第6話
更に400年が経ち、旅に出るまで、後300年となった。
あの日、俺はシアンと性行為をした。まぁ、シアンからしたら、番になったというのが正しいのかもしれない。
そこまではいい。
問題は……シアンが俺とシたくなったら、普段以上にメスガキになって、俺を煽ってくることだ。
……あのメスガキ、俺がそうされると興奮すると思ってやがる。
……全くその通りだよ、こんちくしょう。
……いや、だってさ、分かっててもエロいんだから、仕方ないじゃん。
まぁ、そういうところも可愛いと思ってしまう当たり、俺はもう手遅れなんだろう。
幸せだから、別にいいんだけどさ。
ちなみにだが、少し前にシアンに子供とかが欲しいかを聞いたところ……別にいらないらしかった。
まぁ、だろうなって感じだ。
俺たちみたいな不老の存在は基本的には子供なんて望まない。
子を作りたいというのは生物としての本能だとは思うが……俺たちのような存在は個として完成しすぎているが故に、そんな本能も特に無いんだよ。
ごく稀に産みたいというやつもいるから、聞いたんだけどさ。
というか、産みたいという存在がいなかったら、シアンだって生まれてなんて無いんだから……シアンの親には感謝だな。
シアンが龍……それも黒龍である以上、親も個として完成しているだろうに、本当に感謝だ。
是非ともいつか挨拶をしたい。
「スルト! スルト! スルト!」
そんなことを思いつつ、コーヒーを飲んでいると……俺の番であるシアンが俺にタックルをするかのような勢いで何かを訴えかけるように抱きついてきた。
危ない。コーヒーは無事だ。
……って、そうじゃなくて、要件を聞かなくちゃか。
雰囲気から察するに、いつもみたいに甘えてきているようでは無いみたいだし。
「どうした?」
「……ママとパパがこっちに来てる」
なるほど。
タイムリーだね。
ちょうど今、君のパパとママのことを考えていたんだよ。
「シアンは家出中なんだっけ?」
気まずそうにこくりと頷くシアン。
……ちょっと、面倒なことになるかもな。
考えても見てほしい。
家出中の娘が知らない男と一緒にいる……だけならまだしも、体の関係も持っていて、番にまでなっているというんだ。
……問題しかないな。
冒険者ギルドに龍が2匹来てるっぽいことを伝えに行くか。
変に討伐隊でも組まれたら困るから、俺が対処することと一緒に。
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そして、俺はシアンと一緒に冒険者ギルドに来ていた。
シアンの見た目は……特にいつもと変わっていない。
翼を生やし、尻尾を生やしているいつもの見た目だ。
俺は別に村の連中にシアンが龍だということを隠してなんてないし、特に騒ぎには……なってないことも無いか。
騒ぎになっている理由はシアンが来たことじゃなく、俺が来たことっぽいけど。
……まぁ俺、引きこもりだもんな。
「ギルドマスターの所に案内……いや、呼んできてくれないかな?」
「は、はい! た、ただいま!」
今ここで宣言する方が分かりやすくていいだろうと判断して、俺はそう言った。
申し訳ないが、少し魔力による圧を周りに分からないように掛けさせてもらいながら。
変に問答をしている時間すらも勿体ないからな。
少しすると、いそいそと40代くらいのかなり鍛えられた体を持った男が小走りで2階から降りてきた。
その姿に少しコミカルさを見たのは内緒の話だ。
「ま、まさか賢者様直々にお越しくださろうとは……い、一体本日はどのようなご要件でしょうか?」
……俺、まだ賢者とか呼ばれてたんだ。
もうこれ、この村にいる限りは一生言われるのかもな。
別にいいけど。
「今、ここに龍が2匹向かって来ています」
俺はパニックにさせないように、と冷静にそう告げたのだが──
「……は?」
「り、龍ってどういうことだ!?」
「け、賢者様の隣にいる方以外にこの街……あ、いや、村に来るってことか!?」
──周りの冒険者がパニックになってしまった。
「貴様ら、賢者様が話している途中だ。黙らんか」
やっぱり、最初はギルドマスターだけに伝えるべきだったかね? なんて思いつつ、どうしようかな、と考えていると……ギルドマスターは周りに居た冒険者に圧をかけ、冷静さを無理やり取り戻させていた。
「申し訳ありません、賢者様。出来ることなら、続きをお願いできないでしょうか?」
「えぇ。単刀直入に言うのですが、その龍は私が対処します。なので……申し訳ないのですが、冒険者ギルドは何もしないでいて欲しいのですよ」
「1つだけ、お聞かせください」
明らかに雰囲気を変えたギルドマスター。
周りにいた冒険者が息を飲む。
「なんでしょう」
「賢者様は、龍2匹をどうにか出来ると? 賢者様のお力を疑っているわけではございません。事実、賢者様は数百年前に龍を相手取り、お力を認めさせ、今では……見ての通りなのでしょう」
シアンに一瞬視線を向け、そう言ってくるギルドマスター。
「ですが、2匹となると話は別なのではないでしょうか? ……不敬なことは100も承知です。ただ、私はこの村のギルドのトップに立つものとして、聞かねばならないのです」
理解できる。
だからこそ、不快感など1mmも無い。
「何の問題も無いと断言できますよ」
「「「「「おぉぉぉぉぉ!!!」」」」」
周りの冒険者から何故か歓声が上がる。
「分かりました。ですが、この冒険者ギルド内には戦力を待機させることをお許しください。もしもの想定をすることをお許しください」
「もちろん、大丈夫ですよ。あなたの立場では当然のことです。むしろ私は好感を抱きましたよ」
「ッ」
「では、私は龍の所に向かいますので」
「お、お気をつけて!」
そうして、ギルドを出ると……何故かシアンが上機嫌だった。
さっきまではパパとママが来ると不安そうにしていたというのに。
「どうした?」
「んふっ。スルトが……私の番が慕われるのが嬉しいのは当たり前」
「慕われる……?」
俺がか?
龍の感性は分からんな。
「まぁいい。それより、シアンのパパとママの好きな食べ物とかって分かるか?」
「んー……お肉?」
龍だもんな。そりゃそうだわ。




