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第1話 気付いたら日本にいなかった

「生徒会長は勉強が嫌い」の(終わってないけど)リメイク版です。

 ふと風を感じた。先生の鼻息だろうか。

 どうやら寝てしまったようだ。数学は寝てる場合じゃないけど。関数とか意味わからん。他の教科は余裕なんだが……。

 言い訳を考えつつ目を開ける。


 視界は真っ青だった。

 え?


 何でじゃ!?ってか仰向けだし、寝転がってるし。

 1、3、5、7、11、13、17、19……。落ち着かねぇ。とりあえず起き上がろう。

 起き上がると、見知らぬ、森。もう知らん。


 とりあえず人工物を探して歩くことにした。

 四時間目の途中だったから腹が減っている。辛い。暑い。鳥がうるさい。

 ココハドコ?知らん。

 ワタシハダレ?三芳(みよし)(しょう)。生徒会長。

 記憶はあるし学ランを着てるから、今までの人生が夢だったって訳ではなさそうだ。じゃあなんなんだよ……。

 しかし、行けども行けども木しかない。送電線の一本くらい見えても良いと思うが、それすらない。学校の近くにこんな所無かった。ってことは俺が寝ている間に学校に不審者が来て誘拐されたとかか?ならあんなところに放置されないか。そういうプレイだったのかもしれん。

 日が大分傾いた時にようやく道を見つけた。獣道みたいな奴だ。人工物、なのか……?まあいいや。これに沿って歩いていけば少なくともローマ帝国には行けるはずだ。英語なら多少は話せる。喉が乾いた。腹が減った。

 とある本の主人公は太陽の位置とかから方角を割り出していたが、そんなことは中二には必要ないスキルだと思っていた。だからできない。なら、道を歩くまでだ。

 痛い。さっきから首筋が痛い。虫にやられたかもしれない。薬なんて持ってないからキツい。

 そんなことを考えていたら、フッと意識が消えた。


「……人族か?まだ子供ではないか」


 そんな声が聞こえた気がした。







 夢を見ていたようだ。森を歩きまわる、変な夢だ。人が全然登場しなかった。最後に声が聞こえた気もするが……。

 数学か。起きよう。まだ先生の気配もない。起きるなら今のうちだ。

 ゆっくりと頭を上げ、目を開ける。違和感がある。何かがおかしい。急いで体を見回す。


 椅子に縛り付けられていた。夢じゃなかったのかよ……。まあ、知ってたけど。


 どうやらここは簡素な小屋のようだ。掘っ建て小屋ってやつか。窓がないのに明るい。背後に光源でもあるのだろう。やはり俺は誘拐されたのか。家は中流家庭だから身代金なんて大して取れないはずだ。その辺調べてからじゃないと誘拐なんてしない方がいいと思うけどな。


「……目覚めたのか?」


 心臓が口から出そうになった。猿轡に阻まれるかと思ったがそんなもの無かった。

 と、とりあえず挨拶だ。相手は声からして若い男だろう。更生のチャンスはまだある。


「おはようございます」


「男だったのか。今はもう昼だ」


「こんにちは」


「やけに落ち着いているな」


 そう言いながら声の主が俺の視界に入ってきた。あれ?俺の口から今変な言葉が出たぞ?相手も俺も日本語を話していない。相手が外人だとしても、俺は何故それを話せるんだ?知らぬうちに第二外国語をマスターしてしまったのだろうか。まあ、都合がいいからこのままでいいや。


「人族、お前は何者だ?」


 すげえイケメンだった。少なくとも日本人ではなさそうだ。白磁のような肌。体の線は細く、足が長いし背も高い。顔は西洋人っぽくて、優男風だ。なんか革ジャンっぽいのを着ている。ナイフを持っている。ヤバい人の格好だが顔がマイルドなせいでギャップが激しい。仮にマイケルとしておこう。

 え?耳長くね?


「何者だ」


「まずはこちらの質問に答えてもらおうか」


 人質に手荒な真似は出来んだろう。強気交渉だ。


「よかろう。三つまで答えてやる」


「一つ目、ここはどこですか?」


 逃げれそうなら逃げたい。

 マイケルは少し考えた後に答えた。


「北の森だ」


 答えになってねぇ。アバウトすぎるだろ。まあいい。詳しく聞いたら「今お前は二つ目の質問をしたな」とか言われそうだし。


「二つ目、あんた誰?」


「俺はアディルだ」


 はい、やっぱり外人です。マイケルではありませんでした。


「三つ目は何だ?」


「とっておきます」


 なんかあるかもしれないし、一応だ。

 マイケ……アディル氏は一度俺の背後に回り、メモのようなものを持ってきた。あれは紙なのか?いつも学校で使っているノートとかとは質が違いそうだ。


「ではこちらから質問だ。お前の名は?」


 え?知らないのに誘拐したんですか?バカなんですか?ああ、今から連絡先を聞き出して身代金を要求するのか。手際が悪いな。

 さて、どう答えようか。アディル氏は姓だか名だか知らんが片方だけ名乗った。じゃあ俺もそうしよう。


「将です」


「ふむ。ショウか。姓がないということは、貴族ではないのだな?」


 どうやら俺は精神異常者に誘拐されたようです。耳が長くてとがっている時点で違和感あったけどさ、今の日本に貴族階級はないんだぜ?

 いや、もしかしたら貴族が存在している国の出身なのかもしれない。イギリスとか貴族いそうだし。


「違います」


「西の間者か?」


「違います」


「一人でここまで来たのか?」


「あんたが俺だけ連れてきたんでしょうが」


「まだ森の中に仲間がいるのか?」


「違います」


「そうか。年は?」


「十三。来月十四になる」


「ライゲツとはなんだ?」


「えぇ……。じゃあ、なんでもないです。とりあえず今は十三です」


 この人ちょっとおかしいんじゃないか?質問も意味がわからん。

 ……もしかして誘拐された訳じゃないのか?


「では、三つ目の質問です。僕はあなたたちに誘拐されたんですよね?」


「勝手に森に入ってきてその言い分はおかしいぞ。お前がどうやってここまで来たのかは知らんが、先祖の名誉に誓って我々はお前を誘拐していない。じゃあ、少し待っていろ」


 そういってアディル氏はドアを開けてどこかへ行ってしまった。

 ドアが開いていた間、外に彼と同じくイケメンで耳が長い人を二人見た。目が壊れたのかもしれん。

 しかし、今思うと大変な状況だな。警察に捜索願は出されただろうか。

 アディル氏の言葉が本当なら、俺は別の誰かに連れ去られ、あの森に捨てられたのか。怪しいが、今は少しでも自分の置かれている状況を改善しよう。手始めに、彼らと仲良くなろうか。

 ドアが開いた。外にいたのはほんの数秒だ。今度はさっき見たイケメン二人も一緒だ。俺は男だから慰み者にはならないはずだ。うん。大丈夫。そういうのは二次元の話なんだ。たとえ三次元でも起こりうることだとしても、今はどうしようもない。

 アディル氏が口を開いた。


「ショウ、帰る家はあるのか?」


「ここがどこかにもよりますね。遠すぎるのであれば、帰れません。お金持ってないですし」


 取り敢えずそう言っておこう。彼らは犯人じゃない。彼らは犯人じゃない。

 イケメンその二が口をはさんだ。


「ここは北の森だ」


「じゃあ帰れません。もっと具体的な位置を教えてください。国とか」


「東大陸の最北だ。国ではない」


え、ちょっと待て。東大陸?ヒアリングがおかしいのか?


「日本ではないのですか?」


「ニホン?聞いたことないな。それは西大陸の国か?」


 ああああああああああ!?もういいや。とりあえず話の分かる人を探そう。


「そうかもしれません。じゃあ僕は」


「ならば帰るのは容易ではあるまい。旅費を稼ぐ必要もあろう。ここにしばらく滞在するといい。本当なら人族は受け入れられぬが、追い出してそこらで死なれても困る」


 というわけで、日本へ帰るためにお金を稼ぐことになりました。この国の法律では十三才を働かせてもいいことになっているのかな?ってか未だに電化製品が見えないのはなんでかな?

 あっははー。もうしぃーらぁーない!







「ショウ、今日からここがお前の拠点だ。長の家だからな。普通のより広いぞ」


「ありがとうございます、アディルさん」


 しばらくして、俺は縄を解かれた。まだ体中が痛い。手錠とか無かったのだろうか。そして松明と持ったアディル氏に連れられてこの家についた。道は舗装されていないし、高い柵をくぐったところからいくつか家があったが、どの家にも明かりがともっていない。電化製品も石油製品もなにも見ていない。この国は相当貧しいのだろうか。

 そしてさらに重要なことがある。

 今まですれ違った人の耳は全て長く、とがっていたのだ。ついでに全員美男美女だった。日本人が特殊な耳なのかとも考えてみたが、同級生のイギリス人は俺と大体同じ形の耳を持っていた。指摘してみようと思ったが、全然タイミングがなかった。

 時は来たれり。


「あの、アディルさん」


「どうした?」


 いいよな?侮辱だとは思われないよな?


「耳、長いんですね」


 それを聞いた途端にアディル氏が優しく微笑んだ。イケメン過ぎて顔が光って見える。

 自分の耳を触りながら、彼はこう言った。


「ああ、長耳族(エルフ)だからな。そうか、本物を見るのは初めてか。帰ったら友達に自慢できるな」


「え、ええ……」


 やはり気にしていたようだ。冗談で返されてしまった。

 冗談だよな?

 エルフって単語が出るってことはここはヨーロッパか、ヨーロッパと交流のある所なんだろう。よかった。ちょっと安心した。少しは英語も話せるし、何とか帰ることができそうだ。


「何かあったらいつでも頼ってくれ。じゃあな」


「案内、ありがとうございました」


 アディル氏と別れる。彼は良い人だったな。

 後ろを向いてホームステイ先の家を見る。でかいといっても、森の中に家を建てるのだから限界があるのだろう。大豪邸というほどではないが、なかなか立派な家だ。奥行きはわからないが、幅は二十メートルくらいか。二階建ての木造家屋だ。嫌いじゃない。


「我が家は気に入ってくれたかね」


 いつのまにか左に優しそうな老人が並んでいた。この人も耳が長い。長だろうか。

 あれだ。感想を言うのだ。


「はい、僕の家なんかよりずっと広くて、びっくりしました」


「ほう。幼いのに出来た子じゃ」


 老人は嬉しそうに目を細めた。なんとなく校長に似ている。年は全然違うんだろうが。

 老人は続けた。


「儂はこの里の長、ナベル・ヴィアじゃ。君が例の人族かの?」


「ええ、そうです。今日からお世話になります、みよ、失礼。ショウです。よろしくお願いします」


 辻褄合わせのためにも今日から俺の名はショウだ。


「よろしくの。では、儂についてきなさい」


「はい。お邪魔します」


 案内されて家に入る。パソコン、テレビ、クーラーも何もない。長の家ならあるかもしれぬと期待していた分、残念だ。特にクーラーは欲しかった。北の森とかいう癖に暑いのだ。ってことは南半球か?

 調度品も何もない。本当に貧しいのかもしれない。旅費稼ぎとか大変だな。

 玄関、食堂と通って二階へ上がる。ここまで、誰も人を見ていない。もうみんな寝ているのだろうか。そりゃそうか。


「ここがショウの部屋じゃ」


「はい、ありがとうございます」


「儂はもう寝る。君ももう寝るといい。明日は忙しいじゃろうからの。部屋に桶と布があるから、それで体を拭きなさい。じゃあ、おやすみ」


 二階は部屋がたくさんあった。その一番奥に部屋をもらった。ありがたい。

 ドアを開けると、六畳くらいの部屋になっていた。日本では小さなマンションに住んでいたから、自分の部屋はなかった。よって今は最高の気分だ。

 机とベッドがあるだけだが、それだけでも十分だ。


 体を拭いて寝た。風呂が恋しい。

次回予告 ショウは長に勝つ。だがそれは全ての始まりに過ぎなかった。長から逃げるショウ。ヒロインの傲慢は、自分が彼を救おうと決心させる。次回「見慣れた、展開」


※予告と本編の内容は異なる場合がございます。ご了承ください。

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