第2話 技と術と勇者の容姿
自称勇者のライルは、マラーナにいると厄介事に巻き込まれるから、しばらくここに居てもいいかと言って来た。俺はその質問に『無理』と答えたはずなんだが、ライルは笑顔で『ありがとう。それじゃあ遠慮なく』と言って、俺のベッドにダイブしたのだ。
俺の意見などどうでもいいようだ、こいつは。
あのモンスターとの戦闘があったあと、ライルは一階に下りて母さんに『今日からお世話になります!』と言っていた。馬鹿な母さんは、快くそれをOKしたというオチさ。
……ばっかやろう。なんで俺がこんなことに巻き込まれにゃならんのだ。
「それでね、これが体力を回復するブルーラムネでね、これが技や術を出すために必要なエネルギーを回復するオレンジラムネなんだよ。それでねそれでね」
さっきから一人で楽しそうに喋っているライルだが、俺は完全無視。でも話はちゃっかり聞いている。
本当にRPGみたいだな……。RPGは好きだけど、現実で起こると恐ろしいというか……。
「僕は使える技と術がひとつずつしかなくて、術はさっき使った『魔風神』って言うのね。これは少ししかエネルギーを使わないから助かるんだあ。でね、技は『連雷斬』って言うのがあってね、剣に雷をまとって連続斬りをする技なんだよ」
なんか技と術を聞いてたらこいつも強そうなんだけどな……なんでこうも臆病なのか。結構強いのに。なにかトラウマでもあるのか?
ライラが鼻歌まじりにラムネを整理している。
ここでライルの容姿を簡単に説明しよう。
まず、髪は銀色だ。
顔は優しそうな顔をしている。
泣くと見た目は幼稚園児だ。
格好は勇者の格好。これは……ご想像にお任せしよう。
背は小さい。
……大体は想像出来ただろうか。
「ねえねえ、君の名前は?」
「あ、教えてなかったな。俺は唐沢陸」
「じゃありっくんだね!」
待て。
「りっくんはやめろ……」
「じゃありくぴょん!」
もっと嫌だ。
あからさまに嫌そうな顔をすると、ライルは眉を寄せて腕を組んだ。
「しょうがないなあ。じゃあ陸くんね!」
「……陸でいいよ」
「わがままだなあ」
「……」
こいつ、自分が居候させてもらってるって言う自覚はあるのか? ないよな? あったらもっといい子にしてるもんな?
「ねえねえ陸。お腹空いたよう」
腹をおさえながら顔をしかめるライル。
「チョコレート食うか?」
「ステーキある?」
待て。
「あるわけねえだろ」
「庶民だね……」
どすっ。
今の音はライルの腹を殴った音。
「ご、ごめんよ……」
ライルは涙を流しながらうずくまった。
俺、今日からかなりストレス溜まりそうだな。