元幼子の思惑
今回は【緑の夢~】の番外編に当たり、主人公は、緑の夢~】で登場した幼子となります。なので、そちらの方を先に読まれた方が判り易いと思います。
覚えているのは、綺麗な金色の髪と優しい青の瞳。
顔は…綺麗だったとしか、覚えていない。
それと、緑色の髪の綺麗な人と金色の髪の可愛いらしい人もいた。
他にも沢山、人がいた気がするけど覚えていない。
じっちゃんにオレを託してくれた金色の髪の人の温かさ…しか、オレは、此処に来た時の事を覚えていない。
ここは、神々が護る国・ルシム・シーラ・ファームリア、通称・ルシフと呼ばれる聖なる国。
その国に住む紅の髪の青年は、自分がこの地に来た時の事を思い出していた。
まだ幼い子供の頃、何時の間にか、この地の神殿に来ていて出会った人々。
顔ははっきりと覚えていないが、綺麗な人達だったとだけ覚えている。
それが誰だったか、他の人に聞く事は無かったが、胸の奥に今も引っ掛かっている。時折思い出しては、溜息を吐く。
人に聞けない訳は、自分自身にあると判っていた。
己自身の手で捜し出したい。
その欲求がある限り、人には聞けない。
捜す手筈は考えているが、この地を離れたくないとも思っていた。
この国の人々を護りたいと同時に、育ててくれた義理の祖父の体調が思わしくない。もう年だと判っているが、もう少し生きていて欲しいと願うのは、自分の我儘なのかもしれない。
現在十七歳…成人となる十八歳に近付いている彼にとって掛替えの無い祖父は、このルシフの元大神官であった為、今でも人が彼を見舞ってくれる。
自分の同僚や上司、神官達や近所の人々、そして…この国の王である方から他の国の人々、そして見知らぬ人々。精霊かと思われる人の中に金髪の人物も見掛けるが、捜している人ではない。
後ろ姿しか見た事が無いが、背格好、性別が違う人で祖父が最も嬉しそうに話し掛けている人。誰なんだろうな~とは思っているが、未だこの国の神殿に通う事が出来無い青年では知り様が無かった。
本神殿がある神華の塔へ行こうとする度に何故か、己の足が止まる。
地上ある仮神殿へ行く時では、全く支障が無いのに…だ。
今は時期で無いと言わんばかりの行動を不思議に思うが、結界があるかの様に先に進めないのでは仕方無かった。何時の様に、紫の瞳で遠くの本神殿を見ている青年へ、聞き覚えのある声が聞こえる。
「ハール、如何した?剣の鍛錬は終わったのか?」
ハールと呼ばれた青年が振り返ると、そこには見知った薄茶の髪が見えた。
白地に七色の線の縁取りがある膝丈の上着を着込み、青年と同じ色の髪…紅の髪の騎士を伴った熟年の男性に彼は答える。
「サニフラール様、一応、終わりましたが…………その……祖父の体調が…今まで以上に…思わしく無くて…。」
ここに留まった理由を言い難そうに告げると、納得した熟年の男性・サニフラールが再び声を掛ける。
「そうか、ガリアスの具合が悪いのか…。爺も歳だからな。
で、神殿に祈願しようとして、足止めを喰らった訳か。」
正解を告げられた青年は、はいと素直に答え、神殿を見つめる。
何故、自分がそこに行けないか不思議に思っている彼へ、サニフラールが意外な言葉を投げ掛ける。
「今は、神殿に拒まれている訳か……ならば、私と共に行くか?
丁度私も神殿に用があるし、私と一緒なら神殿も拒まないだろう。」
そう言ってハールの腕を掴み、彼を引っ張りながら神殿へと歩み始める。
ハールの方も、今まで泊まっていた足が、順調に動く事に対して驚きつつもサニフラールに付いて行った。




