今日子って嫌いになれないんだけど、強引な女だなあ、ってか背うらやましいし
朝起きて、目に入る光の眩しいことといったらないって。もうそこには古都竹春花の意識は無いけど、もう春花が他人とは思えないほどの強烈な体験というか、凄い快感!
身体こそ春花はまだだろうけど、ってゆーか二人ともキスすらしたこと無いのに……こんなこと知ってしまっていいんだろうか?
なんだか罪悪感を覚えた……誰にって……お父さんお母さんに対して……どうしてだかわからないけど、結婚する前にこんなことして悪い気がしてくる。絶対誰にもわからない、理解できない突拍子も無い話なのに……食卓でパンをかじりながら、新聞を読んでいる父と皿を洗っている母に対し、心の中で手を合わせた、顔を赤くしながら……
「なんかさ、お兄ちゃん、顔赤いけど?」
「べ、別に……」
そういいながら、妹から見られるのがいたたまれずに、思わず腕で顔を隠してしまう。
「あらやだ、風邪かしら? 学校行く前から大丈夫圭?」
「だ、大丈夫だよ、もう学校行かなきゃ」
そそくさと、変な感情に翻弄されながら、学校に急いだ、それでも彼女に逢いたくて。
散り始めている桜の下、高校行きのバスを待つ時間が長い、昨日のコトをなんて話せばいいっていうのか……まだ全く体の関係も持っていないうちからあんな事とかソンナコトとか色々やらかしたしなあって、朝っぱらから何妄想しちゃってんだ俺、ってかなんて顔して春花に会えばいいって……ヤバイヤバイ、学校いくの怖くなってくるっていう、でも春花に会いたいしなぁ。え? そうなんだ……親に悪いとか罪悪感あって、春花にどんな顔してあったらいいのかって思っても春花に逢いたいんだ? あんなにひどくいじめられたくせに……でもしょうがない、春花と相思相愛なことは隠せない事実なんだ。
江戸蔵高校行きのバスに乗り込んだら、特別目立つ女子高生がいて、その娘の横だけ空いていたし、知り合いでもあったしで、座ることにした。
「おはよ、きょうこ……だっけ?」
「……はよ」
周りを警戒するような、にらみつける様な彼女だ、髪の毛こそ黒いけど彫りが深くて少し鼻の長い、桃色が入った透き通るような肌の、日本人離れした女の子、はそれでも挨拶くらいはしてくれた。
「おまえって、いやおまえって名前じゃなかったな……えーーーと、け・け・け? アレなんだっけ?」
人の名前覚えるの苦手なんだろうね、でももうちょっと器用に聞いてくればいいのにって。
「東雲圭です、ケイでいいです」
「ふーん、圭ね……」
そういって上からじっと穴が開くくらい、真っ直ぐに見つめてくる今日子だった。ってかちょっと近いって。
「な、なにか?」
「オレってセルビアの血が入っていてよ、テメエみたいな男顔の女みたいな顔……いや、なんでもねえ、気にすんな、け、圭だっけ?
」
セルビアって何? 聞いたこと無い、けどたぶんどっかにある地名とか民族とかじゃないかな、まあ別に今日子は今日子だし。てか意外と自分のこと喋るっていう。
「クラスメイトとしてよろしくね、って……手大きいね今日子、ふーん……」
「それ言うかよ、結構気にしてんだしさ……」
うつむいて手を手で隠し、それから手をスカートの中に突っ込み、頬を赤らめる今日子だった。
「ちっ、ジロジロ人の手を見んじゃねえ、って勝手に人のポケットに手いれてくんなっていう、あコラ、拳だこに触んな!」って今日子そりゃ無理無理。女の子に拳だこって! ありえないでしょう! これがセルビアの血なのかなって興味あるじゃん。
「ゴツイ拳だこ! そんで身長、うらやましいなあ」
一気に顔変わるのってこういうんだ。
「うっせーよ、人のきにしてるとこばっか突いてくんなよ」
「違う違うほめてるんだよ、一緒にいて楽しいの、素で面白いの、反応とかおもしろいし、サバサバした今日子に相談したいって思ってるくらいだし」
お約束の手の大きさ比べで完敗したけど、まあ別にいいかなって、こんなことで今日子となかよくなれるならね。
「うーん、オレに相談くれたって、まともなこと答えらんねーぞ」
「うん、でも聞いて」聞いて欲しかった、さばさばした彼女なら話せそうな気がした……こんなSFじみた、突拍子もない話、どこかに吐き出したかった。
……………………………………………………
「その話マジで言ってんの?」
怪訝な顔された、そりゃそうだ、こっちの頭の中での情事騙ったところで、どう相手したらいいかって感じじゃない。頭おかしくなったって思われるのが関の山だと思っていたのに、
「じゃあ春花にも聞いてみっから」
「え~~止めてよ!」
単刀直入にそんなこという? ふつー。適当に話聞いて相槌うってくれればよかったのに、まずこっちが先に春花に聞くべきことだったのに、春花怒ったらどうしよう……
「ばーかそんな面白ぇー話ほっとけるかってゆー、マジだったら超ウケんだけど」
イチゴのような舌を出して、笑われた。
話す相手間違えたかもって、少し冷や汗が浮いてきた。
「デ、デリケートな話なんだからさ、こっちから春花に聞いてみてからにしてくれない、かな?」
何でか立場が逆転してきてる気が……
「あー? どうすっかなー、オレの気にしてることいいやがったしな、ん~~」
「ごめんなさい、本当に勘弁してください」
もう完全に立場が逆になって、どうにか許してもらい、春花と会うときに一緒に話を聞くというところで妥協してもらったの。
バスを高校の前で降りて、紫陽花の並木をクラスメイトの今日子と楽しんだ。紫陽並木の切れ目には葵がむくむくと背丈を伸ばし始めてる。
「この葵ってオレの好きな花なんだ」
「そうなんだ、ふーん、でもどうして……」
「へっへへへ、オレより背が高くなるからかなって……」
身体にコンプレックスあるからなんだろうけど、かわいいとこあるんだね、嫌いにはなれない娘だなって。
バスが学校について、教室に向かう、昨晩のことは果たして本当にあったことなのか、春花に逢って確かめるために……
強烈過ぎる春花の存在は未だに心に焼き付いて、とても夢とか幻には思えない。だってあんなにキモチイイことなんて夢のようだし、絶対に春花との相思相愛を疑いたくないのだけれど、やっぱり頭おかしくなったのかな?
とにかく体は正直で、教室に近づくに連れて、鼓動が早くなっていって、視界だって狭く感じられてくる。苦しいハズなのにどういうわけだ? どうしてこんなにトキメキを覚えるのか……へんてこりんな心の揺らぎにまっすぐ歩くのもつらくて、思わず今日子の手を握って、どうにか平衡を装う。
「お、おい、テメェ大事かよ? ふら付いてきてんじゃねーか……ててっ痛ぇよ、そんな強く握んなってゆー」
教室に入れば、彼女の斜め後ろ姿が……心愛と話してる姿にドキリっ、
「あ、噂の彼氏が来ましたわ」
そう心愛がこっちを向いて笑いかけてくる、相変わらず美形な娘だけど、そんなの目に入らない。
「春花、えーっと、昨日のって……」
言っておいて速効後悔、でもどう言えっつーの? 知るか、知ったことか! しっかりしろ圭!
「昨日は楽しかったよね、って今心愛と話し合っていたとこなんだ」
悪戯っぽく笑う春花だった。
よかった、彼女は存在して同じ体験を共有できて、こっちと同じように今日子に打ち明けたように、心愛に打ち明けていたんだ……ん・ん?
ちょっと待てよ、それってやばくないか?
「昨日は凄かったよね、男の人の快感ってあーいうのって、なんかエロイよね、えへ」
「なになに? オレの知らないトコで心愛と春花でハナシ進んでんじゃねーの、一枚噛ませろよ」
案の上鼻を突っ込んでくる今日子だな、でも今は側にいてくれないと不安だし、この手は離せない。
「お、おはよう春花」
「はよ、圭」
今日子と心愛の会話から、二人して二人の秘密を暴いたのは間違いないないし。
「えーつまりだぜ? 圭と春花って」
余計なこと言うんじゃないって春花をうらめど、こっちだって今日子に相談しちゃってるし、お互い様っていうの、
「もうやっちゃってるんだ?」
「今日子って相変わらずストレートにしかいわない娘ですわ」
「わかってるんならイチイチ言ってくんなって、付き合いもなげえんだからよ心愛」
あちゃあって、もう皆にばれたってことか……
でもそれは春花が俺に憑依して、頭の中でHしあったという事実だ、うわー思い出したらスッゲー生生しいって。
「でもいまいち春花が圭の中に憑依できるとか信じられないんだよな」
まあそうだろうね、それくらいの距離感でいいよ、これ以上深入りしちゃってもさ、
「だったら春花しか知らない、できない、圭君とは関係ないことをやってみせればわたくし達も納得しやすいですわ」
「いや、別に納得してくれなくてもいいし」
もう大体の事実関係証明されたようなもんじゃん、これ以上何しろって、
「そーいや圭って、男顔のオンナみてーなツラしてんな」
今日子が身長とかコンプレックスにしてるように、こっちにもそういうのあって、髭なんてないし、肌は白くてつるっつる、地声でアニメ声ってよく馬鹿にされてる始末、男で身長160切るってどうにかできないものなのか、はぁ~今日子がうらやましい……身長180超えって日本人離れしててスタイルだってモデルできるくらいなのに、
「じゃあわたくしのお部屋を貸しますから、春香ちゃんが圭君のことをお化粧して差し上げてみては? それだったらわたくしたちも納得いたしますし、あ、ウィッグとか色々ありましてよ」
………………なに? 何言い出してんの心愛……
「あーそれおもしろそう! っていうか心愛いいの?」
「別にいいんじゃね、こいつんち金持ちだし、心愛時々モデルの仕事とかやってて、化粧道具いっぱいあったもんな」
いやいや煽りくれんなって今日子、春花なにおもしろがってるって、わけわからん展開にそもそももっていこうって心愛ちゃん……
「春花これでもお化粧自信あるんだよ、なんか超楽しみ!」
素で楽しみだす春花に寒気を覚えた、あのときのイジメの記憶がフラッシュバックする。
「ふ、ふざけないでよね三人とも!」
「なにー圭、テメェから相談してきたから相談にのってやったんだろうが!」
「う、で、でも……」
しまった、確かにそうかもしれないけど……
「決して悪いようになんか致しませんから、わたくしたちを信頼してください」
……それって悪いことするときに言うセリフじゃないかな、
「ボクはかわいい圭君を見てみたいよ」
「……」
結局恋人春花とその一味に押し切られ、放課後心愛の家に拉致されることになっちゃった。
次は圭のメイク編に続きます、できるだけ可愛く描きたいですね。
トキメキとヒラメキで!