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第5話 嗚呼、女王様

「ライル起きろばかああああああ!」


「諦めい! もう間に合わんよ! ぎゃははは」


 俺はもうだめだと思った。もう絶対無理だ。ライルがこの状況を理解して自分で拒まない限り、ジイサンとライルは……。


 アーメン。

 すまないライル。

 許せ。

 いやお前が悪い。


 こういうことになるから、未成年者は酒を飲むなよ。


 未成年者にとって酒は恐ろしいな……。


 と、その時、突然ライルが大きく目を見開いた。


 まさか、この状況を理解出来たのか?

 この数秒で?


 み、みなおし……


「臭いよおおおおおおおお! うわあああん!」


 見直した……と言おうとしたんだが、やめた。


「うわあん! 陸うう! このオジイタマ臭いよおお!」


「おい! いくらなんでもそれは失礼だぞ!」


「だって臭いんだもん! うわあん! 僕も臭いよおおお!」


「……お前はなんでも臭いんだな」


 ライルはものすごいスピードで俺の方へ走って来た。


 よ、よかった……危うく気持ち悪い場面を見ることになりそうだった。


「ひどいよ陸ー! どうしてあの臭いから守ってくれなかったのさ!」


 ジイサン……すっげえ落ち込んでる。


 こりゃ慰めが必要だな。


「ジイサン、気にするな。こいつは……オカシイんだ。こいつの言うことは気にしなくていい」


「わしは……臭いのか?」


「……ああ、まあ……酒臭いな」


「じゃあ酒をやめれば……ジュン子ちゃんに好きになってもらえるじゃろか?」


 じゅ、ジュン子ちゃん?


 誰だよ。


 なんかまた変なキャラでてきそうな気がするんだけど。

 気のせいか?


「はーい! あたしがジュン子ちゃんだよー!」


 さっそくデター!


「はじめまして勇者、ライル様! お会い出来て光栄です!」


「ほえ? 僕? えへへ」


 なんと、ライルは有名人なのか? こんなに弱いのに? こんなに女みたいな顔した男の勇者なのに? ライル"様"だって?


 ええええ……。


 なんかフクザツ。


「こっちにいる平凡男子中学生は誰ですか? ライル様のシモベですか?」


 平凡で悪かったなちくしょー。


「シモベじゃないよー。僕の友達! えへへ」


 ……友達か。


 うん。まあ、なんていうか……悪くないな。


 うわ、俺素直じゃねえ。


「友達ですか! ライル様には不釣り合いな友達ですね!」


 悪かったな不釣り合いで。


 ちくしょー。


「そんなこと言わないでよジュン子ちゃん。僕の大切な友達なんだ」


「も、申しわけございません……」


 おいおいおいおい。ちょい待て。なんかいいこと言ってくれんじゃねえかライル。


 そしてジュン子はなぜそんなに恐縮してるんだ。


 そんなにライルって偉いやつなのか?


「なあライル、俺らさ、お前が飲んだ酒を弁償するために薬草をとりに行かないとだめなんだけど……」


「ええっ、そうなの? やだなー。怖いなー」


 てめえが飲んだんだろバカヤロウ。


「ちょっとジイサン、この平凡男子中学生ならともかく、ライル様に薬草をとりに行かせるなんて、あんた根性ねじ曲がってるわ!」


「がーん! ジュン子ちゃんに怒られた!」


 このジュン子って奴、なんて毒舌女王なんだ。

 しかもどこで俺が男子"中学生"だって言う情報を入手したんだよ。

 早すぎだろ。

 ジイサン半泣きだし。


「この二人にはここにいてもらって、ジイサンは薬草をとりに行きなさい!」


「しくしく」


 ジイサンは背を丸めてとぼとぼと店を出て行った。


 なんか……かわいそうだな。


「ごめんなさいね、そこの男子。……あああすみませんライル様! あのジイサンは恥です! 本当に申し訳ございません!」


 ひでえ。ジイサンめっさかわいそう。

 そして俺とライルに対する態度が全く違うのが気になる。


 まあいいけどよ。


 さて、ジュン子の容姿についてだが、真っ赤な髪は膝まで伸びていて、色白で、魔法使いのような服を着ている。ハ○ー・ポッターの服装の赤いバージョンを想像してもらえるといい。


「赤、好きなんだ?」


 さりげなくそう問うと、ジュン子はライルから俺に視線を移した。


 あ、こいつ猫目だ。


「まあね。赤って大人っぽくない?」


「あんたの性格にはよく合ってると思うよ」


「あら、それってあたしが大人っぽいって意味よね?」


「……まあ」


 本当のことを言うと、黒い服と鎖が似合うんじゃないかな……。あと、ムチとロウソク……って、俺はなに言ってんだ!


「ふふふふ。わかってるじゃない」


「僕もジュン子ちゃんには赤が似合うと思うよお!」


「ライル様! なんてありがたいお言葉……」


「でもどっちかと言うと黒い服に鎖で、あとム……ふごっ」


 俺はとっさにライルの顔面を殴った。


 ジュン子はぽかんと口を開けて俺を見ている。


「あはは……はははは」


「ら、ライル様を殴るなんて……あなた何者?」


 こいつこんなこと言ってるけど、ライルがあの言葉の続きを話していても、この女はライルを殴らなかったのだろうか。


 この女……キレたら怖そうだな。


「なによその目は」


「……なんでもございません」


 嗚呼、女王様。


 なんかまた変なキャラ出てきたな。めちゃくちゃ憂鬱なんですが。


 だって、ライルの世話だけでも大変なのに、変態ジジイまで出てきて、それで次は変態ジジイが恋した相手、女王様のジュン子だぜ?


 ……無理。

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