第12話 旅の装備
「では、そういうことで」
「了解した。修理の予定についてはまた後に連絡する」
えー、私の目の前でどんどん話が進んでいきます。そして今終わりました。
俺、軍船に乗って外界に行くんだって。一人なんだって。そこに俺の意思はないんだって。
「今日は予定ないから、好きにしてていいよ」
オルトさんに苛立ちを覚えたのは初めてだ……。
いや、まあ別にいいんですよ?
セリーナを探しに行くのは俺が言い出したことだし、俺もそうしたいと思う。それに、いつまでもこの里にいるわけにはいかないしな。もしかしたら、地球に帰る方法とかあるかも知れないし。
「じゃあ、お昼ご飯頂いて寝ますね」
「ああ、わかった」
あまりの急展開に気持ちの整理が追いつかない。
起きたら朝だった。昼寝のつもりが、そのまま寝過ごしてしまったらしい。そんなに寝るほど疲れてなかった気がするが、まあいいか。
とりあえず着替えて下に行こう。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
食堂に行くと、ナベル翁が飯を食っていた。この家の朝食はみんな勝手に食べる。食材があるから、自分で作って食べるのだ。
セリーナのお母さんが失踪する前は違ったらしいが。
「ショウ、今日はお前に渡す物がある」
「あっはい」
旅の装備かな?ポケットな怪物のゲームとかでも序盤にもらえるもんな。無限に物が入るリュックとか。なんか面白い道具とかもらえるといいな。
「食べ終わったら地下の倉庫においで」
「わかりました」
じゃあ、肉焼いてパンに挟んで食べるか。
焼くのには魔法の炎を使う。初めは火力がわからず、灰を量産したものだ。セリーナにコツを教えてもらって、ようやく調節できるようになったんだよなぁ。
……セリーナの話はやめよう。なんか寂しくなる。
「失礼します……」
「うむ」
扉を開ける。今は夏も終わりに近づき、暑さは和らぎつつあるが、それでもまだ暑い。てかここの世界の気候がイマイチわからん。一応この島には春夏秋冬があるっぽいが、冬はそこまで寒くない。温帯の南部に位置してるのかな?
話が脱線したが、上に比べて地下は涼しい。それだけが言いたかった。
「渡す物を一つずつ説明するから、よく聞いておくれ」
「わかりました」
石を積んだ壁の安全性に疑問を感じるが、気にしたら負けだ。中学校の教室くらいの広さ。木箱が壁に沿ってたくさん積んである。
その箱の中から、彼は他のに比べて大きめの箱を取ろうとした。
「手伝います」
「おお、ありがとう」
「せーの、よいしょお!!」
箱は一番上だからそこまで大変ではないが、重いな。
「……よっと」
「ふう、ありがとう」
こういう作業をするなら、オルトとか呼べばいいのに……。
あ、船の修理関連で仕事してるのかもな。
「まずはこれじゃ」
そう言ってナベル翁が取り出したのは、茶色いナップサックだ。こっちに来てから一度も見たことがない布だ。
……なんかツギハギがあるんですが。
「ライアンが外の世界で使っておった……何と言ったかのう。まあ、物を入れる袋じゃ。背負うこともできる」
「なるほど」
知ってた。てか先生の持ち物がなんでここにあるの?略取したの?
「物が無限に入ったりしますか?」
「そんなわけないじゃろ」
「ごめんなさい」
まあ、そうだよね。
質量保存の法則に引っかかるのかな?
そもそも魔法が存在する世界に地球の法則は通用しない気がする。
「それに服とかを入れるといいじゃろ」
「はい、ありがとうございます」
これはありがたい。風呂敷に荷物包んで棒に引っ掛けるとかにはならなさそうだな。
「次じゃ」
「はい」
そのあと色々もらった。
それらの荷物を軽く綺麗にして自室に持って行った。そして昼飯を食い、ライアン先生から様々な生活術を授かった。
ここで、貰った装備を紹介しよう。
・何かの布でできたナップサック
茶色いナップサック。無限に入ったりはしない。
・水筒
何かの皮でできた袋に口をつけたやつ。
・財布
紐で口を縛るタイプの袋。そういや俺は外界に出た後一文無しじゃん……。財布はあるのに金はないのか。
・地図
とてもざっくりしている世界地図。
・何かの鍵
ライアン先生が外界で拾った物。旅のお守りなんだそうだ。
・ローブ
何かの布でできた外套。少し大きい。
・皿とフォーク
木製で軽い。
・短剣
近接戦闘用。使い方わからない。
・生活術
午後、ライアンに野宿の仕方とかを教えてもらった。難しいね。
後は船の修理が終わるのを待つだけだ。
……緊張してきた。
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