く無いんだろうかと? じゃあどこがいいのかって言われてもその質問にはちょっと時間がかかりそう。

「大丈夫ですわ、わたくしの気持ちも、圭君の感情も今日あったことも、鍵をかけて隠してしまえばいいのです」

 いやそれが出来ないのが憑依ってものなんだけどって、

「記憶の宮殿のアクセスポイントを、今回の事件のストーリーをもって設置していけばいいではないでしょうか? アクセスポイントが解なのではなく、動機付けとなるストーリーつまり鍵こそが解なのです、仮にその答えを解いた時、分かる為には小説の中身を読まなければ正確にはわからないハズですわ、その時には圭君が感じたいやらしさも春花さんも一緒に味わうこともできる、一粒で二度おいしい企みですの、ふふふ」

「さ、策士だな~~って、大胆に嘘を吐くのって、すごいね」

「男の人は嘘を吐いているつもりでも、隠す気が無いのかしらってバレバレの方いますけど、圭君ならできると思います、私との読書体験、大事になさってくださいね」

 そういってボクの目隠しを外して、ゴッコ遊びの緊縛も解いてくれる。元の心愛に戻ってる言いたいけど、ボクの中の心愛のイメージがちょっと変わった、貴重な体験でした。





(※注 記憶の宮殿とは記憶術の一つなのですが、歴史もあり本来の目的とは違った意味で、比ゆ的に使わせていただきました。

 現実には、

 ①自分の部屋にいくつかのアクセスポイントを置き、そこに覚えたいものを設置します。

 ②そのアクセスポイントに出来るならストーリー性を持たせた物語をもって順番通りに巡っていき、覚えるというモノです。

 ハンニバル博士も使っていて、結構優れた技術なのです。


なんかイマイチな感じがします、もっと上手く書きたかった!

でもつづきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ