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聖なる王宮を継ぐ者

 彼の自宅では、まだ七神が祖父の部屋に佇んでいた。部屋の扉が開くと直ぐに、空の神の声が聞こえる。

「カーシェとリシェも一緒か…。レス達も…という事は、何かやらかしたか?」

騒動を前提で言葉を吐く空の神へ、金髪の少年神が反論をする。

「伯父上、私は何もしていません。

ったく、伯父上までも…私が騒動を起こすと思ってるんだから…。」

「「何時も騒動のど真ん中におられるのは、どなたでしょうね。」」

子供らしい口調の反論へ、二人分の声が掛る。精霊騎士達の声に、その通りと七神からも同意の声と笑い声が聞こえ、ルシフの面々の声も上がる。

「今回のリシェア様の騒動は、可愛い物でしたよ。爺も一枚噛んでましたが。」

「そうですよ、祖父とリシェアオーガ様の起こした、小さな騒動がありましたよ。

まあ、穏便に終わりましたがね。」

「サニフ、ハール、お前達まで………。」

ルシフの王達の暴露に絶句寸前の少年神へ、寝台にいる老人の声が掛る。

「もう、陛下にもバレてしまいましたか…・。

ハールの成人の儀の際に、明かそうと思っておったのに…残念じゃな…。」

今回の首謀者と取れる言葉に、ハールトバムが頭を抱える。

「じっちゃん…陛下に…父上に迷惑を掛けるんじゃない!」

今回の諸悪(?)の根源の一人であろう祖父に叱咤したハールトバムは、七神に向かい真面目な顔となって重要な要件を述べる。

「初めの七神の御方々、このハールトバム・ジェスタラーク、七神の御方々の御希望、確と承りました。

不束者ですが、ルシフの次代として、宜しく御願い致します。」

確かな、揺ぎ無い瞳を相手に向け、誓いとも取れる言葉を告げる彼へ七神は、一堂に微笑を湛えて頷く。

そして、その代表として、今度は空の神では無く光の神が返事を返す。

「そなたの決心、我等は確と受け止めた。

そなたに我の聖地と、我等が護る国であるルシム・シーラ・ファームリアを託す。然るべき時が来れば、サニフラールの後を継ぎ、ルシフの王としてこの地を護ってくれ。」

この言葉で何故、光の神が返答したのか、ハールトバムは理解した。

神々が護る国であるルシフには光の神の聖地がある。その聖地をもルシフの王は託されるのだ。重責ではあるが、この国の人々を護る為ならば全く以て苦にはならない。

まあ、その為の勉強が山積みになる事だけは頭の痛い所だったが。



 その年の早春にハールトバムの成人の義と、ルシム・シーラ・ファームリア・シュアエリエの後継の義が執り行われた。

この儀式を機にハールトバムは、ハールトバム・ジェスタラークの名を返上し、ルシム・シーラ・ファームリア・シュアエリューム・ハールトバム即ち、ハールトバム皇太子と名乗る事となる。

成人の儀の一か月後に行われた生誕祭では、ルシフ王の後継者として各国からの来賓に紹介された。唯一の心配であった立ち振舞いも、リシェアオーガ達の教育のお蔭で何の支障も無かった。

そして…その年の夏。

ハールトバムの義理の祖父であるガリアスは、静かに息を引き取った。滞りなく行われた孫の儀式を見届け、安心したように彼の魂は神々の許へ旅立った。

享年、103歳。

ルシフの大神官を務めた彼の葬儀には、ルシフの民人は元より、神々の姿も見受けられた。無論、彼の魂迎えは七神の内、一番の知己であった光の神が請け負った。

彼の希望通りかの魂は、再びルシフの地を踏むであろう。

新しいルシフ王の手助けをする事が、かの大神官の希望であり、次代のルシフ王の希望でもあった故に。



 その後、祖父の死を悼む間もなく、ハールトバムは猛特訓を強いられた。

神々や精霊達、神官達や義理の父親であるルシフ王からの教え。

ハールトバムは、教えられた事を土に水が滲み込む様に吸収して行き、数年後にはルシフの後継者に相応しい者だと諸国の王族達に言われる事となる。


まだ、ルシフの世代交代の日は来ない。

だが、何れ来るそれに神々とルシフ王の憂いは無い。

次なる次代・ルシム・シーラ・ファームリア・シュアエリューム・ハールトバムは、その名にふさわしい人物となっているのだから。

ルシム・シーラ・ファームリア・シュアエリューム・ハールトバム…何れルシム・シーラ・ファームリア・シュアエリエ・ハールトバムとなる者に、神々の加護があらん事を。

今回で最終話となります。ここまでお付き合いして頂き、有難うございました。<m(__)m>

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