江戸の妖怪、鳥居耀蔵
南町奉行である鳥居耀蔵は、部下からの報告に耳を疑った。
何でも、3年前に海で遭難し、あのアヘン戦争を見聞きして、無事に帰って来た長州藩士がいるらしい。
役人に捕まり江戸へと送致され、その途中、異国で見聞きした事を面白おかしく民衆に話して聞かせている、とある。
耀蔵は怒りを感じた。
海禁政策は幕府の祖法である。
遭難自体は責められるべき過失ではないが、その間の出来事を、他人にみだりに聞かせるのは許されない。
興味本位で、異国への渡航を考える者が出てきては困るからだ。
耀蔵は5年前、蘭学者の渡辺崋山や高野長英らを捕縛し、拷問を加えて口を割らせている。
崋山が町人を唆し、当時無人島である小笠原へ、船で渡航しようと企てている事を突き止めたからであるが、今回の事もそれと同じだと考えた。
異国での体験を面白おかしく語って聞かせれば、浅はかな者は異国に興味を持ち、真似をしでかす不埒者が出てくるだろう。
それは海禁政策をとる幕府の権威を蔑ろにする行為であり、到底許される事ではない。
要所要所は厳しく統治しなければ、民衆など容易くタガが緩むモノである。
耀蔵はそれを心配した。
しかし耀蔵は、頑なな排外主義者ではない。
蘭学の実用性もある程度は認めている。
だが、異国の者そのモノには嫌悪感と忌避感を抱いていた。
アヘン戦争の経緯と結果を知り、異国の者のやり口に愕然としたのだ。
この国には異国の者を入れてはならぬ、そう感じた。
そしてそれは、異国に感化された者も同様である。
感化が感化を呼び、多いなる悪影響を社会に与えるのだ。
砲術家である高島秋帆を捕らえ、牢に放り込んだのも同じ理由である。
まずもって、西洋にかぶれた秋帆に憎しみを抱いた。
幕府のお偉方に西洋流の砲術を披露してみせ、得意になっている様子に憤りを感じた。
その際、異様な陣笠をかぶり、伝統を蔑ろにしていると思った。
しかも、昔から親交のある伊豆の代官江川英龍が秋帆に影響され、西洋砲術にのめり込む様になってしまった。
危機感を持った耀蔵は、秋帆を逮捕する理由はないかと彼の身辺を丹念に洗う事となる。
すると、秋帆が長崎会所の頭取であった時代、杜撰な経営を長年に渡って続けていた事を探り当てたのだ。
彼は大いに喜び、上司である時の老中水野忠邦に報告し、秋帆の逮捕を打診した。
秋帆は幕府に招かれ、その砲術を披露までした人物である。
軽々しくは捕縛も出来ないので、忠邦に是非を尋ねたのだ。
忠邦も、長崎会所の乱脈経営が精銅の生産を阻害する事を恐れ、秋帆の逮捕を承諾した。
その様な経歴を持つ耀蔵である。
遭難であれ異国に渡り、その経験を民に話して聞かせる様な輩は野放しには出来ないと考えた。
「よし! すぐに捕縛に向かうぞ!」
「はい!」
部下と共に、南町奉行所を出立した。
「こいつぁ、まずいぜぇ……」
海舟が誰にともなく呟き、道を急いでいる。
南町奉行に、あの鳥居耀蔵が就任していた事を知り、肝を潰していた。
蝮とも、甲斐守である耀蔵をもじり、妖怪(耀と甲斐)ともあだ名される鳥居耀蔵の名は、江戸の町に鳴り響いていた。
蛮社の獄を主導し、おとり捜査を常用、権謀術数に長け、厳しい取締りをなした耀蔵には、江戸の町民の多くが反感を抱いていた。
その耀蔵が、あろうことか、今この時期に南町奉行なのだ。
海舟は考える。
マムシの野郎が松陰の事を知れば、必ず捕縛に動くだろう。
アイツなら、松陰が若者である事は考慮せず、拷問を科すかもしれない。
そこで自分達の名が出る事は構わない。
その覚悟はして松陰に同行したのだから。
しかし、その証言を取る頃には、松陰の身がどうなっているのかは定かではない。
変な所で意固地な松陰であるので、拷問には徹底して抗戦するかもしれない。
口の回る松陰であっても、それが通じない相手というのはいるモノだ。
抵抗すれば抵抗するだけ、ああいう手合いは嗜虐性を高めるだけなのだ。
海舟は焦りを感じながらも、道を進んだ。
耀蔵に捕まらせない為の方策は取ってきたが、それとても確実ではない。
市中を騒がせたとして、断固として牢に入れられるやもしれない。
その前に松陰らに落ち合い、時間を稼げればと考えたのだが、数日前に先に江戸入りした事もあって、彼らの居所は分からない。
ジリジリとした時間が進む。
と、品川に向かう道の途上で、駆け足で街道を進む駕籠と、それに付き添う東湖らを発見した。
ほっと一息つく間もなく、直ぐに駆け寄る。
「おい! 東湖さん! やべぇぜ!」
「お? 海舟殿? 出迎えるには早すぎるっぺよ。」
「それどころじゃねぇ! 南町奉行が、あの鳥居耀蔵だ!」
「何だっぺ?!」
「伯父上が?!」
「それはまずいですよ!」
その名は誰もが聞き及んでいた。
因みに、岩瀬忠震は、鳥居耀蔵の甥にあたる。
「ここまで来て、一体どうするっぺ?」
「忠震殿は鳥居様の甥ですよね? 何とかなりませんか?」
「無理だ。伯父上は、俺が何を言おうが全く聞く耳を持たないはずだ。」
「松陰さん?」
ここで海舟は、松陰の様子がおかしい事に気がついた。
「松陰さんの様子がおかしいが、まさか……?」
「そう、そのまさかだっぺ。」
「危うく民の前で幕府批判をしそうになったので、慌てて逃げて来たと言う訳だ。」
「こんな時に……」
「とりあえず、長州藩邸に行くしかないのでは?」
「毛利候がどう動くかだが、今はそれしかないな。」
意見の一致を見、足を長州藩邸に向け動かそうとした、その時、
「その方ら、その場を動くな!」
鋭い声が東海道に響いた。
「クソっ! 間に合わなかったか!」
海舟の絶望の声が上がる。
周りを道行く者達は足を止め、自然と海舟らから放れ、遠巻きにした。
声の主があの耀蔵である事を察し、迷惑は御免だと敬遠しつつも、何が起きたのかと野次馬根性を発揮した。
騒動の中心があの人物と知り、ヒソヒソと噂し合った。
「その方らは、異国から帰って来たという、吉田松陰なる者を移送して来た者達か?」
耀蔵が一歩前に踏み出し、問いただす。
そこでふと、目の前の一人に見覚えがある事に気づく。
「うん? 忠震ではないのか? どうしてお前がここにいる?」
「伯父上、お久しぶりです……」
耀蔵に見つかり、忠震はしぶしぶ挨拶した。
気づかれないままにやり過ごしたかったが、仕方無い。
「ああ、久しいな。お前は確か、諸藩への遊学中ではなかったのか?」
「あ、はい、そうです! 諸藩への遊学中、偶々長州藩でこの者を知り、慌てて捕縛し、江戸に連れて来たのでございます。」
「おう、そうか。ご苦労であったな。では、後はこの儂に任せるが良いぞ。」
「いや、しかし……」
「しかしも案山子もない! 儂は南町奉行ぞ!」
「くっ!」
耀蔵が声を荒げた。
治安を守る町奉行の地位に、高い自負の心があったのだ。
その町奉行の言葉に異を唱えるとは、出来の良い甥とはいえ、許されない。
「者共、駕籠の中の者を捕らえるのだ!」
「はっ!」
部下に指示し、後ろに控えていた者達が動く。
「「くっ!」」
海舟らはうろたえながらも、駕籠を守る様に立ちはだかる。
と、「片寄れ~、片寄れ~」との声が近づいて来た。
こんな時にこんな所で、どこかの大名行列がやって来たらしい。
耀蔵以下も動きが止まり、その声のする方へ顔を向けた。
静々と、その行列は近づいて来る。
家紋は一文字に三ツ星。
長州藩の行列であった。
「こんな時に……」
耀蔵は舌打ちする。
流石に、大名行列の前で捕り物を繰り広げる事は憚られた。
急いで脇にそれ、行列に道を空ける。
「よし!」
打って変わって海舟らは喜んだ。
そして、海舟の期待通り、その行列は耀蔵らの前で止まる。
耀蔵が驚いていると駕籠が開き、中から一人の男が降りてきた。
長州藩主毛利敬親だ。
居合わせた人々は驚愕に目を見開く。
そんな観衆には構わず、敬親は耀蔵に声をかけた。
「南町奉行、鳥居耀蔵じゃな?」
「は、ははぁぁ!」
「天下の往来でいかがした?」
名前を直接呼ばれ、耀蔵は舞い上がった。
自分の名を知ってもらえている事に歓喜した。
喜び勇んで経緯を話す。
「は! 幕府の祖法に背き異国に渡り、かの阿片戦争を見てきたとかいう不届き者がいると聞き及びました。それだけならまだしも、道行く者に戦の様子を語り聞かせるなど、言語道断な所業です。急ぎ捕縛に参りました次第でございます!」
「ふむ。」
敬親は尤もらしく頷き、次には海舟らに向き直り、声を掛けた。
「その方ら、鳥居の言う事は誠か? 見れば、その駕籠の中の者はまだ年若いではないか。」
「鳥居様の言う通りにございます。この、吉田松陰と申す者は、嵐に遭って遭難し、清国に流れ着いたそうにございます。かの戦を見聞きし、無事、故郷に帰ってこれた様にございます。偶々長州藩に居合わせた我々がこの者を捕らえ、江戸に送致してきたのでございます。」
白々しい芝居が続く。
「何? 吉田松陰とな?」
「毛利候はご存知なのですか?」
「何、一度だけ儂に講義を披露した若者じゃ。」
「そうでございましたか!」
「どれ、吉田よ、元気にしておったか?」
敬親が松陰の駕籠に近づき、声を掛けた。
「ぬ? 反応がないぞ?」
「「あ!」」
敬親が訝しがっていると、
「東湖! ようやく帰ってきおったか! 待っておったぞ!」
大きな声を響かせ、また一つ大名行列がやって来た。
家紋は水戸三葵、水戸斉昭だ。
烈公とも称される斉昭は、その名の通りに荒々しい気性の人物であったらしい。
艶福家でも知られ、様々な女性に手を出し、男女合わせて37人の子宝に恵まれている。
幕末期の名君として知られる斉昭であるが、大の肉好きでもあったらしい。
藤田東湖は水戸藩の後継者問題で藩が揉めた際、斉昭擁立を画策し、成功する。
その後は斉昭の下で出世してゆき、斉昭の絶大な信頼を得るまでになった。
その東湖が3年ぶりに帰ってきたと報告を受け、火急の用ありと知り、わざわざ出向いてきたのだ。
とっても実際は海舟が出した手紙であるのだが。
そんな斉昭の出現に、耀蔵は酷く狼狽した。
何といっても御三家の一つ、水戸徳川家なのだから。
「水戸公までも?!」
「烈公とは……。この人は苦手なのだがな……」
耀蔵は、最早呻き声しか上がらない。
敬親も、激しい気性の斉昭は苦手であった。
斉昭はそんな二人には目もくれず、東湖(実は海舟)が是非にと言う、吉田松陰に近づく。
「ほう? そやつが吉田松陰という男か? 随分とまあ、呆けた面をしておるのぅ。この場面で弛みきっておるとは、余程神経が図太いか、真性の間抜けか、じゃろうな。おい、儂を誰だと心得る! 徳川御三家の一つ、徳川斉昭なるぞ!」
反応が無い。
ただの屍の様である。
「斉昭様! この者は正気を失っているっぺ! お許し下され!」
東湖が必死に弁解した。
礼には厳しい斉昭は、自分の声に反応もしない松陰に興味を失ったのか、それ以上触れる気も起こらず、東湖に向き直った。
「ところで東湖よ! 反本丸は買ってきたのじゃろうな?」
彦根の名物、牛肉の味噌漬け反本丸。
斉昭の大好物である。
東湖は大慌てで弁解する。
「あ、いえ、それが、いつ江戸に入れるか分からず、傷んでしまう事を恐れ、買わなかったっぺ! 申し訳ありませんだっぺ!」
「……そうか……」
露骨に肩を落として落ち込む斉昭であった。
一方、反本丸の言葉に反応した男がいた。
松陰である。
「……反本丸……?」
きょとんとした顔で、小さく呟いた。
敬親がその声に気づく。
「こやつ、藩主の儂の言葉には反応もせんかったくせに、食い物の名には反応しおったぞ……」
敬親が恨みがましく見つめていると、ようやく気づいたのか、
「あれ? 敬親様? どうしてここに?」
「こやつ、今まで何も気づいておらんかったのか……」
と、
「その者、薩摩藩邸にて預かりたい。」
またまた別の大名駕籠の登場である。
丸に十文字、薩摩だ。
「何故薩摩が?!」
「え? 薩摩?」
敬親が驚きの声を上げた。
現藩主である斉興は国の筈だ。
一体誰がと思っていると、降りてきたのは世子の斉彬であった。
「おお! 斉彬殿ではないか!」
「お久しゅうございます、斉昭様。」
薩摩藩の跡継ぎ島津斉彬。
史実では幕末一の開明藩主と名高い斉彬であるが、35歳となった今でも父斉興から家督を譲られず、未だに江戸の薩摩藩邸で暮らしていた。
父に疎まれていたともいう。
部屋住み生活の長かった斉昭は斉彬に親近感を持ち、親しく交流を持っていた。
そんな斉彬は、表情も変えずに敬親に告げた。
二人は以前に面識がある。
「そこの吉田松陰なる者には、我が藩の者が世話になったとの事です。今回の旅にも、我が藩の者が関係するとか。ですので、直々に話を聞きたいと思ったまでです。それに、あの調所が、この者の助命を直々に私に頼んできましたのでね……」
「調所、様?」
一方、薩摩藩で松陰が出会った調所広郷。
彼は反斉彬派の筆頭でもあった。
蘭癖である斉彬が藩主に就任すれば、ようやく持ち直してきた国庫を再び傾きかねさせないと懸念し、現藩主斉興と計り、斉興の側室の子久光の擁立を画策していた。
斉彬も当然、それは把握している。
しかし、その広郷が直々に松陰の助命を頼んできたとあっては、俄然松陰に興味を持ち、こうして自ら足を運んで来たのだ。
あの調所が助命を頼む人物とは、との思いである。
「それに、宇和島の伊達候にも、お前の身の安全を頼まれたのでな。どういう繋がりかは知らぬが、宗城殿は随分とお主を買っておったぞ。」
「あ! そういえば、すっかり真珠の事を忘れてた……」
「何? 真珠? おい、吉田よ、後でしっかりと聞かせるのじゃぞ!」
そんな三人に斉昭が嫉妬する。
「おい! 儂が声を掛けた時には反応もせんかったのに、何じゃ一体! 無礼であるぞ!」
怒り心頭の斉昭を、東湖がとりなす。
「斉昭様! この吉田松陰は、反本丸にも勝るとも劣らない肉料理を知っておるっぺよ!」
「なぬ?! 本当か?!」
途端に目をギラギラとさせ、駕籠を食い破らんばかりに勢い良く松陰に尋ねた。
その食いつきぶりには敬親も斉彬も引いてしまう。
ここで口にする言葉一つで、この後の日本の運命が変わる。
事態をよく把握していなかった松陰であるが、何故かそうはっきりと感じていた。
そして、これこそ絶好の機会であると理解した。
ここは、この世界に生まれてからの悲願の一つを成就すべき時であると悟った。
松陰は、食いつくような目をした斉昭に、自分が知る肉料理の取っておきを披露した。
「ビフテキ、ハンバーグ、すき焼きなどいかがでございましょう?」
「びふてき、はんばぐ、すきやき?」
斉昭は松陰の発した言葉を反芻する。
いずれも生まれて初めて耳にする料理である。
「そうでございます。ビフテキとは牛の肉を焼いただけの料理なのでございますが、単純であるが故に、肉の美味しさを味わうのには打ってつけなのでございます。ハンバーグとは、牛や豚の肉を挽き、丸めた物を焼いた料理にございます。肉の脂が口の中でジュワッと溶けていき、タレにつけて食べると格別にございます。すき焼きとは、牛の薄切り肉を醤油と砂糖で甘く味つけした汁の中で煮て食べる料理でございます。どれも大変美味しいですよ!」
「な、なんと!」
「斉昭様! 涎、涎が出てるっぺ!」
斉昭は松陰の説明に恍惚とした表情を浮かべていた。
説明している本人の顔にも、えも言われぬ色が浮かんでいる。
気味の悪い物を見る様な顔で、斉彬、敬親らは黙って見守った。
暫くし、我に返った斉昭が東湖に告げる。
「東湖よ! 今すぐこの者を水戸藩邸に連れていくのじゃ!」
「承知いたしましたっぺ、斉昭様!」
と、今まで蚊帳の外に置かれていた耀蔵が待ったの声を掛けた。
「お待ち下され! お恐れながら御三方に申し上げます。この者は、幕府の祖法を破った者にございます。南町奉行として、お渡しする訳には参りません!」
耀蔵が、緊張した面持ちながらも、きっぱりと言い切った。
その気概には感心しながらも、敬親らはギロリと耀蔵を睨みつけた。
しかし、耀蔵は視線を逸らす事はない。
三人は、埒が明かぬと思ったが、さりとて幕府の法を無視する訳にもいかず、どうしたものかと悩んでしまう。
そこへ、
「ご心配誠にありがとうございます。この吉田松陰、深く深く感謝しております。けれども、私は何一つ疚しい事はしておりませんから、奉行所にて取調べを受けてこようと思います。牢を出てこられた際には、皆様にお礼をする為、正式にお伺いしたく存じあげます。」
涼やかな顔でそう述べた。
それを聞き、三人の顔に微笑が浮かぶ。
それならそれで手はあるからだ。
三人は耀蔵に言った。
「己の職務を全うしようとするその心がけ、全く持って感心じゃ!」
「左様、武士の鑑でございますな。」
「鳥居よ、褒めてつかわす。」
大名達にそう言われ、耀蔵の顔が輝く。
しかし、次の言葉に顔色を失った。
「儂は肉料理を今すぐ食べたいのじゃ。わかっておろうな?」
「その者は若い。手荒に扱うのは勧めぬぞ?」
「そやつは我が藩にとって欠かせぬ人材なのだ。丁寧に扱えよ?」
こうして松陰は耀蔵に捕らえられ、伝馬町牢屋敷に入る事になった。
その前に、海舟に言付ける事を忘れない。
「海舟殿、才太さんに言って、〆て半身にした牛の肉を、日には当てずに江戸まで運んで来て貰えませんか?」
「合点!」
熟成肉になれば良いと考えた。
牢の中では、ステーキとハンバーグの事を考えれば時間の立つのを忘れ、過ごせるだろう。
悲壮感はなく、入牢した。
しかし松陰は、当時の牢の過酷さを知らない。
歴史が少々変わっております。
水野忠邦は失脚せず、鳥居耀蔵も南町奉行のままです。
こんな事ならもう一年早く帰国させれば良かったですが、石の上にも3年と言う事に拘りました。
忠邦さん達の失脚は、松陰が江戸を去ってから勝手に進むと言う事でご納得いただけたら、と思います。
決定的な矛盾ではないだろうと思っておりますが、おかしい所がございましたら、是非ともご指摘くださいますよう、お願い致します。
まあ、大名がこんな形で街道に集まるなんて事は有り得ないとは思いますが……
呼び方等は、いい加減です。




