第9話 出奔
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〜セリーナ視点〜
今、私は里の南端にいます。ここからしばらく南下すると、エルフの領域から出ることができます。
私がここにいるのには、理由があります。
これから里を出るのです。
アルペンハイムさんによってもたらされた情報は、私の願いを叶える為に必要な鍵の一つでした。
母の居場所です。
母は、私がまだ幼い頃に、人族に攫われました。幼かった私には、どんなに泣き喚いても、ほとんど正確な情報は与えられませんでした。
ですが昨日、食堂でアルペンハイムさんから有力な情報を得ました。
「攫われたエルフが西大陸にいると聞いたことがある」
それを聞いた時、私はそれが母の事だと確信しました。
もともとエルフはこの森にしか住んでいません。誰かが出奔したというのも聞いたことがありません。なので、外界にいるエルフは、母である可能性が極めて高いのです。
父と祖父は即座に捜索隊の結成を指示しました。当然、私も志願しました。
しかし、許可されませんでした。
幼い、未熟、足手まとい。全て過小評価されました。
自分で言うのもなんですが、私は優秀です。魔法も、父には劣りますが、ショウに優っています。
なのに幼いという理由だけで外に出れない。理不尽です。
だから私は、一人で西大陸を目指すことにしました。
心残りがあるとすれば、ショウの事でしょうか。
突然現れた人族の子。女の子のような顔の男の子。魔法を知らない子。
そんな彼を初めは見下していましたが、今は違います。
彼の魔法の才能を妬んだ私がどんなに嫌味を言っても、彼は笑顔を崩しませんでした。その上、親しく接してくれました。
最後の方は、彼と話す時に何故か緊張したりしました。原因はわかりませんが……。
そんな彼に何も告げずにいなくなるのは、少し罪悪感があります。ですが、下手に彼に何か言うと、引き留められるでしょう。そうなると決意が揺らいでしまいそうです。
「……ふう」
森とトルネリア王国の境界まで来ました。
ここから数分歩けば、王国領です。バックパックには必要最小限の道具が入っています。あとは私の立ち回り次第です。
取り敢えず、ウェストポートへ。
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