第六感ノ導
例の2人が虐待を受けてから約7年が経過した。2人は中学生に成長しようとしていた。2人は頭脳明晰で容姿端麗、運動神経抜群と青春マンガの勝ち組のような姿へと変貌を遂げた。
そして、雪解けが葉を蒼く演出する春の上旬。2人は同じ中学校に2人の姿はあった。
少年の髪は夜陰に紛れる程黒く、目は殺人鬼のように尖った目つきだった。その目はこの世の残酷な摂理を理解したような目だった。
少女の髪は少年とは真逆の白。白雪のように白かった。ただ、目つきは少年より多少穏やかそうな目つきだった。この世の残忍な定理を見透かすような目だった。
「只今より、平成〇〇年、第〇〇〇回、入学式を始めます。終礼!」
煙たく面白味すら感じない挨拶から、2人は中学校生活が幕を開けた……
時は入学式が終わって学級活動の時間。2人は同じクラスになった。が。
「ねぇねぇ、君の名前は?」
「悪いが、関わらないでくれ……」
「好きな物何かな?」
「お願い……構わないで……」
2人は何も、誰とも話そうとしなかった。
普通ならここから友人の和の第1歩なのだろうが、2人はそれが怖かった。2人は人間不信になっていた。理由は単純且つ悲惨。虐待の後遺症だ。また人に叩かれる。そんな恐怖が2人を衝立の向こう側へと弾き飛ばす。
「せめて名前は教えてよ。」
2人に同じ質問が降り掛かった。2人は自分の名前は好きじゃなかった。親にはずっと【お前】呼ばわりで自分の名前の価値観が無いとしか思えなかったからだ。
「鎌凪 風夜。」
「鎌淵 麗華。」
それでも、自分の名前に1mmでも価値があると信じて、名前を発した。同時に名乗った為、風夜と麗華は目を見つめて暫し無言の時を刻んでいた。ただ、2人の直感は言っている。
【この人も、類似した境遇を辿ってきたんだ……】と。




