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驚きの事実

 久し振りに来る神華の塔にある本神殿では、銀色の髪の神官が一人だけ静かに佇んでいて、サニフラールを待っている様だった。そんな神官の紫の瞳がサニフラールとハールを捕えると、優しげな微笑がその顔を彩る。

「お待ちしていました、陛下。

それと、本神殿で会うのは久し振りですね、ハールトバム殿。」

「待たせたな、ヴァル。」

「御久し振りです。ヴァルトレア大神官様。」

サニフラールと同年代である大神官に簡単な挨拶を返すと、ハールことハールトバムは、久し振りに来る神殿の中を見回していた。

自分が初めてここへ来たのは、この塔の神殿の筈。

真っ白な壁と六色の綺麗な石があった祭壇。

しかし、目の前の祭壇には七色の石だけで無く、人の大きさよりやや小さめの七体の石像が奉納されしていて、その下には人一人が通れる扉があった。

覚えている場所とは違うそれに、不思議そうな顔をして目の前の祭壇を見る。

そこにある七体の石像群は、良く会う人々そっくりであった。特に祖父が何時も、会うのを楽しみにしている人物と似ている石像に彼の目が止まる。

「あれは…?」

無意識に出た言葉へ大神官が答える。

「初めの七神の方々ですよ。ハール殿は幼い頃、あの方々に御逢いになられている筈ですから覚えておいでなのでしょう。」

告げられた言葉に首を振り、己の意見を言う。

「いえ、覚えているのではありません、只…良く祖父の所へ見舞いに来る方々に似ているので……驚いただけです。」

返された返事に、ヴァルトレアは微笑み、

「ガリアス殿は、このルシフの大神官だった御方です。ですから、七神の方々が御見舞いに来られるのは、当たり前ですよ。」

と答える。この返答にハールトバムは納得して目の前の神像を見つめ、何かを思い出した。自分が捜している人物と目の前の石像…金髪と青い瞳のそれは似ていないか…と。

暖かな温もりを持つあの人。

その顔と石像の神の顔が似ている気がしたのだ。

「ヴァルトレア大神官様、あの金髪の神像は、確か…光の神で在らせられるジェスク様でしたよね。」

一応、祖父から教えられている神々の名とその特徴を照らし合わせて告げると、その通りですと答えが返って来る。

光の神に似ているあの人。それならば、そちらの線で探せば良い。

あの人を捜す手段が出来たと思っている彼の耳に、サニフラールの声が届く。

「ヴァル、例の件だが…漸く、見つかった様だ。」

何の事か判らないハールトバムは、彼等の遣り取りを黙って見つめた。そして…驚愕の事実を知ってしまった。

「ヴァル、エルト、私の後継者捜しだが、もうその必要は無い。

後任のルシフ王は既に、この国にいる。」

このルシフでは血族で王という地位を継げない事を知っていたが、未だ後継者が現れていないと言われていた。しかし、今のサニフラール…現ルシフの王から後任が既に、この国に来ている事を告げられたのだ。

驚くヴァルトレアとハールトバム、そして紅の髪の王宮騎士団長・エルトへサニフラールは言葉を続ける。

「私の後継者は随分と昔に、この地に着いていた様だ。

ハール…ハールトバム・ジェスタラーク。

お前が次なるルシム・シーラ・ファームリア・シュアエリエだ。」

「ちょ・ちょっと待って下さい、陛下。

何でオレ…いえ、私が、次代のルシフ王なんですか?!」

驚きの余り口調も混乱しているハールトバムに、サニフラールが理由を告げる。

「ハール、お前は、神殿に近付けなかっただろう?

それは、以前の私と同じだ。私も、このルシフに訪れてから次代の資格を得るまでは、神殿に近付く事が出来なかった。

それにお前のその名・ジェスタラークは、ジェスク様から頂いた物だった筈。

何時もの気紛れかと思ったが、その名にはジェスク様を始めアークリダ様、クリフラール様の思惟も入っていると今、判った。」

「思惟…ですか?」

「そう、お前を護ると言う、想いだ。」

ここで付けられた自分の名に、そんな意味があると知らなかったハールトバムは、一層驚き、慌て始めた。

「え…あの…オレの名字にそんな意味、あったんですか?じっちゃんが名字が無いと、この先不便だからって付けた筈ですが…違ったのですか?」

困惑顔で言われたそれをサニフラールは、笑いながら返す。

「そうか、爺は、そう言ったのか。

お前の名字は、七神の方々が考えた後にジェスク様が意見を纏め、リシェア様が伝えてくれたものだ。特にあの方は、お前の行く先を按じて、良く様子を見にルシフへ来られていたからな。」

初めて聞く名に思い当たる姿は無い。

しかし、良く会う少年は…緑の髪と瞳で、オルガと名乗っていた。

木々の精霊だと言っていた少年の姿を思い描き、石像に目を向けると……彩は違うのに似ていると思ってしまった。

「え…っと、リシェア様って……何時もオレに会いに来てくれていたオルガって名の、精霊の少年ですか?」

「……ったく、あの方は…またあの偽名を使っておられたのか。

その通りだが…若しかして、緑の髪と瞳だったか?」

返された質問に頷いたハールトバムだったが、彼の返事でルシフ王は、困惑顔となって己の右手で頭を抱えた。

御忍びと称してあの姿と名前を使い、ルシフや他の国々を巡るリシェアという名の少年。身に掛る危険は己の力で回避出来るとはいえ、大小問わず何かしら騒動を起こす御仁を思い浮かべたらしく、ルシフ王の口から溜息が漏れる。

「ハール、その方がリシェアオーガ様だ。

気紛れに、お前に剣を教えていただろう?」

言われてみれば、木々の精霊剣士だからと言う事で剣を教えて貰った覚えがある。剣の腕は、自分の上司でもあるエルトより強かった覚えもあった。

「それでは…私は…戦の神で在らせられるリシェアオーガ様から、剣術を習っていたのですか?!」

更なる驚愕の事実にサニフラールが、さらりと止めを刺す。

「そう言う事だ、ハール。

やっと他の騎士達が、お前を羨ましがってた理由が判ったか。」

「…申し訳ありません、てっきり、精霊の師匠がいるからだと思っていました。」

素直に謝る彼を前に、サニフラールが話を戻す。

「それはそうとハール、お前に私の後を継ぎ、ルシフ王になる意思があるか如何かを聞きたい。」

重大な質問を投げ掛ける彼へハールトバムは、口籠りながらも答える。

「…私がルシフ王なんて大役…務まるとは思えません。

ですから…御断りしたいのですが………」

「迷っているか?だろうな。お前は、この国の人々を護りたい、そう思ってルシフの騎士になったんだからな。」

自分の言葉に付足されたサニフラールのそれに、頷くしか出来なかった。

この国に住んで、この国の人々との関わりを持ってから彼等の暖かさを知ったハールトバムは、何時しか彼等を護りたいと思う様になっていた。

そして、その為だけに剣の腕を磨き、ルシフの王宮騎士団へと入団を果たしたのだ。

だか、今告げられたルシフ王の後継者となっても、この国を護る事が出来る。いや、騎士よりも確実に彼等を護る事の出来る立場故の、迷い。

王としての自覚や立ち振る舞いを持ち合わせていない彼に、ルシフ王として君臨出来るのかという不安だけが募る為、断ると決めたのに…口から出たのは迷いの方の言葉。この言葉にサニフラールは、最後に一言告げる。

「ハール、断っても構わない。だが、これだけは言っておく。

私の意思と七神の意思は、お前を後継者に望んでいるが、私達はお前に対して強制は出来ない。あくまで、ハール自身が選ぶ事だ。

……ハール、お前の決断を待っている。」

そう言うとサニフラールは、エルトを連れて神殿を出て行った。

残された大神官と青年騎士は、その場で佇んでいた。

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