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 「ささ、お一つどうぞ。」

 「はあ……。では、一杯だけ。」


 松は、杯に注がれた酒を静かに飲み干した。

 

 「なんだ、いける口ではございませんか。ささ、もう一杯。」

 「いえ、これ以上は頂きません。」


 更に注ごうとする酒を断る。


 「なんだ? もう飲まんのか? 今日の宴はお前が主役みたいな物だぞ?」

  

 付き合いの悪い松を見咎め、水野忠徳が口を出した。

 けれども、一杯以上は決して飲まないと決めている松である。

 

 「そう言うなら水野様、貴方様が全部飲んで下さいませ。」

 「心得た! では、俺が飲んでしんぜよう! ほれ!」

 

 忠徳が松の杯を奪い、差し出した。

 四井徳之進とくのしんは差し出された杯を見つめ、苦笑いをしつつ応える。


 「これはこれは。水野様のご活躍もしっかりとお伺いしております。そんな水野様におぎできて、大変光栄にございます。」

 

 差し出された杯に並々と注ぐ。

 間髪入れず、忠徳はそれを一気にあおった。


 「惚れ惚れする様な飲みっぷりでございますな。ささ、もう一杯。」

 「うむ。」

 「水野殿だけとは、これは羨ましい。」

 「大久保様も大変なご尽力をなされたそうですね。お一つどうぞ。」

 「かたじけない。」


 忠寛は松にチラッと目配せし、酒で満たされた杯をあおった。

 松は忠寛らに感謝し、この宴を思う。


 江戸城での御用商人への商談は、概ね上手くいった。

 採算が取れるか分からないという松の言葉に、商人としては不安な部分もあった様だが、あの場で断る事などそう出来るモノではない。

 何といっても、老中筆頭になったばかりの利位のお願いである。

 恩を売っておく必要があったのだ。


 それに、商人達には別の思惑もあった。

 前任である水野忠邦は奢侈を禁じたのだが、それは商人の儲けが薄くなる事を意味した。

 利位に忠邦の方針を変更してもらえれば万々歳だったのだ。

 ところが蓋を開けてみれば、新たな商品開発における先駆者の保護を打ち出したり、江戸城での商売を許可したりと、予想も出来ない提案を受け、半ば高揚感のうちに金を出す事となった。


 そして、松が火災の現場を取り仕切った事を知った四井徳之進から、松らの働きへの慰労の宴を開きたいとの申し入れを受け、本日の開催となったのだった。

 何でも、親族の中に助けられた娘がおり、その者が改めてお礼を言いたかったらしい。

 雪もまた、お礼を言いたい娘達を伴い、参加している。

 

 「お慕いしております吉三様……」

 「お、俺で良いのか?」

 「はい!」


 助けられた時に惚れたらしい。

 開始早々大きなどよめきが上がり、二人の若人の縁組が決まった。

 そんな風にして始まった宴である。

 

 松は、水野らに酒を注ぐ徳之進をそっと見やった。

 端整な顔立ちに柔和な笑顔を浮かべ、盛んに酒を振舞っているその男。

 切れ者だが油断ならないと雪が評価するその者は、豪商として名高い四井家の若き5代目で、本業である日本橋のお店(今で言う百貨店)とは別に、様々な事業に手を出して成功させている、江戸の町でも一二を争う有名人であった。

 若い娘などは、徳之進目当てでお店に通う者までいるらしい。 

 時折、探る様に自分の方へ視線を走らせる様子に、何やら思惑があるらしい事を感じ取る。

 因みにこの徳之進が、蒸気船と遊覧権を買った者だ。


 「切れ者、イケメン、金持ちという時点で、許されざる者ですね……」

 

 松は一人そっと呟いた。




 「松よ、大奥から身を引いたというのは本当なのか?」


 上機嫌となった忠徳が尋ねてきた。

 大奥での仕事を片付け、無事に卒業した松である。

 任子は大変寂しがったが、今後の大奥は任子にかかっているとの松の激励に、これまで感じたことの無い闘志を燃やしている様だった。

 大奥にかかる費用の多くは、衣装代や遊興費といったモノである。

 任子が率先して節約せずして、成し遂げられる事ではない。 


 その際、思ってもいなかった展開が待っていた。

 スズが大奥に残ると言い出したのだ。

 驚く松に対し、もっと礼儀作法を学びたいと訴えた。

 彼女なりに考え、松こと吉田松陰の妾に相応しい立ち振る舞いを習得したいと言うのだった。

 そんな彼女に任子も感激し、どこに出しても恥ずかしくない様、しっかりと教育していく事を松に宣言した。


 気づかないうちに、皆成長しているんだなぁ。

 そんな思いが湧き上がる。

 嬉しく感じる反面、若干の寂しさもあった。

 親っていうのはこんな思いなんだろうか?

 前世では体験した事がない、子の成長を喜ぶ親の気持ちを推し量る。

 次に会う時には、どんな再会となるのだろう?

 そんな事を思い、大奥を後にしたのだが、その美しい思い出を今、忠徳に汚された気がしないでもない。 


 「でなければ、私もお雪さんもここにいないと思いますが?」


 少々毒を込めて忠徳に返す。

 しかし、気づくはずも無い。


 「それもそうだな、あっはっは!」

 「……楽しまれている様で、大変結構です……」


 酔っ払いには何を言っても無駄であろう。

 既に出来上がっている忠徳は、ひとしきり喋ってから離れていき、そこでも杯を交わしていく。

 宴会もたけなわを過ぎている。


 「ご相伴しても宜しいですか?」


 一人の男が声を掛けてきた。

 やっぱりかと納得し、答える。


 「そろそろだと思ってましたよ、どうぞ。」

 「では、失礼致します。」


 予期していた通り、徳之進が目の前に座った。

 手には徳利が握られている。


 「お酒はお嫌いな様なので、水をお持ちいたしました。」

 「ご配慮痛み入ります。宗教上の理由で飲まないのです。」

 「は? 宗教上?」

 「いえ、お気になさらず。」

 「はぁ……」


 宗教上の理由というのは方便で、酔うとカレーに対する慕情が止まらぬ為、飲まないだけだ。

 遠くで忠寛と雪が心配そうな視線を送ってきたが、大丈夫だと目で合図した。


 「私に用があったのでしょう?」

 「あはは、隠せていませんでしたか。私もまだまだですね。」

 「腹の探りあいは面倒なので、本題をどうぞ。その若さで四井家を切り盛りする切れ者相手に、隠し立ては無駄でしょうから。因みに、金持ち、切れ者、顔が良いという男を、私は信用していませんので悪しからず。」

 

 松の言葉に徳之進は思わず笑った。

 余りといえば余りな言い草であろう。 

 ひとしきり笑ってから居ずまいを正し、松に正面から向き合う。


 「いや、失礼しました。お噂はかねてよりお聞きしておりましたが、流石は御公儀の方針に逆らったお方ですね。非常に面白い。」

 「は?」


 松は徳之進の言葉に耳を疑った。

 女中としての自身の振る舞いに、幕府の方針に反する物はなかった筈だ。

 いや、家定の名前を勝手に使ったり、現将軍と共に半分洗脳したりと、やりたい放題だったかもしれない。

 しかしそれとても、将来開国するというのは過激にしても、あくまで将来的には、という程度のモノだった。

 それにも係わらず、幕府の方針に逆らったと徳之進は言った。

 過去形である。

 思い当たるとしたら、それは一つしかない。

 しかし、その事を知る者は僅かしかおらず、誰かに口を漏らす筈も無い。

 若干、口の軽い海舟には不安があるが……。


 「どういう事でございましょう?」


 動揺を表に出さず、松は尋ねた。

 それに対し、徳之進は微笑を浮かべたまま語る。 


 「いえいえ、大した事ではございません。我々商人は各地からもたらされる情報が命です。私の場合、大坂や京はもとより、様々な所、たとえば赤坂のお屋敷や大奥などからも情報を得ている、それだけの事にございますよ。」


 松は沈黙した。

 それはつまり、全て分かっていると言う事だろう。

 それでも尚、明言を避け、遠まわしに言う理由は、何か目的があるからに違いない。

 腹の探りあいは御免だと言いつつ、やはりそうなってしまう。 

 当たり障りの無い様に、言葉をつないだ。


 「それぞれの土地での物の値段を知るだけで、儲けに繋がりますからね。」

 「まさしく!」

 「その物を必要としているから価格が上がる。必要としている人も下へ、必要な物を届ける。大切な事でございますね。」

 「いやぁ、素晴らしい!」


 ヨイショのつもりの松の相槌に、徳之進は相好を崩して応えた。

 当時の武家社会には、物を右から左に流して金儲けをする商人に対し、反感を持つ者も多かった。

 たとえば瀬戸内の塩を蝦夷へと持って行き、巨利を得る行為に対してである。

 

 しかしそれは、蝦夷では塩を作るのが難しいからであり、塩漬けを作るのに大量に必要とするという需要のせいだ。

 対して瀬戸内では、塩を作るのに適しているが故に、塩の大量消費地がなければ商売が成り立たない。

 各地で需要と供給のギャップが発生する為、物をやり取りするだけに見える商人の仕事も成り立つのだが、それなくして豊かな社会は成り立たない。

 需要に対し供給が追いつかないという場合、もしもそれが米であれば、それは即ち飢饉の発生と同義である。 

 

 商人の存在意義を指摘した松に、徳之進は喜んだ様だ。

 

 「いやぁ、貴方様は私の見込んだ通りのお方でした。」


 よこしまな思いを感じず、松は戸惑った。

 寧ろ、素直な賞賛をしている気がする。

 秘密を守る代わりに何かを要求されると思ったので、意外であった。

 松は考えを巡らせる。


 ありがちなパターンだと、黙っているから金銭を寄越せ、だ。

 でも、相手は豪商であり、金には困っていないだろう。

 体を要求するのもありがちだ。

 でも、私の正体を知っているのなら、それも違うだろう。 

 ん? もし、正体を知っていても、だったら? 男だからこそ? まさか!?


 「衆道?!」

 「何を勘違いされているのですか?!」

 

 徳之進が呆気に取られて言った。

 一杯とはいえ飲み慣れない酒に、未だ頭が鈍っているのかもしれない。 


 「じょ、冗談でございますよ。で、結局貴方の目的はなんでございますか?」

 「……何やら釈然としませんが、話を進めさせて頂きましょう。」


 納得のいかない様子だったが、拘っても仕方ない。


 「まあ、私の目的でございますが、単なるお金儲けでございますよ。」

 「というと?」

 「その前に、吉田松陰というお侍様のお話を、私なりに解釈した内容でお話しても宜しいですか?」

 「ええ、どうぞ。」


 当の本人を目の前に、松の正体を分かっている筈の徳之進は続けた。


 「偶然か故意かは存じ上げませんが、清国へと渡られ、西洋の力を見てこられ、帰国された。西洋の力はすさまじく、清国の姿に日の本の未来を重ねられた。違いますか?」

 「そうらしいですね。」


 松は曖昧に答えておく。


 「この国に帰られてから様々なお話をされ、様々な品を披露されております。それらにも興味は湧きますが、問題はその目的でございましょう。清国の二の舞を防ぐ、それは分かります。それをどうやって成し遂げるのか? 方法は一つではないでしょう。」

 「では、どんな方法があると思われますか?」


 松が尋ねる。


 「お武家様なら、武力を備えるとお答えになるでしょうね。」

 「ですね。では、武家でなければ?」


 徳之進は微笑を浮かべ、言う。


 「私は商人でございます。儲けられる相手であれば、あえて攻めようとは思わないでしょう。」

 「それもまた事実ですね。」

 「従いまして、西洋と関係を密にし、良い商売相手となる事を目指します。」

 「上客と争うなど、愚の骨頂でしょうね。」

 「そうでございますね。昔から、金持ち喧嘩せずと申しますし。」


 商人らしい答えであろうか。

 なる程、互いに良い商売相手であれば、わざわざ武力を用いて攻め込む必要はなさそうである。

 イギリスとても、清国を攻めたのは自由な貿易を求めての事だ。

 それが禁制品のアヘンであるのは信じがたいが、当時アヘンの売買は完全に合法なのである。

 そうであるなら、日本が西洋の求める自由な貿易を認める限り、西洋諸国が日本を攻める事はないかもしれない。

 しかし、


 「彼らの売りたい物が、たとえばお米だったりしたら?」

 「え? お米でございますか?」


 松は問いかけた。

 徳之進は冗談かと思ったが、松の表情に本気だと察する。

 しかし、どれだけ吟味しても、答えは変わりそうに無い。


 「お米は我が国でも作っております。相当安くなければ、売れないのでは?」


 安ければ買う。

 商人としては当然であろう。

 それに対し、松は言う。


 「ええ、安いのですよ。とんでもなく安いし、量も膨大なのです。お百姓さんが田んぼを耕す必要がなくなるくらいに。」

 「……」


 徳之進は黙った。

 仮に、日本の百姓が作るよりも安い米が入って来たらと考えた。

 商人としては儲けの機会であろう。

 けれども、


 「田んぼを耕す必要が無くなったら、百姓はどうやって生活していくのか、でございますか……。今でさえ、江戸の町には無宿人が集まっております。その数は膨大となり、江戸の町は無法の地と化す……」


 長男が田畑を相続し、次男三男は肩身の狭い思いをしていた当時、田舎から江戸へと流入する者が後を絶たなかった。

 そんな状態であるのに、もしも百姓の仕事が必要なくなればどうなるか?

 考えたくも無い事態となるであろう。


 「彼らの売りたい産品によっては、こちらとして認められない場合も生ずるという事でございますか……」


 徳之進が眉間に皺を寄せ口にした。

 松が言う。 


 「御公儀としては、西洋の商人の好きに任せる訳にもいかぬのです。」

 「それは分かりました。」

 「しかしそうなると、利益が相克します。」

 「自由に売りたい西洋の商人と、それは認められない我が国ですね。」

 「そうです。」

 「しかし、だからと言って無法は通らないでしょう? 貿易を続けたいのならば、相手の事情にも配慮すべきです。」


 当時でも社会的な責任という考えはあった。

 あくどい事を仕出かして消費者の不評を買えば、商売は続かなかった。

 競合する相手が多ければ、人気を失くす事は即ち没落する事を意味する。

 もしも西洋の商人が、日本で物を売りたいばかりに無法な行いを為せば、反感を買って自滅するだけであろう。 


 「その無法を力で押し通すのが、西洋の流儀なのです。」

 「まさか!」


 徳之進が驚いた様に叫んだ。

 しかし、自国に不利益となったら、力を用いてでも相手に認めさせるのが当時の列強のやり方である。


 「貴方は意外と良識的な方ですね。」


 からかう様に松が言った。

 雪の、油断ならないという言葉に、必要以上に構えていたのかもしれない。

 徳之進は若干頬を紅くし、誤魔化す様に言う。


 「私は商人でございますよ? 油断させる手かもしれない。」

 「海千山千の商売人の中で、切れ者で通るお方ですからね。それくらいで丁度良いのではないですか?」

 「これは参りましたな。」


 互いを見やり、朗らかに笑った。

 そしてすっかり打ち解けた両者は、当初の腹の探り合いをすっかり忘れ、それぞれの考えを話し合う。

 まずは松が、目下の目標である日本流通計画を披露した。

 馬関(現在の下関)を中継及び集積地とし、北は蝦夷から始まり日本海の各地を繋ぐ。

 南に目を向け、薩摩や琉球、台湾そして広東まで伸びる交易網を構築し、大坂や江戸に物資を供給する一大計画だ。

 

 徳之進は大いに頷き、その計画における蒸気船の意義を強調する。

 吉田松陰が赤坂の下屋敷で斉昭らに語ったこの計画を、独自のルートで既に聞き及んでいたのだ。

 それもあり、蒸気船が最も今後の可能性に満ちていると、今回の事に金を出した事情を明かした。

 それには松も驚いた。

 その情報網の広さと正確さ、徳之進の理解力にである。

 

 下屋敷での諸大名との会話が外に漏れ出ているなど、普通は考えられない。

 勿論徳之進の胸の中に留めているだけであろうが、知っていると何気なく語った徳之進に、松は商人の凄みを感じた。

 そして彼の言う、儲けの為という言葉に納得した。


 江戸を離れようと思っていた時に、この様な人物と知り合ったのも運命であろうか。

 松は、佐賀集成館において行おうと思っていたとある事業を、江戸に住む徳之進に任せる事に決めた。

 そう考えると、あれもこれも片が付きそうな事に気づく。

 悪戯めいた笑いを浮かべ、言った。


 「旨い儲け話があるのですが……」

 「と言うと?」


 打てば響く様に徳之進が応える。

 これまでの話を考えると、今更疑う理由も無い。

 

 「でもなぁ、この儲け話には、とある遊女の協力が必要なんだよなぁ。でも、遊女だから、身請けしないと自由になれないんだよなぁ。」


 チラッと徳之進を見る。

 そんな松の様子に溜息をつき、言った。


 「乗りかかった船でございます。どなたを身請けすれば宜しいのですか?」


 この松であるから、遊女を己の好きにしたいといった、下衆な思いではないだろう。

 儲けと遊女がどう繋がるのか予想がつかないが、それが逆に面白くも感じた。

 やはり、山師の一人ではあるのだろう。


 徳之進の返事に、松は満面の笑みで口にする。


 「金角楼の花魁、吉乃さんでございます!」

 「え? あの?!」


 徳之進も知っていた、金角楼の花魁吉乃。

 今更それはお金がかかり過ぎるとも言えず、徳之進の額に冷や汗が流れた。

四井徳之進は架空の人物です。


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