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悪い選択

前置きしてこきますけど、こんなめっちゃ悪いセルビア人居ないって、

誤解されては困ります、セルビアを悪く言うつもりは全然なくて、民族問題になるとおかしくなっちゃうんです。

もう本当に家族で紛争になるくらい、大真面目に間抜けなことをしてきた歴史があります。

「あなたが死ぬって言うから……」

 そこまで話したくないコトだった、死人にしか話せないこと、家族にも家族だからこそ話せないこと、秘密にしておきたい話。

「へー、オレに死んで欲しいんだ、まあかもなって、だって死人にナニ話したって気にすること無いもん」

 死んで欲しいムカツク奴だったら、逆に何でも話せるところがあるとか今日子は思う。

「日本帰ったら、オレから圭に話してやろーか」

「あんたって最低」

 ふーん、そう? 圭には死んで欲しくはないってか、そう思ってるんだって今日子。

「言うとおもった、だったらこーいうのどうだ? 春花が圭に憑りついて一緒に不幸を分かち合うの、近親相姦の恐怖とか、その時の感情を共有するんだよ、きっと圭は苦しむし、ソレを春花も望んでるんだろ? 男が憎くて圭を女装してきたんだからさ、女の子の苦しみをもっとわからせてやればいいじゃん! きっと圭の奴だって案外それを望むかも知んねーし、春花だってそれを望んでるんだろ? 人が不幸になるのを望んで、支配したいとかって思ってるって、でもなかったらさっさとそんな家族と別れろ、つーか皆殺しにでもするか? オレのかーちゃんのバルカンみたいに? どっちにすんだ? テメーはよ? ああ別に全然ありだと思うし、人が不幸になるの喜ぶって、フツーじゃん、だってオレの話聞いてそんな身の上話し始めたの春花の方からだろ? くっくっく、バルカニゼーションだよ、不幸を拡散することで逆に関係性を強めて維持していくのに役立つんだ」

 鈴木Тесла今日子はやっぱり、セルビアの愛と怨念を血で知っているのだ、泥沼の民族紛争を生き抜く知恵を、血に沁みついているのだ。

 もともとはイジメから始まったことだった、加害者春花、被害者圭の関係性ならとことんどこまでもそれが二人の間柄なのかもしれないと本気で今日子は考えている。

「圭ならきっと春花の気持ちに寄り添ってくれるんじゃねーの、信頼してみろよ、甘えるのってアリじゃん、オレなんかに話しても多分何もよくならねーし、それとも児童相談所にでも駆け込むか? それは最後の手段に取って置けって、家族バラバラにすることになるだろ? それでもいいのならな」

 春花も思い出し始めていた、どうして意識が圭に憑依したのかを、何をされたのかよく思い出せないけど、人に話してはいけないんだというような強烈な罪の感じ、そこから逃げたかった。

 現実を忘れたかった。

 家庭に幸福なんてあるのかと。

 圭をイジメていれば、幸せを感じられた。

 そう教わったような気がしてた。

 圭に憑依している間は別人になれた、だからこんな能力を獲得したんだって。

 だけど反面、こんな気持ちを絶対に圭には知られたくなかった、その意識すら封じ込めて、心を殺して生きてきた、魂すら殺して。

 でもその暗い、陰鬱で、やるせない咎を圭に洗いざらい共有させてみよう、徹底的に圭をイジメてみたいと。

 心を共有するっていう苦しみ、つまりそういう虐めを、圭は許してくれると思いたい、春花だけには許してくれると信じたかった。

 そのとき、彼はなんて感じるの、全てを共有できる力、この憑依能力にはそれができる。

 春花だけの特権、最低のやり方だ、悪い娘だって開き直った、最悪としか言いようのないと。

 久しぶりにゾクゾクしてくる、嬉しくなってきそう、性的興奮すら覚えた。

 苦しみを共有すればその苦しみは半分になるのだろうか? そして幸せは二倍に?

 その逆かもしれない。

 そうしたら圭を殺して、圭として生きていこうか、身体を捨てる事なんて別に怖くもないし、ああ本当に素敵かも知れない、大好きな圭君となって生きていくのも悪くないって。


 お盆が終われば日の暮れるのも早く、夕闇に浮かぶ工場群が綺麗だ。

「すこしその辺流していくか……」

 放り投げられたヘルメットを受け取り、今日子の背中にくっつくと、改めて凄い体しているなと思う、バキバキに割れたシックスパックは腕に感じるし、頬に感じる広背筋のその大きさに、蟹を思わせる様な筋肉だ、日本人離れしたスタイルの良さ、もっと女の子らしくしていればすごく人気のある子なのにもったいないって思う。

 闇に光る工場群のパイプラインに目を奪われ、湿気の中を風を切るようにバイクを走らせた、もう怖くもなんともない。

「さて、明日は空港にいかねーとな、そろそろ帰るとするか」

「今日子、礼は言わないから……」

 はるかにとって最悪の方法……それを選ぶ決心はついていた。

テスラ今日子はとんでもない悪友ですが、別に春花を支配したいとか、オレが付いて無きゃいけないとか思っているわけではなくて、ただ単に面白がっている所の悪友です。

利害関係から行動する癖、それに見合わない変なコトをする奴で、好きなキャラなんです。

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