とある海賊の冒険
潮騒の音が近い、牢には潮のにおいが満ちている。
そこは岩をくりぬいて作られた波打ち際の高い絶壁ににある牢獄だった。
檻は金属製で少し錆びている。
牢には粗末な木製のベット。
そこに座る男が一人。
服は粗末な囚人服を着ている。
「まったく判断を誤っちまったぜ」
一刻前まで海賊船の船長室で分捕ったお宝の勘定をしていた俺様。
部下からの報告を聞いて船長室で威張っていた俺様がこんなところにいるなんてな。
俺様がこんなところにいるわけ。
それは敵国の商船を襲い積荷を分捕った日の翌日が始まりだ。
分捕った積荷を検分していたわけだ。
分捕り品のリストを書き、分け前の相談をしているときの海賊ほど上機嫌なものはない。
国に納める上納金を計算し、積荷をどこの港で売るか考え、部下への分け前を考えていた至福の時間。
その日は大船を買い外洋の海賊になる夢だってみれたくらいだ。
俺たち海賊は船を見つけたらいつでも戦うように思われているが実はそうでもない。
あまり商船を襲って商人たちを殺してばかりいると、恐ろしい海賊ということで賞金首が跳ね上がっていく。
内海から商人がいなくなるほど厳しく襲っては俺たち海賊はおまんまの食い上げ。
そこで海賊は単なる通行料の徴収から7割程度の本格的な分捕りまで商人たちの懐を考えながら行かさず殺さず上手に商人たちから徴収していくわけだ。
商人のほうだってその辺の事情はよくわかっている。
海賊に襲われたとなれば結構早めに白旗を上げてくることが多い。
だから大抵は威嚇の射撃か数回の砲戦で片がつくし、相手の船に乗り込んでの戦いとなると意外と少なくなる。
襲撃となったら俺たちは海賊旗を掲げ威嚇のカノン砲を1発2発ぶっ放していく。
まああたるわけもない距離だ。
この段階で商人側が降伏の白旗を掲げれば、俺たちは晴れて商船に乗船、通行料をもらうか積荷を全部奪うかは俺たちの気分次第計算次第。
商人の将来性や能力をよっく考えて優秀なやつなら少なめにもらっていく。
頭のいい商人は将来のいいパートナーというわけだ。
いざ戦いとなっても、所詮は商人と雇われ水夫と海賊の戦い。
大砲の弾が何発か当たれば即座に白旗を掲げることが多い。
相手の船に乗り込んでも商人が優勢となれば海賊は即座に引き上げるし、海賊が優勢となれば商人側は即座に白旗を掲げる。
そうして昨日も商船が首尾よく商人が早めに白旗を掲げ荷物を多めに分捕ったという次第だ。
原価もいらずに織物だのスパイスだの高級品をわんさと積荷が満載。
どの港で売るか考え部下と話を聞き芸術品の織物の売値を考える。
これほど楽しい時間はない。
まあ少し難しい面もある、部下に適度に分け前を与えないと船長としての評判が下がるという問題だ。
海賊船の船員はフリーで船を選ぶ。
あまり船員に金を与えないと、船員の世界の噂であっという間にけちな船長という噂がたっちまう。
かといってでかい船を維持するのも買うのにも金は必要だ。
いつかは外洋。
だからな。
だから誰にいくら報酬を出すか一人ひとり頭の中の船員のリストを数えながら考えたりもする。
気楽じゃないわけよ。
積荷の検分も終わって船長室で押収物のリストを書いてた時。
悩み多き幸せのときは一発の砲弾で破られた。
ドン、という音が船室の外から響いたと思ったらバキッと船長室の木板を破って転がって入ってきたのは間違いもなくまんまるい黒い大砲の弾。
しかも導火線はじりじりと音を立ててやがる。
このジャック様の船に風穴開けるとはいい度胸じゃねえか、喧嘩上等。
大慌てでドアを開き、爆発を背に船長室を出る。
ああこりゃ後ろは全滅だ。
船長室にあった苦労して集めた海図や、海軍や縄張り争いの注意書き。
船員から聞きだした物価や国際情勢の最新情報のメモ書き。
後海軍からもらった海賊許可証も燃えたな。
こればっかりはお役所仕事とはいかない。
また許可証をもらいに行かねえといけねえか。
なにせこの世界顔が命、それなりの偉いさんと顔を合わせて言質を取って正式にもらわないと話にならない。
あれを手に入れてから、海賊行為がやりやすくなったもんだ。
堂々と船を襲えるようになったし海軍の保護も受けられる。
保護がなければどの国の船を襲っても敵が増えていくばかりだし、襲えば襲うほど寄港できる港も限られてくる。
港で休憩中に昔襲った国の陸軍にやられたら話にならない。
フリーの海賊はどの国や組織を敵に回すかよーく考えて海賊行為をしないといけないわけだ。
今は海賊許可証に従い北のノーストリア民族の船だけ襲っていれば、南のサウタニア民族の港で安心して寄港が出来る、
安心して寄れる港があるほど精神的にいいことはないし、部下たちも羽を伸ばせる港があって大喜びというわけだ。
許可証一枚手に入れるのにどれだけ苦労したことか。
本当あの許可証を手に入れる前は苦労したな。
初めての海賊行為は隣町のマグロ船を襲ってその積荷を奪ったことだった。
裏町の喧嘩で技を鍛えたジャックのナイフさばきで船員を脅して。
船員をロープで縛ってマグロを移し替えた。
酒場で約束してた密輸商人と指定した海域であって商品を売りつける。
取引をした船は沿岸漁業しかしない漁師の俺たちからみたら大きな船、その船室の暗闇の中
船舶の倉庫の中はカンテラの明かりで照らされていた。
商人の後ろには大柄な船員。
そいつが腰に下げたカトラス、積荷を受け取ったら俺たちが切られておしまい。
そんなことがないか考えて胸がどきどきしたもんだ。
今ではあんな小さな船にちんけな商人相手にビビっていたのがいい笑い話。
あいつはこけおどしの商人で人を切る度胸がないと分かったのは後日の話。
それがわかってからは仲間内で良くネタにしたもんだ。
取引はすんなり進みマグロを売った金で大金を手に陸に上がったら酒場で飲み放題。
仲間や友達を読んで大盤振る舞い、女を抱きまくった。
世間はチョロイそう思ったね。
最初の数日は、俺たちの犯行がばれるかと思ってしらふに戻るたびにみる人見る人を猜疑の目で眺めたが。
どうやらばれなかったらしい。
初めの漁師たちがどうなったかは知らない。
その後信頼できる仲間だけを集めて、何度か犯行を重ねた。
そうこうするうちに海賊団の出来上がり。
港港に部下を置き付近を通る船舶の情報を集め、いい船が寄港となれば船を出して海賊行為。
いい船を手に入れるころには、地元でも手をつけられない有名な海賊団。
地元の連中だって俺たちの金で潤ったんだ、文句は言わせねえ。
流石に領主が部隊を出してきたんで、港にあった中型軍船を奪って船出だ。
俺たちは内海デビューを果たしたってわけだ。
なんにせよ後ろの爆風、喧嘩を吹っ掛けてきた奴、良い根性だ。
ようやく手に入れた中型船。
俺様の金ぴかに傷をつけたやつは許さねえ。
全く俺様に喧嘩を仕掛けてくるとはいい度胸だ。
爆発を背に船長室から出ると通路では水夫たちが、次々とドアを開けて出てくる。
戦闘となれば昼番も夜番も関係ねえ。
背後の爆発が収まらないうちにはっぱをかける。
「敵襲だ、お前ら気合を入れろ」
「イエッサー」
船長ジャックは水夫たちを従えて看板に出る。
甲板では今さっきまで戦利品の分け前でどの店に行ってどの姉ちゃんを抱くか相談してた連中も大慌てだ。
俺様の最古参の同士、ナイフ使いのジョーは接近戦に備えて皮鎧を取りに階下へ。
天を見上げて聞く。
「おい見張り台、敵はどっちだ」
天から返事が降ってくる。
「距離三百、1時の方向」
「おかしら、望遠鏡を」
水夫が望遠鏡を手渡す。
望遠鏡を覗くと中々軽快に走る船が見える。
海賊に喧嘩を売るとは上等だ。
ロリーロジャー(どくろマークの海賊旗)が見えねえのか。
望遠鏡の丸く縁取られた視界に船舶を捉え得る。
どこの船だろうか?
国旗も上げてなければ海賊旗もあげていやがらね。
柱は2本マストは1,2,,,6枚。
こちらより1枚帆の数が多いし船もでかい。
大砲の数も少し多いな。
喫水線が浅いということは積荷を運んでないということか。
荷物満載のこちらは不利だな。
「おい、積荷をいくらか捨てろ、敵の船足に追いつくぞ、角度合わせろ面舵一杯だ」
続く




